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『勇者よ、そなたは愚かだな』


グリグリグリグリとずっと勇者の背中を踏んでいる魔王。それを遠くから見ている私たちの顔に表情はなかった。エリーナは心配そうにしているが、それは仮面であって中ではどうでもいいとでも思っているだろう。なんせ、彼女の狙いは昔からディル一人だったから。


「なんでこんなことになったんだ...っ」


悔しそうに歯を噛む翔の姿に、少しスカッとした。


「破滅エンド、当たってたでしょ?」


ニヤッと彼に追い討ちをする。


翔は急に私のことを睨んだ。


「そうか、アーシェ。お前が魔王を呼んだんだな?この展開を知っていたな、お前!クソっ...おいエリーナ!そいつを反逆罪で処刑しろ!!お前ならしてくれるよなぁ?アーシェが消えればディルはお前のモンだぞお姫サマ」


私はエリーナの方に振り返る。彼女は、なんとも言えない冷ややかな眼差しで私を捉えていた。考えているんだろう、どうするか。


「...そうね。アーシェ、あなたを処刑するわ」


冷ややかな目とは反転し、顔が酷く歪んでいった。嬉しいパワー全開の彼女に背筋がゾッとする。


彼女は、狂っている。それを知ったのは、今だった。


「なんなら、ここでもう処刑しちゃいましょ?」


どこからか現れた厨房のナイフを持って私に襲ってきた。が、それは私をいつも防いでる結界によって拒まれる。


「っ!何よ、これ?!」


結界を強く叩くが、一切反応しない。


「卑怯よ、通しなさい!!」


どの口が言ってるんだか。通されたら死ぬことを分かっていて通す人がいるか。


私は深く、ため息をついた。


「はい、そこまで」


ちょうど私も止めを言おうとした時だった。ディルがエリーナのうなじを叩き、気絶させた。彼は普段の笑顔を浮かべている。


「魔王も、そろそろ帰っていいと思うよ」


『...』


魔王はディルを見た後、目を閉じて意味ありげに微笑んだ。そして私の方を向くと、哀れんでいる顔を向けてきた。


『お前も辛いな、あんな奴と一緒にいて。どうだ、我と一緒に魔王城にくる気はないか?』


最後の発言に時が止まったかのように周りの全てが停止した。


「「は?」」


「やっぱりお前らグルだったのかよ!!」


「違うって!今勧誘されたばっか!」


「ちょっと魔王、こっちに来てゆっくり話そう?」


ディルは”ゆっくり”のところをやけに強調する。


『冗談だって。我もお前が許すとは思ってない。なあ、アーシェと言ったか?』


「は、はい...」


『我はお前が気に入った』


いや私気に入られることした記憶がないんですけれども。


「ど、どうもありがとうございます...」


『故に、お前らと一緒に行動する。勇者は我の配下に任せよう。何、決して悪いようにはさせぬ。ちょっと罰として城全体をピカピカになるまで掃除させるだけだ』


地味に嫌な嫌がらせだなー、と他人事に踏みつけられている翔を見る。


「そんなの学校の掃除当番よりもひでぇじゃねえか!」


てかそんなことよりさっき魔王なんて言った?


お前らと一緒に行動する...?


私とディルは交互に見合った。そして同時にどう言うことか理解し、顔を真っ青にする。


「ちょっとそれは難しいかと!」


「さすがに魔王でもそれは許せないよ?アーシェには僕だけいれば十分!」


ディルは何変なことを言ってるの!今ふざける場合じゃないでしょ?!緊急事態だよ!!


『あっはは、面白いな〜』


どこが?!

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