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「そう。あなたは魔王を倒すために呼ばれただけの存在だけど」


そうぼそりと呟いたが、翔には聞こえたようだった。


「何が言いたい?」


「あなたがこの国の王族含む貴族に利用されてるだけってこと。多分魔王が倒されたらあなたは捨てられる」


翔は目を見開いた。彼も少し納得しているらしい。


「ラノベではそういうのが多かったな」


ラノベか、懐かしい。あの世界では私も本の一冊や二冊ぐらい持っていた。そんなラノベが本物になっているのがこの世界だけど。本当、ラノベに似すぎているところがある。


ところで、ディルはどこに消えていったのだろうか。あの血相では相当怒っていたようだし。しかも私が怒らせてしまったみたいだから後で謝りに行った方がいいのかな。


「あなたが部屋にいるときの護衛は必要なさそう。じゃあ、私はディルを探しに行くから。勇者様」


部屋を後にするとき、突き刺さるような視線が私に向けられていた。どうも私は彼に嫌われているらしい。私も嫌っているからこれで彼が近づいてこなければ万々歳だ。


見覚えのある長く広い廊下を歩きながらディルを探す。まあ、探すと言ってもそもそも見つかる気がしないので第二の散歩だ。今度は反対方向に歩いてみる。少し歩くと、厨房を見つけた。中からは美味しそうなシチューの匂いがする。つられるように入ると、使用人たちが忙しそうに料理を作っていた。


「あら、お客さんだわ」


優しそうな垂れ目のおばさんが私に気づき、微笑んでくる。


「こんにちは。今日は何かあるんですか」


こんなにも忙しそうにしているので、舞踏会とかあるのだろうか。


「今日は勇者様が現れた宴を開くのよ。陛下も大層この宴に期待していてね、私たちも頑張らないと首を斬られちゃうわ」


おばさんは困ったように笑った。彼女の手はずっと忙しくじゃがいもの皮を剥いている。


この国の陛下は人の命をこんなに軽視しているのか。彼にとって人の命はハエみたいなものなのだろう。同じ人間だというのに。


「私も手伝いますよ」


厨房に置いてある包丁を取ると、じゃがいもがたくさん入っている袋からじゃがいもを一個取り出して皮剥きを始めた。昔、公爵家でこのような仕事を毎日されていたので慣れている。


おばさんは慌てて私を止めようとしたが、私が聞かないので感謝の言葉を述べてから仕事に戻った。私たちは途中で雑談などをしながら気づけば全てのじゃがいもの皮がきれいさっぱり剥けていた。


終わったところで他の使用人たちのところを手伝いに行く。なんとか全て時間内に終わったとき、私は感謝されまくった。


「ありがとうございます!本当に!」


「い、いえいえ。こちらこそ役に立ててよかったです...」


何かお礼をと厨房の中を探し回っている使用人たちを後にして私はバレずに厨房を抜けた。引き続き散歩をしていると、見覚えのある影が目に入った。


「ディル!」


ディルは廊下の真ん中に立っており、ボーッとしていた。その表情は”無”である。私が読んでも気づかないのか、前を見つめている。


これは、いいチャンスなのではないか。


恐る恐る後ろから近づき、勢いよく彼の肩を叩いた。


「っ!」


声は出さなかったが、びっくりしたらしいので成功である。


「どうしたの?明るいディルらしくないよ?」


相談なら乗るよ、ディル君。


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