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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第3章

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第274話 反転の指輪


 まだまだ使えそうなアイテムが見つかりそうなため、引き続き店内を見ていく。

 富裕層向けのお店だからか、単純に効果が高いアイテムばかりで惹かれる。


「ねー、こっち来て! 面白そうなアイテムが売ってるよ!」

「ん? なんだこれ?」

「録音水晶って書かれていますね。記録した音を流せるみたいです」

「凄く面白くない? 魔力は消費するみたいだけど、私の歌声とか会話を録音できるんだよ!」

「確かに凄くはありますが……戦闘で使えるんですかね?」


 映像を記憶する水晶の存在は知っていたが、音を記憶する水晶もあるんだな。

 ジーニアは戦闘で使えるか疑問を持っているようだが、スペックによっては非常に実用的なアイテムだと思う。


 例えば、事前に爆発音を録音しておけば、相手を怯ませることができるだろうしな。

 対人ならば、足音を録音しておくだけでも効果がある。


「使い方は色々あると思うぞ。音っていうのはそれだけ重要なものだからな」

「やっぱグレアムは分かってるね! それじゃ録音水晶を買ってもいい?」

「それとこれとは別だ。白金貨二十枚はさすがに手が出せない」

「えー! ケチ!」


 実用的ではあると思うが、金額を考えたら費用対効果が悪い。

 もし録音の性能が悪かったら、その実用性すらなくなるわけだしな。


「それならこちらのアイテムはどうですか? 値段的にもお手頃だと思います」


 ジーニアが見せてきたのは、綺麗な装飾の小さな指輪。

 ただの指輪ではないことは分かるが、どんな効果を持っているかは見た目だけでは分からない。


「ジーニア、この指輪はなんなんだ?」

「反転の指輪って書いてありました。利き手と反対の指につけると、利き手が変わるみたいです」

「えー! 利き手を変えてどうするのさ! その指輪こそ使い道がないじゃん!」

「いや、慣れれば使えることは間違いないと思うぞ。この装備こそ、対人専用になるだろうけどな」


 俺も人間と戦うときは、必ず利き手を確認する。

 攻撃の範囲や方向だけでなく、攻撃を仕掛けるときの指標にもなるからな。


「そうなの? 最近まで対人戦を行ってこなかったから、利き手なんか意識したことなかった!」

「アオイやジーニアは、俺と打ち合うことが多いもんな。片腕しかない俺相手なら利き手を意識する必要はないだろうが、自然と利き手を意識した戦い方はできるようになっていると思うぞ」

「自然とグレアムさんの左側に飛び込むようにしていますし、グレアムさん以外と対するときは利き手ではない方に飛び込めばいいんですもんね」

「対処のできない俺とは違い、それなりの対処はしてくるだろうが、相手からしたら相当嫌なことには違いない」

「なんか奥が深いかも! そう聞くと、その指輪が使えるような気がしてきた!」


 対する相手が利き手を意識するレベルじゃないと無駄に終わるが、お守りとして持っておくのはいいと思う。

 それに、利き手を反転させることで、自然と両利きに近づくことができるかもしれないしな。

 感覚については使ってみないと分からないが、値段次第では購入を検討してもいいアイテム。


「それで、肝心の値段はいくらなんだ?」

「金貨六枚でした。高くはありますが、録音水晶よりはお手頃な値段だと思います」

「すっごい微妙! 使いどころのなさを考えると、高い気もするけど!」

「俺もアオイと概ね意見は同じだが……面白いアイテムだし、購入してもいいかもな」


 金貨六枚なら、購入してもいいと思える金額。

 まぁ他のアイテムを見てから購入するかの判断はするが、他に高価なアイテムで絶対に欲しいと思うアイテムがなければ、購入していいと思う。


 とりあえず、一度他のアイテムも見て回ることに決めた。

 まだまだ面白そうなアイテムが売られているかもしれないしな。


 それから約一時間ほど、三人であーだこーだ話しながら店内を見て回ったのだが、反転の指輪以上のものは見つけることができなかった。

 奇抜なアイテムを売っている店ではなく、あくまでも質のいいものを売っているお店なのでこればかりは仕方がない。


 粗悪品しか見たことがないアイテムの最上級品が売られていたりして、非常にワクワクさせてもらった。

 基本的には購入するつもりのないものばかりだったが、最上級回復ポーションと最上級のロープだけは購入させてもらい、反転の指輪を含めて計三点を購入した。


「あー、面白かった! 値段は高かったけど、気になる商品ばっかりだったね!」

「だな。あそこのマスターを信じて良かった。他のおすすめも聞きたいぐらいだ」

「センスのある方ですよね。私はおすすめのスイーツを聞きたいです」

「私は服屋を聞きたいかも! 今からまた行く?」

「いや、さすがに今からは行かない。礼もしたいし、滞在中に一度は絶対に行くけどな」


 これだけいい場所を教えてもらったのだから、手土産を持って再訪するのは確定している。

 とはいえ今日はもう時間もないし、日が暮れるまでぶらぶらしてから宿へ戻ろうか。

 アオイのわがままで急遽休みにしたが、思った以上に充実した一日を過ごせてよかったな。



ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

本作のコミカライズ版の第一巻が本日8/23に発売されます!!!

担当してくださった村下先生が漫画を描いてくださっており、web版を読んだ方でも楽しめるような素晴らしい作品に仕上がっております!

どうかお手に取っていただけたら幸いです<(_ _)>ペコ


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