chapter45 怯える者たちの戦闘
ぼくは探査魔法を展開する。
四匹。距離は二十メートル。
さっきより少し多い。
「来ます。深呼吸を」
声が震えないようにだけ意識する。
鳩川さんの杖を持つ手が白い。
カザクラさんは唇を噛み、
エンダガワさんは視線を泳がせ、
巳島くんは――倒れた前回のゴブリンの方を一瞬見た。
(大丈夫。今回はまだ使わなくていい)
草をかき分けて、ゴブリンが現れる。
甲高い声。
「ひっ……」
鳩川さんの魔法が暴発気味に放たれる。
地面をえぐるだけ。
「狙わなくていいです。足元!」
ぼくが叫ぶ。
カザクラさんの風刃が、かろうじて一匹の足を切り裂いた。
転倒。
そこへエンダガワさんの水球。
直撃。
一匹目が倒れる。
けれど、残り三匹が一斉に走る。
距離が縮まる。
巳島くんが一歩下がる。
喉が鳴る音が、やけに大きく聞こえた。
(怖いよな)
「横に散って! 固まらないで!」
ぼくの声に、ぎこちなく動く。
ゴブリンの棍棒が振り下ろされる。
鳩川さんが悲鳴を上げ、転ぶ。
「――っ」
カザクラさんがとっさに風壁を出す。
棍棒が弾かれる。
「今!」
エンダガワさんの水球が直撃。
二匹目。
残り二匹。
呼吸が荒い。
魔法の詠唱が乱れる。
ゴブリンが飛びかかる。
その瞬間、巳島くんが前に出た。
手に持っていた短剣を、ほとんど無我夢中で振る。
浅いが、当たる。
動きが止まる。
「今です!」
鳩川さんの風刃が、今度はまっすぐ飛んだ。
三匹目。
最後の一匹は怯んだように後退する。
誰も追えない。
足が動かない。
(ここで止まるな)
ぼくは魔力を一点に集中させ、地面を弾くように水弾を放つ。
体勢が崩れた隙に、エンダガワさんの水球。
終わり。
静寂。
荒い呼吸。
誰もすぐには声を出せない。
鳩川さんの目に涙が浮かぶ。
「……怖かった」
正直な言葉。
――四匹、倒れている。
巳島くんは震える手を見つめていた。
倒れたゴブリンを見て、ほんの一瞬だけ目を細める。
(……使える)
まだ触れない。
「……倒せたか」
ぼくが言う。
それだけで、空気が少し緩む。
歓声はない。
ただ、小さな安堵。
怯えながらも――それでも、戦えた。
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