第4.5話 夜の番外編 「甘酸っぱいって、こういうことか」
夜の森。フルーナへ向かう途中の野営地。
焚き火の光が揺れている。
虫の音と風の音のなか、ふたりは静かにスープを啜っていた。
「……だし男」
「ん?」
「さっきの、ユズレ村のおばあさんの話。……“恋の街”って」
「うん」
「……怖くないの?」
「……正直、めっちゃ怖い」
「え?」
「だって、恋とか……誰かのことちゃんと想うとか……俺、得意じゃないし」
「……それに、想うだけじゃ、報われないこともあるでしょ?」
ポンヌ(心の声)
(わかる。私も、わかる……)
(だし男、あなた……そんなこと、いつもはふざけてごまかすのに)
「でも、逃げないよ。だって――」
「“神酢は想いの味”。でしょ?」
「……さすが、ポン酢の女神」
「ふふん。あたりまえよ」
沈黙。風が、火を揺らす。
そして、ぽつりとポンヌが言った。
「……ねぇ、だし男」
「なに?」
「もし……もしよ? “恋”ってものが、神酢より大事だったら……どうする?」
「え?」
「その人と一緒にいたら、帰れなくなるとしたら……それでも、そばにいたいって思う?」
だし男(心の声)
(な、なにその質問……! え、なに?これ、今、テスト? 心理戦?)
(てか、ポンヌが何考えてるのか、読めない! 女神ってずるい……!)
だし男は、火を見ながら、ちょっとだけ真剣な顔をした。
「……もしそうなら、迷うけど……きっと、ちゃんと答えを出すよ」
「……そっか」
ポンヌ(心の声)
(ずるい。ずるいよ、だし男……)
(そんな言い方されたら、ちょっと……期待しちゃうじゃない)
その夜。ポンヌは少しだけ、だし男のそばに座った。
ほんの少し、近く。
でも、それ以上は近づかない。まだ。
まだ、神酢の旅は終わっていないから。
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☆次回予告: 道中の寄り道で出会う誰かの“想い”が、だし男とポンヌの心を揺らすエピソード!
お楽しみに!




