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迷宮に囚われた男  作者: 火川蓮
第六章

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chapter49 見送った行動

夕方――


王宮に戻り、夕食を済ませたあと、メイドさんに案内されて部屋へと帰ってきた。

だが、部屋の空気は重い。

みんな、どこか元気がないように見える。


無理もない。

騎士たちによる脅し、魔物との戦闘、そして日本に帰れないという現実。

どれかひとつでもきついのに、それが一度に押し寄せたのだ。

精神的な負担は、かなりのものだろう。

……まぁ、そのうちのひとつは、ぼくが原因ではあるのだが。


しばらくは、無理に会話をしない方がいい。

ぼくは、ソファーにうなだれるみんなを見ながら、そう判断した。


(……そういえば)


ふと、ひとつの違和感が頭をよぎる。


(なんで、ゴブリンの死体を集めてたんだろう?)


気になったぼくは、聞くことにした。


「巳島くん、どうしてさっき――倒したゴブリンを回収してたの?」


ソファーに座る彼に声をかける。


「……僕……速水さんと騎士たちのやり取りを聞いてて、思ったんです」


巳島くんは一瞬言葉を詰まらせ、視線を泳がせながら続けた。


「彼らは……“信用できない”な、と」


その言葉には、はっきりとした警戒が滲んでいる。


「それに、職業ジョブのことで確かめたいことがあって……」


そこで一度言葉を切る。


「ほら――僕の職業は、死霊召喚士レイスコーラーじゃないですか。

戦闘中に試してみたんですけど……召喚、できなかったんです」


淡々とした口調のまま、彼は続ける。


「なので――」


わずかな間を置いてから、言った。


「召喚するには、“媒体となる死体”が必要なんじゃないかと……思って……」


「……そうか」


ぼくは短く、それだけ返した。


(そういう召喚術があるのは、知っている)


物語の中では、珍しくもない。

死体を媒体にする能力――いわゆるネクロマンサー系だ。

だが――

それを“実際にやろうとする人間”が、目の前にいる。

思いついても、普通はやらない。

視線を上げると、巳島くんはどこか落ち着かない様子で指先を弄っていた。


彼はたぶん、知識として理解しているわけじゃない。

ただ、“できるかもしれない”と思って動いたのだろう。

……その差は、小さくない。


「……まぁ、まだ仮説ですけどね」


巳島くんはそう言って、視線を逸らした。

それ以上、この話題を続ける者はいなかった。

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