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間章:C級育成の一幕

敗走を余儀なくされたあの日、報告書には途中かけの日記の内容と、角の短い鬼の情報が書かれ、それ以上の収穫はなかったらしい。


ただ、パーサと名乗った鬼と同等、またはそれ以上の存在がたくさん居たとしたら?

今の総勢の戦力を持ってしても、魔王軍に敵いはしないだろう。


それが、お上の判断だった。C級の一般隊員は心の中でボヤく。


(だとしても、A級を育成に回すとか、無いわ〜)

「ねぇ君、めんどくさいとか思うくらいだったら軍をぬけたら?」


心を読まれたのかと思ったが、違うとすぐわかった。

声をかけてきたのはこの国で最強と呼ばれるエルフだった。感情収集能力。これだけ聞けばただの弱い能力だと言うのに。


(羨ましい)

「んん?嫉妬は見苦しいぞ〜?それをするくらいなら努力しないと」

(羨望だよ。的外れめ)

「何となく攻撃的だなぁ、やめてよ。痛いんだからそれ」

「…なら、受け取らなきゃいいだろ」

「おっ、ようやく喋った。」

「うっさい黙れ」

「酷いなぁ。

…それで、受け取らなきゃいい、だっけ?それが出来たらいいんだけど。ちょっと鍛えすぎちゃってね、取捨選択できないんだ」


少し自傷的に笑うのだな、と何となく冷静になった。


「それで?君の能力は?」

「…爆弾。でも、いつ爆発するかわからん。だから、使えねぇ」

「えー?!使っちゃいなよ。そんな強い能力だったらさ。爆発の強さは一定?それとも魔力で変わるの?」

「だー!わっかんねぇんだよ!全部!」

「じゃあ試そうよ!」

「試すにも人傷つけたら…!」

「傷つけなきゃいいんだね?じゃあ夜、またC級訓練所で落ち合おう。いいね?じゃあまた夜に!」


わかったも嫌だも言わせないまま、彼女は他の隊員たちの訓練に戻って行った。


「…最強はメンタルも最強ってか」


ああ、嫌になる。と思うと同時に、軍に入った理由も思い出す。


(誰かの役に立ちたい。こんな人を傷つけることしか出来ない能力でも)


結局、昼間は隅で膝を抱えてしかいなかった。

その後、大浴場で傷だらけになってるみんなと風呂に入って、そうじゃない自分に嫌気を募らせた。

夜、初めて隊員寮を抜け出した。まぁ、怒られたとしてもこっちにはA級部隊長が着いてるんだし、怖いものではない。

怖いのはどちらかといえば今から対峙するあの最強だ。一体何をさせられるのだろう。

下を向きながら歩く自分に、突然声がかかる。


「やぁ!ちゃんと来てくれたんだ。よかった」


昼間の鬼教官っぷりは嘘だったかのような朗らかな笑顔を見せて手を振っている。


「そりゃ来ますよ。俺だって役に立ちたいんですから」

「ふは、言うじゃん。じゃあ試しに爆弾作ってその辺投げてみてよ」

「…は?!いや、威力とかもわかんねぇんだって!」

「そこはほら、私が上に掛け合って何とかなるようにしてもらってるから…」


あそこあたりならなんにも壊れないし、などと彼女はほざく。

しかしまぁ、彼女ほどの存在が大丈夫だと言うんだ。信用しなくて、今ここで動かなくてどうする。


「…わかりました。やってみます」


そう言って手を重ね、ものを持つような形で集中する。

中に火薬、外は硬い素材。導火線が上から伸びて__着火する!


「んで投げる!」


ドカン!


投げた途端に爆発した。幸い、威力も低く自分の顔が砂にまみれるだけで済んだ。


「うん、見てたけどね。まずは君、目を開けて作った方がいい。今回の導火線こんなもんだったぞ」


と、人差し指と親指で長さを見せてくるが…誇張を疑うほど短かったらしい。


次は目を開けて作った。

導火線は長くなったが、威力はまぁまぁだった。

次は魔力を制限して作った。

威力は全くなかった。

素材に着目して作った。威力が改善された。


そんなふうに、試行錯誤を重ねて、朝型の魔獣が鳴く頃まで、特訓は続いた。

俺はヘトヘトでボロボロだったのに、

同じ距離で失敗を食らって、何度も魔力の制御の仕方を見せたはずの最強は、昨日の昼と、なにも変わらずそこに立っていた。


(あぁ、この人はどこまでも最強なんだ)


それを、酷く痛感する一日だった。

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