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忘却のアルテミス  作者: 二四野 鏡
ゴースト・バスター
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21/38

襲撃

 レアルがあの魔導師に襲われた後、街は大騒ぎとなっていた。

 何せ、突然建物が爆発したのだ。騒ぎにならない方がおかしい。

 かなりの勢いで建物が燃えていたので周りの建物にも被害が及ぶかと思われたが、ゴーストの四件目の事件で近くにいた軍の兵士が迅速に対応して、被害は火球が直撃した家とレアルがゴロツキと遭遇した路地裏だけに押し留められた。

 近くにいた兵士の中に水の魔法を使えるものがいたのが幸いしたのだろう。

 火球が直撃した当時は建物の二階には誰もおらず、死傷者は出なかったようだ。

 一方、その事件の当事者であるレアルは軍の兵士に見つからないように身を潜めていた。

 あの事件は誰がどう見ても魔導師の仕業であることは明白だ。だとしたら、街の中を徘徊している魔導師が疑われるのは確実だ。

 レアルは火属性の魔力を持っていないので犯人として扱われることはないだろうが、見つかれば事情を聞くために軍に同行を求められるかもしれない。

 軍に連れて行かれて長々と尋問され、調査する時間が削られてしまうのは御免だったで大人しくしていたというわけだ。

 そして、三時間ほどして騒ぎの方も落ち着いてきたころにレアルは再び調査を再開した。調査といっても残りの事件現場を確認して何か手がかりがないかを探るだけだった。その調査も他の事件現場と同様にこれといった収穫はなかった。それからは街をぶらつきながら手がかりを探していた。

 だが、今のレアルにはゴーストよりも気になることがあった。それはもちろん昼間に襲われた魔導師のことだ。

 レアルはあの魔導師の行動について違和感を感じていた。あの魔導師がギル達に魔法が使えるようになるというよく分からない薬を売った売人であることは間違いない。

 レアルはこういった非合法な薬を売る売人や秘密裏に暗殺を行う輩など、裏社会に生きている連中は多く見てきた。けれど、そういった輩は表舞台で自分の存在が知れるのを嫌う。自らの名前を知れ渡らせるのは裏社会の中だけだ。

 そうした方が軍にばれる心配も少く安全で、自分たちの仕事もしやすくなるからだ。なので裏社会の連中は自分の情報が漏れることに特に気を使う。

 だが、あの魔導師はレアルに情報が洩れそうになるといきなりレアルを殺しにかかるという大胆なことを仕出かした。まだ昼間で、下手をすればレアルにばれるよりも多くの人間に自分の存在がさらされる可能性だってあったはずなのに。何故、あんなに目立つような真似をしたのかレアルには分からなかった。

 それにギルが言っていた言葉、彼らはあの魔導師に頼まれてレアルを襲ったと言っていた。言葉から察するにあの魔導師はレアルのことを知っていたということになる。だが、逆にレアルはあの魔導師のことは全く知らない。それに魔法を使えるようになる薬のことは今日の朝、あの魔導師の存在を知ったのはその日の昼間。知っているはずもない。

 仮にあの魔導師がレアルのことを知っていたとして、何故、ゴロツキ共に襲わせたのか。あれだけの騒ぎを起こしてまでレアルを殺そうとしたのならば、初めから自分でやればよかったはずだ。なにより、その方が確実性が増す。

「何で手間を増やすような真似をしたんだ?」

『手間?何の手間だ?』

「昼間襲ってきた魔導師だよ。何か変な感じがしてな」

『ふむ。そう言われてみれば、やり方としてはかなり杜撰な感じだったな』

 確かに二クスの言うとおりだろう。あの魔導師の行動には計画性のようなものは見られなかった。

「ん、杜撰・・・?」

 レアルはその言葉をもう一度呟いて一つの可能性を思いついた。

 あの魔導師が路地の中にいた理由は多分ギル達と薬の売買をするためだったのだろう。その時はまだ魔導師はレアルのことは知らなかったはずだ。そして、ギル達と薬の売買をしているところの近くにレアルが迷い込んだ。

