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王都に着き、私はまず最初に泊まる宿を探した。ディルには王城の客室が用意されているらしく。しばらく私たちは別々で行動することになった。そのことに対してディルは不快だったが、国王の命令ということで渋々王城へ行っていた。
「後で国王に話を付ける...」
その時、そう呟いていた。表情が少し怖かったのを覚えている。
そんなことを考えながら宿探しに出ていると、ギルドが前に見えた。さすが王国一のギルドである。建物が大層立派だった。元々宿を探した後にギルドに行く予定だったが、目の前にあるなら先に中に入ってみもいいだろう。
メーアの街と比べ物にならないほど大きな扉を開け、中に入る。防音結界が張ってあるのか、外にいた時には聞こえなかった騒音が聞こえた。酒を飲んでいる者、必死に依頼を探している者。女性に絡んでいる者。
私は絡まれている女性の方へ歩み寄る。どうして周りの冒険者たちは皆見て見ぬフリをしているのだろうか。
「おいおい、いいだろ?俺たちと一緒に飲もうぜ?」
絡んでいる数人の男性冒険者はその女性の冒険者の肩掴み離さない。
「やめてください!私未成年です!」
女性冒険者も抵抗しているが、苦戦している。
しかも未成年ときた。お酒は十六歳からと決められているから今はまだ十六歳以下ということか。
.......
...........
女性の体をまじまじと見る。彼女の容姿はとても十六歳以下には見えなかった。十八歳ぐらいはあると思っていた。十六歳にしては...ちょっと大人っぽすぎるというか。
「誰かっ!誰か助けてください!」
ハッと我に返るとすぐに男性冒険者と彼女の間に割ってはいった。
「未成年ですし、嫌がってます。やめてください!」
これで彼らが引くとは到底思っていない。だが...
「おぉ?そうかじゃあお前が俺らの相手してくれんだなぁ?」
こっちがまた絡まれるとも思っていなかった。
「バカ言わないでください。そんなことするわけないです」
「はぁ?俺らに向かって馬鹿なんて...命知らずだな..?覚えとけ、俺らはBランクだBランク!!お前らみたいなルーキーに言われる筋合いはない」
Bランクか...。大抵の冒険者はC、Dランク。大抵の冒険者より上というだけで権力を振り回していいとは思えない。
「ランクなんて関係ありません。とにかく引いてください。私にもイライラの限界ってものがありますから」
「何だ、へなちょこパンチでも放つのか??」
ワッハッハと笑いが広がる。
「...」
もうこの人たちは救い用がないと思い、女性冒険者の手を引いてギルドを出ようとしたが、先ほどの冒険者に肩を掴まれた。
不快でしかない。
「おっと、どこに行くんだぁ?」
私は無言で肩に置かれた手を掴む。そして力を込めた。
「いだいいだいいだい...」
「邪魔です」
冷たく睨むと、数人が後ろに下がる。気づけば周りにいた人たちはまるで面白いものを見るかのように観客していた。そんな人の視線を無視しながら外に出ると、女性から感謝される。
「ありがとうございます!ありがとうございます!助かりました...」
「大丈夫ですよ。これから気をつけてくださいね」
とは言ってもその容姿じゃあまた少ししない内に狙われそうだ。少し、結界を張っておこう。
手を後ろに隠して、魔法を使い彼女の周りに見えない結界を張った。先ほどの冒険者のような人が彼女に近づけなくなるというものだ。これで、大丈夫。
彼女と別れた後、すぐにいい宿が見つかった。宿の中に入り受付を済ませ荷物を部屋に置くと、本屋へ向かう。宿の受付人は優しく、私に王都の地図をくれた。それを見て大きな本屋にたどり着く。
「冒険者...魔物...」
本を探していると、一つだけ目に付く内容が見つかる。
『パラレルポータルについて』
パラレルポータル、とは何か。聞いたこともない。店主に少し読んでもいいかと聞くと、十五分なら、と了承してくれた。早速本を開く。
『パラレルポータルとは
ここと違う世界を繋ぐ謎のポータルである。知られていないが、毎年数人の人がこのポータルに吸い込まれる。かろうじて戻ってきた人は、皆別々の情報を言っていた。ひとりは地獄を見た、と。ひとりは最高だった、と。吸い込まれた時、この世界の記憶は帰ってくるまで消える。
パラレルポータルはきっと今もどこかで人を吸い込んでいるのだろう。
誰も、その奥の世界がどうなっているのかはわからない』
パタン、と本を閉じた。
「ちょっと何言ってるかわからないなぁ...」
世界が二つ?違う世界?
聞いたこともない。
多分どこかの研究者が立てた仮説だろうと思い、本を元に戻す。
途端に強い吸引力を感じる。瞬時に本棚を掴んだ。私の後ろにポータルみたいな入り口があるのが見えた。青く渦巻いているように光っていて、その存在感は絶大だった。だが、本屋にいる店主も他の人も誰も気付いていない。
「っ?!」
本棚の本がどんどん吸い込まれていく。風圧に自分の力が負けそうだが、必死に本棚にしがみついた。
一本二本と指が吸引力に負けており、最後には自分を保てなくなり、私もポータルの中に入ってしまう。
..........『パラレルポータル』は本当だった?
「誰かっ!!!」
..............
そしてまるで最初から何もなかったかのように本屋は通常通りに戻った。




