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「そうだ!今夜宴があるらしいの!私たちって参加するのかな?」


話題を作ろうと先ほど厨房で教えてもらった宴のことを持ち出す。


「...宴?」


ディルは変わらない様子だったが、宴という言葉に反応した。興味なさそうに私を見つめている。


「アーシェが行くなら行こうかな」


「いやそもそも行ける許可出てないけど」


このところは陛下に許可を貰わなければならない。その点、ディルが申し出ればすぐに許可されると思う。


地味に話が噛み合わない。次はどんな話を持ち出そうと記憶を探す。


「ねぇ」


ぷつり、と集中が切れた。


「アーシェはさ、僕のことが嫌い?」


そんな言葉に私は目を見開く。目の前にいるのは完璧な笑顔を浮かべるディルじゃない。眉を八の字にして、とても苦しそうな顔をするディルだった。


「そんなことない!」


ギュッとディルの服を掴む。気づけば私も感情的になっており、声が廊下に響いていた。幸い近くに人はいない。


「でもさ、前からずっと離れるとか言ってたよね?ねえ、教えてよ。僕がダメなところ全部教えて。直すから。僕を置いて行かないで」


今にでも泣きそうな子供のような瞳で訴えてくる。私の心臓が強く握られるように苦しくなり、声が突っかかって出なくなった。


「ち、違う!...だって...そうじゃない。私とディルが一緒にいるのは借金を返すためであって、それが終われば私たちは自分たちの生活に戻る...」


この言葉は、いったい誰に向かって言っているのだろうか。ディル、か。それとも自分自身か。


「じゃあ...アーシェは僕のことを嫌ってない?」


「嫌ってるわけない!」


私は必死に首を振って否定した。


すると、苦しそうな顔から180度変わり、嬉しそうな、幸せそうな笑顔を浮かべる。その笑顔には少しの安心が混ざっていた。


「よかったぁ」


気づけば私は彼の胸の中。私を抱いている腕の力が強くなる。


「じゃあさ、アーシェはこれからも僕と一緒に冒険者しよう?パーティー組んでさ、君と、僕で」


希望を持った小さな子供のようなはしゃぐ彼を見て私も自然と心が軽くなる。


だけど...。


「ごめんなさい、私第一王女様と約束して。借金を返す代わりに...あなたから離れるって」


「うん、知ってるよ。でも彼女に僕たちは止められないから。必要があったらその時に応じてそれ相応の処理をするつもり」


というと、どういうことだろうか。そのことは心配しなくてもいいということなのか。


「君と僕はずっと一緒だからね」


その言葉に思わず頬が綻ぶ。


うん、ずっと一緒。それがいい、それでいい。


なんだろう、この気持ち。なんだか、熱くて、フワフワして...。


「ディル、あのさ」


「ん?」


彼は抱いている状態から離れないまま返す。


「この、熱くてふわふわする気持ちってなんだろう。なんか、暖かい」


「っ!」


ディルの表情が一瞬にして真剣になる。彼は手を私の額に当てた後、険しい顔をした。


「...........熱出してるよ」


....あぁ、なんだ。さっきからディルを前に熱くなったり気まずくなったり苦しくなったりした理由は、熱か。


全ての辻褄が合う。


私はディルのことが恋愛感情的に好きというわけではなかったのだ。熱で一時的に頭が働くなってそういう誤った判断をしてしまっただけだ。


早く寝て元気だそう。



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