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目覚めた時、私はベッドの上にいた。太陽の位置から見て昼ごろだ。ディルが抱きついてきた時に疲れすぎて寝てしまったのだろう。ディルとノアの姿が見えないのでおそらく外に行ったか。
予想では彼らは今頃領主様の屋敷の中で領主様と話をしている。ディルは、どれほどの大金をもらえるのだろうか。
今回もまた活躍できなかったことにため息をつき、ベッドから出て部屋の窓を開けた。ふと窓から下を見ると。何事もないかのように通りすぎていく人が目にとまる。
腕を組んで歩いている恋人たち、駆け回って遊んでいる子供達。こんな平穏な日常を送っている人たちがただ一つの宗教団体に殺されていたかもしれないと考えると胸が痛くなる。
ふと、視線を感じ、顔をあげると、道の向こう側の家の奥さんが洗濯物を干していた。その目は私の目と合う。
「おはようございます」
軽く挨拶をすると、奥さんは微笑みかえしてくれた。その暖かさに思わず私も微笑み返す。途端に、ドアからノックが聞こえ、すぐに窓を締め、「入っていいよ」と答える。
「戻ったよ」
ディオは大きな金貨が入っているだろう袋を持って入ってきた。
「ほら、これも」
数種類の焼き立てのホカホカのパンを用意されている机に置く。
「ありがとう」
お礼は言ったが私の心と目はパンにではなくディルが握っているお金へと移ってしまう。あの中にどれくらいの大金が入っているのか。何にせよ世界を救ったのだ。金貨千枚くらい入っていてもおかしくはない。
「後、これから国王との謁見があるから王都に行くことになるけどもちろんアーシェもついてくるよね?この街を出たかったんだし、ちょうどいいと思うんだ」
国王の謁見って...想定内ではあったけどやはりすごいと思う。私の家族みたいな公爵家ならともかく、ディルはSランクでも平民だ。いや、Sランクが平民扱いされるわけないか。さすがに貴族扱いにはなると思う。それほどSランクは貴重なわけだし。
「私も一緒に行く」
王都のギルドはここメーアの街よりも広い。ということは報酬の額も上がるはず。ということは借金が早く返せる。
借金返済の明るい未来に期待だ。
「あれ、ノアがいないけど」
お金のことを考えすぎていてノアを忘れてしまった。これではいけない、自重しなければ。
「ノアなら領主が引き取ったよ。行動といい容姿といい、領主様が気に入ったらしいから」
ノアは領主様の息子になるのか。最底辺の奴隷から一貴族に。
多分ノアは最初は戸惑うものの、すぐに貴族の生活に慣れるだろう。私みたいにならないことを心の中で強く願って彼を脳内から手放した。
「じゃあ、今から出発しようか。馬車の手配はもうしてあるんだ」
何と行動が早い。
「じゃあ、ちょっと待って。準備をしなきゃ」
「荷物ももう揃えたよ」
驚いた。もうそこまで進めていたのか。周りが少し空っぽだと思ったら。
「じゃあ、出発しよっか」
最後の最後に忘れ物がないかチェックした後、私たちは宿を出て街の外まで歩いた。木造のシンプルな馬車が止まっており、私たちを歓迎する。ディルと一緒に馬車に入ると、馬車はすぐに出発した。
....そういえば後どれくらいで王都につくのだろうか。王都に着いたら冒険者についての本を本屋で探したいな。




