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私は、お茶を入れることを忘れて重い足取りで部屋に戻った。扉を開けようとすると、ディルが中から出てきた。


「あ」


なんか、気まずい。私は挨拶をすることもなく、俯いたまま彼の横を通り過ぎて部屋に入った。彼の近くにいると、心が苦しくなる。


「アーシェ、戻ってこなかったから心配したんだよ?」


後ろからディルが扉を閉じる。


「探しに行こうと思ったんだから」


扉を開けたのは私を探しにいくためだったのか。私は申し訳なく思いながらも席について。目の前には翔が座っている。彼は私とディルを交互に見つめて、不服そうに顔を歪めた。


「お前ら、付き合ってんの?」


ビクッと私が反応してしまう。ディルも動きを止めた。


「...違うよ。僕らはただの仲間だから」


ディルが答える。彼はその完璧の微笑みを浮かべていた。


普通ならディルの言葉に頷くはずなのに、私は今心の中が不安で仕方がない。私と彼は友達だ。それ以上、それ以下でもない。


なのに。まるで好きな人に振られたかのような悲しさを感じるのだろうか。


私は自分の不安を隠しながら、誤魔化すように笑った。


「ふーん。友達か。よかったな。王女サマに知られたらアーシェはただじゃ済まないかもだぜ」


翔は机の上に用意されているお茶を手に取った。


なんだ、お茶あるんだ。


無駄足だったな。


「あ、そうだ。ディル」


ぼうっとしているディルを呼ぶ。彼は振り返り、優しい微笑みを見せてくれた。


「私、借金返済できるかも」


「......」


ディルの笑顔が少し緩まった。私は彼の表情をよく観察しながら話を続ける。


「王女様が借金返済しくれるって言ってた。そして、その条件がディルと離れることだったの。もともと借金したら離れる予定だったからそれで了承しちゃって。...だから、今までありがとう。この護衛の依頼が終わったらもう行こうかなって」


「...........あのクソ王女」


今回は空耳じゃない。確実にそう聞こえた。


私は何か言い返す前にディルは立ち上がると、転移魔法を使ってどこかに行ってしまった。


「ディル!」


呼び止められないまま、翔と取り残されてしまった。


この状況は正直言って、危ない。私は翔と一定の距離を取るように離れる。


「おいおいそんな警戒しなくてもいいだろ?」


あの出来事があったのにそんなことを言える彼。私はそれにお構いなくどんどん距離を取った。


「ていうかアーシェSランクだったんだな。強いんだ」


「...ありがとう」


「だが」


翔は人差し指を私に向ける。そこから眩い光が生まれた。


「俺は勇者だ。Sランク冒険者よりもよっぽど強いんだよ」


少しすると、眩い光が萎んでいった。何かの攻撃かと思ったが、ただ見せびらかすためだったらしい。


「だから、あなたに従えと?」


「ああ。当たり前だろ?俺は勇者だ。世界の命運を背負ってるんだよ」




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