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「う...」


目が覚めた時、私は自分の客室のベッドの中にいた。窓の外を見ると満月が輝いていた。ふと手に違和感を感じ、顔を横に向けるとディルが心配そうに私のことを見ていた。私の手を優しく握っている。


「アーシェ!起きたんだ!」


まるで人が死ぬみたいな表情をしており、大袈裟だと彼を落ち着かせる。


「ただの熱。大丈夫だって。私、どれくらい寝込んでいたの?」


「2時間ぐらい」


ディルは手を私の頭の後ろに伸ばす。そしてグイッと引っ張った。彼の鼻と自分のが当たりそうな距離。心臓がバクバクしてしまう。これは熱のせいなのだろう。


コツン。そんな音が聞こえると同時に彼の額が私のに当たる。


「熱は、もうなさそう」


手を放し、安心したようにディルが微笑む。私たちの目はずっと合っていた。


「顔、赤いよ?」


ニヤッと笑う彼に私は慌てて反対方向を向く。


あんな美形が目の前にいたら誰だって赤くなる。...でも初めて会った時から今まで赤くなったことなかった。やはり熱の影響か?恐るべし。


ディルは私が平気だとわかると、ベッドの端に座った。


「今日、あと二時間ぐらいで宴が始まるんだけど。どうする?」


「宴...」


私はボーッと天井を見つける。


宴か、行きたいな。公爵家では参加できなかった。家族が参加している中、私だけ角で見つめていた。うらやましかった、死ぬほど。


「行きたいなぁ」


そう呟くと、ディルは「わかってた」と言った。


彼は前みたいに私を止めなかった。てっきり止めにくると思ったのだけれど。彼も成長したのかな。


「僕が準備を手伝ってあげるよ」


「あ、ありがとう」


私はベッドから降りると、異空間から複数のドレスを取り出した。これでも一部であり、他にも買ったやつはいろいろある。


「この中から選ぼうかなって」


ディルに「買いすぎだ」、「無駄遣いじゃないのか?」、などと言われないことを願う。


「それだけ?」


彼の反応を待っていたが、出てきたのはそんな言葉だった。私が予想していたのと反対の。


ディルは私が出した服を一着一着専門家のように細かいところを検査している。そして時々、私のことをチラリと見てから服に目を写した。


「他は持ってないの?」


「他...」


この際、全て出してしまおうか。


私はどさっと異空間からドレスを山ほど出す。


これほど見たらディルにも流石に無駄遣いしているわがままな女と思われてしまうか?


「足りないな。まだないの?」


やはり彼の口から出てくる言葉は予想外だった。


「これで、最後」


「この依頼が終わったら買いに行かないとね」


ディルは一着手に取ると、私に渡してきた。そしてそれに続いて似合いそうだと思ったドレスをどんどん渡してくる。


「今日の宴のテーマに合いそうな服を数着選んだ。まあ、アーシェは何を着ても似合うけど」


あらま、お世辞がうまいこと。


とにかく、私はディルに言われた通り、そのドレスたちを持ってクローゼットに篭った。そしてそこから私のファッションショーが始まる。


「んー、いいね」


一着目の服。オーケーされた。


「おお、綺麗...」


二着目。


「うんうん、似合う」


三着目。


「可愛いね」


四着目。


「あ、これもすごい」


五着目。


こんなことを永遠と続けているうちに、全てにオーケーが出た。


「どれがいいのかわからない...」


とにかく全部似合うって言ってくれるなら適当に一着選べば。でも、全部可愛いと言われると逆に自信をなくしてしまう。適当に可愛いと言って私の機嫌をとっているのではないかと。


心が重いが、一応ましだと思った一着を選んだ。プリンセスドレスで。水色がメインで花と真珠がドレスに散らばっており、妖精のようなドレスだった。


「これにしよう」


またクローゼットにこもり、ドレスを着て出てくる。


「いいね、可愛い。来て、髪の毛やってあげる」


私を椅子に座らせると、丁寧に髪の毛を解かしてきた。その手際はとても優しく、気持ちよかった。一度も痛いと思うことなく髪の毛は綺麗にセットされる。髪型はダウンで、頭に青い花のアクセサリーが付いている。こんなものを買った覚えはなかった。ディルがどこかで入手したのだろう。


「完璧。肌の露出も最低限だし。でも、可愛さがなぁ...。他の人に取られたら僕の制御が効かなくなりそう」

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