 それによりあの魔導師は焦ったはずだ。非合法な薬を売買しているところを見られれば軍に突き出されるのは目に見えているから。

 そこでレアルを追い払うためにギル達に襲うように頼んだ。だが、それは失敗に終わり、おまけに自らの情報も洩れようとしていたから強行策に出た。

 これなら杜撰な行動も頷ける。

『何か分かったのか?』

「ああ、一応大まかな推測を立てた」

 レアルは先ほどの仮説を二クスに説明する。だが、二クスはレアルの仮説には納得しなかった。

『確かに辻褄はあっているが、最後の強行策に出る理由としては要素が足りないと思うのだが』

「ゴロツキ共が俺を追い払えなかったから、もういっそまとめて証拠隠滅しよう、とか思ったんだろ」

『そもそも、あの魔導師はことを荒立てたくなかったからあのゴロツキ共を差し向けたのだろう?そこから、いきなりお前を殺して情報漏洩を防ぐという大胆な思考に切り替わるのはおかしいとは思わんのか』

「・・・確かに、そうだな」

『それにあの薄暗い路地では遠目で何かを判断するのは難しいだろう。例え、お前が取引場所の近くに来たとしても息を潜めるだけでやり過ごせたはずだ』

 レアルはあの路地の様子を思い出す。確かにあの路地は昼間だというのにかなり暗かった。ギル達が現れた時も初めは何かが動いていることぐらいしか分からなかった。

『あと、あの場に魔導師が残っていたことも疑問だ。自分の存在がばれることを恐れていたらなゴロツキにお前を襲わせている間にどこかに逃げてしまえばよかったのだ。そうすれば、多少お前にばれるが少なくとも姿を見られる心配はなくなるからな』

「・・・・はぁ、結構いい線いってると思ったんだけどなぁ」

 レアルは自分の推測にかなり穴があることを指摘されてため息をつく。

『まだまだ、頭の回転が足りないな』

「でも、そうなるとマジで分かんなくなってきた」

 レアルはあの魔導師の考えているのか、考えていないのかよく分からない行動に頭を悩ませる。

『まぁ、あの魔導師のことは放置しておいても構わないだろう。今お前が追わなければいけないのは薬の売人ではないからな』

「・・・・ああ、確かにそうだったな」

 かなり深く考え込んでいたがレアルの今の目的はゴーストを捕まえること。

『とはいっても、そちらの方もそろそろ時間切れのようだ』

 二クスの言葉を聞いて辺りを上を見上げてみる。もうすでに日は落ちて辺りは暗くなっている。そろそろ学院に帰らなければ門限に間に合わなくなってしまう。

「もうこんな時間か」

 先日の件でかなり説教を食らっているのでレアルは門限を必ず守ると決めていた。来た時のようにアイシャはいないので歩いて帰ることになるが、それでも十分間に合うだろう。

 レアルは王都の入り口へと向かう。暗くなったとはいってもまだ大通りにはちらほらと人がいる。

 ふと、そこでレアルは足を止めて後ろを振り返る。けれど、レアルの後ろには誰もいない。レアルは後ろをしばらく見つめたあと、再び歩き出した。

 すると、次の瞬間、レアルの前の地面が音を立てて切れた。鋭利な刃に切り付けられたようなその跡からは少し煙が舞い上がる。

 その攻撃に気付いたレアルはとっさにしゃがんで回避した。見えない刃はレアルの首を切り落とす位置に放たれていた。

 周りに残っていた人も突然の大きな音に反応してレアルを見る。けれど、まだ何が起こっているのかは分かっていないようだ。

「人の目もお構いなしか。二クス」

『右斜め後ろ、二階建ての家の屋根だ』

 レアルは二クスに敵の位置を聞いて振り返る。そこを見てみると誰もいない。だが、微かに景色が油外んでいるように見えた。

「まさか、噂のゴーストか?」

『さぁな、捕えてみれば分かるだろう』

 姿は見えないがそこに何かがいるということは分かる。噂通りなら今レアルを襲っているのはゴーストということになる。

 すると、動かないレアルに対してもう一度見えない刃が放たれた。だが、それもレアルには当たらない。

 今度は地面が縦に切られる。それを見てさすがに異常事態だと思ったのか周りにいた人たちはすぐにその場から離れていった。

 一方レアルは襲ってきた人物を確かめるべく屋根の上を目指す。二階建ての家の壁を走るようにして上る。そして、屋根の高さと同じところまで駆け上がると剣を出して屋根の上にいる人物を切る。

