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レイとディルのところに戻ると二人はたくさん褒めてくれた。
「やったね!よく頑張ったよ」
「さすが我のパーティーメンバーなだけある」
「ありがとう...」
少し恥ずかしくなりながらも用意されていたベンチに座った。隣にディルが座り、レイも座ろうとした時、彼は闘技場に呼ばれた。
「レイ、バートン、前へ!!」
会場に声が響き渡る。レイはめんどくさそうに観客の前へと顔を出した。
「子供じゃねーか」
「なんだ、なんであんな奴がいるんだ?」
周囲からたくさんのブーイングがレイを囲む。。中には食べ物を彼に投げつける者もいた。その投げた食べ物はレイを守っている結界によって当たってはいない。
レイが心配だ。別に彼が心を痛める心配は特にしていない。魔族の王ともあろう魔族をこうも侮辱するのは彼的にどうなのか、それに怒るのではないかと心配しているのだ。彼は魔王であり、それは名だけではない。実力も魔王なのである。もし彼がここで怒りの制御に失敗すればこの闘技場全体が爆発するだろう。そして多分、周りの人たちは全員死ぬ。
だが彼の表情は至って平然としていた。何を心配しているんだ、と自分が思うほどに彼には怒りが見えない。
「おいガキ。お前の母ちゃんはどうしたんだ?」
「母上はもういない」
「おぉそうか、死んだか?それに母上...お前貴族か!潰れ落ちた貴族かなんかだろ?俺はなぁ、貴族ってのが大、大嫌いなんだ!堕ちた貴族でもいい、ちょっとした復讐に付き合ってもらう!」
バートンの大きな笑い声を皆が聞いている中、視線はレイにあった。彼は泣くのか、それとも癇癪を起こすのか。彼の反応を待っているのだ。
だが、その前に笛が鳴ってしまい、観客はレイの反応を見るのをやめ試合全体に注目を変える。だが、その先の光景に誰もが驚愕した。
笛が鳴った瞬間だった、瞬きの間にレイはバートンの後ろに回っていて、膝をつかせていた。レイの手はバートンの長い首筋に当たっていて、伸びた爪が鋭く光っている。少しでもバートンが動けば首が飛ぶだろう。
「っ!」
「動かない方がいい。我の爪は鋭い」
そう言われるとバートンは動くのを止めた。悔しくも降参を口にする。その一部始終を見ていた観客は驚きで声が出なかった。一切、喋る者はない。
「一つ面白いことを教えてあげよう。母上が死んで我が悲しんでいると思っているのなら大間違いだ。なにせ、母上を殺したのは我自身だからな」
そしてしゅんっと音と共にレイの手が首から離される。バートンは腰を低くして逃げるように走り去っていった。




