第四章:異変-第一話
C級の育成もまちまちに、最強達は大量の任務に追われることになる。
と言っても、実際の任務の内容はあってないようなものだ。
「任務地に到着した後、近隣住民への聞き込みをしたけど、そんな事件は起こってないって。また誤情報だったよ」
「そうか…。悪かったな。情報部隊も今までにない任務の量で判別しきれていないんだ」
「いや、仕方ないよ、簡単に判別できたらそりゃ嬉しいけどさ。私らが動けばいいだけなら、それでいい。」
最強はユダに安心するように声をかける。
ただ、最強の心の内は焦っていた。
切り捨てた情報が本当だったら?この状況下で本当に助けを求める手をしっかりと掴めるのか?いや、掴まなければならない。それが最強である自分の最善だと、それを疑うことなく彼女は任務地に向かう。隊列すら組まず、あちこちへと飛び回る。
「また何もなし」
「なんで、」
「頭がおかしくなりそうだ」
「まだ任務がある」
「大丈夫」
「私は最強だ」
「何もないのが一番だ」
「彼らは休憩させないと」
「私は大丈夫」
最強の頭の中でそんな言葉がぐるぐると羅列されていく。
他の人の感情も混ざっているのだろう、らしくない弱気なことまで考えてしまう。
自陣で少し休憩している所に声がかかる。
「大丈夫か?」
「…ヒーロー」
顔を上げた最強の瞳はいつもの輝きは失われ、黒く濁っていた。
ヒーローは驚き、目を見開く。
「ホントに大丈夫かよ。毛先も傷んで…っつーか、なんか色がくすんでるしよ」
「あー、うん。発散ができてないからかも。大丈夫。まだ大丈夫だよ」
「…なら、いいんだけどよ」
「ん!まぁ少し休んだしほんと大丈夫!次の任務行ってくるね!」
最強は少し無理したように笑い、ヒーローの制止の声すら届かぬ間に次の任務地へと飛び立ってしまった。
ヒーローは、伸ばしただけのその腕を、そっと下ろすのだった。