 だが、その剣は空を切った。すでに別の場所に移動していたようだ。屋根に着地するとレアルはすぐさま飛び退く。すると、レアルが着地したところに切れ目が入る。

「くそっ、ばかすかと撃ちやがって」

 放たれている魔法はどう見ても『下位魔法』の威力ではない。となると、何らかの『複合魔法』で威力を上乗せしていると考えるのが妥当なのだが、詠唱の間隔が短い。ここまでの魔法が行使できるということは高ランクの魔導師ということになる。

 だが、姿を消している魔法は風属性の『隠蔽領域エリアカーテン』で間違いなさそうだ。この魔法は認識した範囲に風の壁を発生させ周りの景色と同化させて姿を隠す魔法だ。けれど、本来なら動かずに身を隠すためのもので、動きながら使用するものではない。動いてしまえば風の壁に映している景色にぶれが生じて隠れていることがばれてしまうからだ。

 レアルは見えない刃が放たれた方向を見る。目を凝らしてみると一瞬だけ景色がぶれる。隣の屋根にいるようだ。

 レアルはまたどこか違和感を感じた。ゴーストは高ランクの魔導師の実力を持ちながら、どこか乱雑な魔法の使い方をする。

 と、そこで何もない虚空から巨大な火球が放たれた。レアルはそれを避けると同時にゴーストに斬りかかった。だが、それはゴーストが展開している風の壁に触れるだけで本人を捕えることはできない。すぐさま躱した方向に剣を振るう。だが今度は掠りもしなかった。

 後ろの建物で爆発が起こる。火球が着弾したのだろう。

 ふと、レアルはその事実に既視感を感じた。似ている、昼間の騒ぎに。

「まさか、あいつは・・・・」

 すると、今度は上方から火球が飛んでくる。レアルはそれに向かった正方形の魔力の箱をぶつける。箱とぶつかった火球は爆発して箱を吹き飛ばす。

 だが、これでゴーストの位置が分かった。レアルは空の景色がぶれているところを探す。

「見つけた・・・・!」

『天馬の羽』

 レアルはその方向に向かって一気に飛び上がる。そして、勢いよく剣を振りぬいて風の壁ごとゴーストを切り裂こうとする。だが、レアルに向かって虚空からナイフが飛び出してきた。レアルはそれを切りつけようとした剣で弾く。

「まだだ!」

 ナイフを弾いたことで勢いは弱まったが剣を振るった。剣は風の壁に飲み込まれて刃が半分消える。その中で何かにぶつかった。金属音がしたことから何かに防がれたのだろう。だが、レアルは体を回転させて回し蹴りを放った。今度は足に確かな手ごたえがった。

「ぐあぁ!?」

 蹴りで吹き飛ばされたゴーストから悲鳴が漏れた。路地の方に落ちていくゴースト。路地の中に落ちていく寸前魔法が解けて姿が見えるようになったと思ったがすぐに影で分からなくなってしまった。

 地面に着地したレアルはすぐさまゴーストが落ちた路地の中へ入っていく。夜になっているため路地の仲は真っ暗でほとんど何も見えない。

 レアルの身長より高い位置に丸い光が現れる。これも『基礎魔法』の一種だ。それによって道が照らされる。

 レアルは落下地点に急ぐ。そして、その場所に行ってみると誰もいなかった。少なくとも何かいる気配はない。だが、まだ息を潜めているだけかもしれなかったのでレアルは慎重に奥へ進んだ。

