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一日はすぐに終わった。もう下校の時間で、これからカラオケに向かう人たちは早々に部屋を出て行った。私もそろそろ家に帰ろうとバッグを持つと、誰かに手首を握られた。


ディル、また私に関わってくるなんて。


そう思い、振り返るとディルではなくクラスメイトの黒沢翔だった。


「黒沢くん?」


彼は俯きながら、私の手首を握っている。


「ちょっと...ついてきて」


私は彼に引っ張られ、校舎裏へとついて行った。


まさか、と思う。


こんなテンプレな場所であんなテンプレなことを言うわけが。


「す、好きです。付き合ってください!」


彼は見事90度腰を曲げ、私に向かって言った。


「...あ...え、と」


くるとは薄々気付いていたものの、断れない。


だが、断らなければ。これは私の人生に関わる選択になるかもしれない。


「ごめんなさい、でも気持ちは嬉しかった」


見事、私の口からもテンプレなセリフを出す。すると、翔は驚いたかのような顔をしていた。だがすぐにつまらなさそうな顔をする。


「あー...そりゃ簡単に落ちないか。学校一の美女を彼女にしたら俺の格が上がると思ったのになぁ」


私は黙り込んだ。怒りで爆発しそうだった。とにかくこの場で彼と同じ空気を吸いたくないと戻ろうとするが、彼に肩をグイッと引っ張られ、壁に押さえつけられる。脚の間に彼の膝が割り込み、逃げられない。


「なら無理にでも俺のものにすればいいんだよ」


彼の眼差しは、気持ち悪かった。


同時に自身への危機感を感じ、必死に抵抗する。彼を強く押そうとすると手を掴まれ、上へ固定されてしまった。


顔が近づく。


「誰かっ...お願い...助け...」


いやだ、彼となんて絶対にいやだ。顔を必死に背けるが、それには限界がある。


ここは校舎裏、人がくるところではない。誰も、助けにはこない。


「.....っ!!コイツっ!!」


私は片足を使って思いっきり彼のアソコを蹴った。全ての力から解き放たれ、私は逃げる。必死に悲鳴を堪えている翔を後にして。校舎に戻った後、私は教室の自分の席に座り、上半身の体重を机に乗っけた。


怖かった。すっごく怖かった。


人がいない教室を見ていると、また恐怖が湧き上がってくる。走り疲れているにも関わらずバッグを持ち、学校から走り出る。


家へ家へと。とにかく彼から離れたい。


曲がり角に家が見えてきた。


家だ、家へたどり着ける。


自然と口角が少し上がる。すぐに玄関の扉を開けると、そこは、全く別の世界だった。


「え...」


ポトっとバッグを落とす。


ここは確かに私の家であり、私の玄関の扉だ。なのにどうして、どうして開けた先は中世的な世界なのか。


「あれ、成功したのかな」


そこからひょっこり現れたのは、私のよく知っているディルだった。


彼は今学校に...え、服装も違う。このディルは誰、あのディルは誰...。


二つの記憶が私の頭の中を渦巻く。


一体どっちの記憶が私の本当の記憶なんだ。


とんでもない情報量に私は失神してしまった。



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