 すると、ごみ置き場に積まれているごみ袋が少しへこんでいた。落下したのはこの上のようだ。他に隠れられそうなところがないか調べたが特に何もなかった。

「逃げられたか・・・」

 多分、行き止まりの壁を越えたのか、入れ違いでレアルが入ってきたかのどちらかだろう。

 レアルは大きなため息をつく。もし、あそこで捕まえていれば目的を果たせたというのに、あと一歩のところで逃してしまったからだ。

『残念だったな』

「まぁ、でも収穫はあったさ」

 レアルはゴーストに襲われたときのことを思い出してそういった。

 すると、後ろの方からどたどたと騒がしい音が聞こえた。振り返ると路地の道が照らされているのが見えた。

「軍か。遅いっての」

 そして、曲り角から鎧を着た兵士たちが見えた。その兵士たちはレアルの姿を見つけるなり

「いたぞ!!」

 と、言ってレアルに向かって突進してきた。

「え?ちょ、ちょっと何なんだよ?」

 兵士たちが向かってくる理由が分からないレアルは後ろに後ずさる。だが、この路地は行き止まり。すぐに道が無くなってしまった。

「こうなったら、って、のわぁ!」

「捕まえたぞ、この暴漢めっ!!」

 レアルは数人の兵士に捕まりその場に倒れてしまう。

「暴漢ってなんだよ!!誰も襲ってねぇし!!」

「黙れ、いきなり路上で魔法を使って暴れだした学生というのはお前だろうがっ!!」

「いや、確かに魔法は使ったけど、あれはゴーストに襲われたからであって・・・・」

「何を訳のわからんことをっ!!あとは牢屋の中で聞く。連れて行くぞ!!」

 統率する隊長みたいな人物の命令で兵士がレアルを縄で縛り連行していく。そして、鉄格子の窓が付いた馬車に入れられたレアルは牢屋へと運ばれるのであった。



  ◇◆◇◆◇◆



 朝日が眩しい、レアルが外に出て一番初めに思ったのはそれだった。どこから外に出たのかというと王宮に隣接している軍の施設、その地下牢の中からだ。

 連行されたレアルは地下牢に放り込まれてそれからずっと尋問を受けていた。そして、その尋問が終わったのがつい一時間前で徹夜で尋問されていた。

 おかげでレアルは寝不足だ。ただの徹夜なら何度もしたことはあるか長時間尋問されながらというのはさすがに疲れが増したようだ。

 一応、道端で暴れたことについてはゴーストを撃退するためだと分かってもらえたため釈放された。

「くそっ、勘違いで捕えたくせに謝罪もなしかよ」

 レアルは軍のいい加減な対応に少し腹が立った。こんなことならもっと尋問してきた兵士に嫌味を言ってやればよかったと後悔した。

 軍の施設から出ると門の前に馬車が止まっていた。そして、その前には見知った女性が立っている。メイド服を着て姿勢よく立っているのはセルフィだ。

「おはようございます、レアル様。いくら授業のない休みだからと言って、羽目を外し過ぎるのはどうかと思います」

「いや、俺どこぞの不良がついやっちまったみたいな理由で牢屋に入ってたわけじゃないからね」

「言わずとも、分かっております。魔が差しただけなのですよね?」

「だから、マジで違うからっ!可哀相だから優しくしてあげようとかいう態度もやめてくれ!・・・・てか、徹夜明けだから一々反応するのも疲れる」

「て、徹夜で・・・!レアル様はいつの間にそんな不良に・・・・」

 セルフィは無表情なのに狼狽したような演技をする。台詞も棒読みだ。それを見るだけでも何だか疲れてくる。

「あの、謝るから勘弁してくれない?俺早く帰りたいんだけど」

「朝帰りをなされたレアル様には何かしらのお仕置きが必要かと思いまして」

「嫌味たっぷりで効果覿面だったよ」

「それは何よりです。では、馬車にお乗りください」

 セルフィの嫌がらせが終わりレアルはようやく馬車の中に乗り込んだ。椅子に座ると疲れていたためかどっと眠気が押し寄せてくる。

「まだ、眠ってはいけませんよ」

 落ちかけた意識はセルフィの声によって引き戻される。セルフィはレアルの対面に腰掛ける。そして、馬車は学院へと出発した。

「今説明しないとダメ?」

「ええ、学院に戻ってからではあまり時間はありそうではないので」

 一瞬、セルフィの言葉の意味が分からなかったレアルだが、考えるのが面倒だったので何も聞かなかった。とりあえず、レアルは少しでも睡眠時間がほしかったので手短に説明して終わらせようと思った。

「え~と、昨日はゴーストの調査しようと思って王都言ったんだけどさぁ、調査してると変な魔導師に襲われて、撃退して、そんでまた調査して、帰ろうと思ったら今度はまた襲われて、捕まえようと思ったら逃げられて、勘違いで軍に捕まって、尋問されて、釈放されたんだ」

「レアル様、今の説明ではレアル様がふざけていることしか分からなかったのですか?」

 レアルのやる気のない説明は何も伝わらなかった。

「結構真面目に話したんだけど?」

「そうですか。ではレアル様には自白剤あたり飲んでもらって話を聞きます」

「あれ?何かすっげぇ物騒な言葉聞こえたんだけど」

「お疲れなのでしょう。幻聴が聞こえているだけです」

「セルフィさんの片手に体に悪そうな緑色の液体が入った瓶が見えるんだけど」

「幻覚ですので、お気になさらず。できれば、口を開けてもらっていた方が・・・・」

「ああ~もうっ、分かったよ。ちゃんと話すから」

 レアルは観念したのか白旗を上げる。それを聞いてセルフィは持っていた瓶をしまう。

 あった時もそうだったがこの人はいったいどんな薬を持っているのだろう、とレアルは疑問に思った。

「教えて差し上げましょうか?」

「・・・・結構です」

 読心術で考えを読まれたレアルは申し出をすぐに却下した。

 気を取り直してレアルは昨日の出来事を話し始めた。先ほどのように適当にではなく、余計な部分を省いて手短に、だ。

「大体の理由は把握しました。ですが、レアル様に依頼したのは通り魔の調査ではなく、貴族狩りについてです。何故、そのようなことをしているのですか?」

 セルフィはもっともな疑問を聞いてくる。依頼した側からしたら頼んだ仕事を放り出して別の仕事をしているようなものだからだ。

「その貴族狩りにも関係することだ。この街にいる知り合いに頼んで貴族狩りの情報を集めてもらおうと思ったんだ。けど、そいつ最近街が物騒でやりたくないとか言い出してさ。そんで仕方なくお化け退治してるんだよ」

「そうですか。事情は理解しました。ですが、あまり目立つことは控えてください」

「分かってるって。そうだ、セルフィさんにちょっと頼みがあるんだけど」

 そう言ってレアルは昨日ギルから渡された小袋を出す。

「これは?」

「今、街で出回ってる魔法の薬さ。それ調べることってできるか?」

「・・・・多分、可能だと思われます。調べるのは成分だけでよろしいですか?」

「ああ、それでいいよ」

 一通りの説明を終えてレアルはようやく寝られると思い脱力する。

「レアル様、お休みになるところ悪いのですが、もう学院に到着するころです」

「ええぇ、まさか授業出ろ、とかいうんじゃないよな」

「いえ、今日はもう出られないと思いますので結構です」

「それじゃ、俺は部屋で一眠りしようかな」

「それも無理でしょう」

「え、何で?」

 セルフィに聞き返すが返事は帰ってこない。そして、学院の前に到着した。そして、レアルは正門のところに誰か立っているのが見えた。

 馬車を降りてその人物を確認すると、レアルはとんでもないことに気付いてしまった。

 正門のところに立っている人物はレアルの担任の教師であるミレイナ。レアルは遅刻を通り越して朝帰りなんてことをやってしまっている。

 ミレイナはレアルの姿を確認するとすぐに近寄ってきた。

「お帰りなさい。レアル・フリーシア」

 青筋でも浮かびそうなくらいの満面の笑みでレアルを迎えた。

 その後、レアルは他の生徒が授業している間ミレイナと二人っきりの個室で終業の鐘が鳴るまで説教を食らうこととなった。

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