第33話
週末なのでもうちょっと頑張ってみました。手首を怪我してちょっと厳しいですね。
いつもありがとうございます!
肩丈の真っ白くて透明な銀髪。そして透き通るようなきれいなお肌。目つきは少し鋭くて怖そうに見えていましたが彼女は私が今まで見てきたどんな人より澄み透って冴えた目を持ってここにいる皆を見渡していました。
「百花繚乱」第3席「速水愛」。この学校であの「合唱部」の青葉さんと渡り合える唯一の存在。今年入ったばかりの私にはあまり詳しい人ではありませんが先まであんなに燥いでいたあの団長さんがずっと大人しくしているところを見るとあの速水さん、只者ではなさそうです…
「本当のことでしょ?こっちはあんた達から疎まれても命がけであんた達のことを守っているのよ?なのに資質が疑わしいなんて、そんな言い草はちょっとないんじゃないかしら?それに偉そうに言っているんだけど結局あんた達だって私達と同じく失敗したからお互い様じゃない?」
すごい勢いでただ今青葉さんから言った自分達の資質を疑っているような発言について自分の意見を述べる速水さん。
真っ白な「百花繚乱」の制服の上から見えるリボンの色から考えると学年はこの学校で一番の上級生の3年生。それに「百花繚乱」を先頭にした神界側のリーダーと言われるだけにその勢いは半端ないです…
実際あんなに大勢の神界側の生徒達に囲まれて私達を見下していてその視線はまるで虫でも見ているようなおごり高ぶってもはや孤高の至…!
会長さんは「女王様」と呼ばれていてもお姉ちゃんみたいな感じですごく親しい人だったらあの人は高圧的で権威的なまさしく「女王様」って感じ…!
でも…
「本当のことを言っただけです。そんなにムキになる必要はないと思うんですが。」
そんな速水さんに負けず早速言い返す青葉さんでした!
「「大家」は決して一般の生徒達には接続させてはいけない一味。そんな「大家」を放っておいてそちらの方は何をなさっていたんですか。」
っと面目ありませんって感じで先からずっと黙っている団長さんに話を振る青葉さん…!
はわわ…!これって思った以上大事になってしまった気がする…!
「「Fantasia」のライブは普通のライブより人が多いから当然現場にはある程度の混乱も起きるもの。こっちはあんた達と違っていつも人手不足だからそれを全部うちで処理できないわ。だから団長のゆうなが直々に配置されたわけ。こう見えても一応「勇者」だしたいていのザコ達はただゆうながいるだけでその辺には絶対近づかないから。」
あの団長さん、思ったよりすごい人でしたね…私にはもうただの変態さんに過ぎないんですが…
「それに相手はあの「大家」の「薬師寺天真」だった。世界政府からも掴めなかった大犯罪者だよね?どこから入ったのかすら世界政府も未だに把握できてない。そんなの私達にどうしろって言っているのかしら。
それにもしぶつかっても「勇者」とはいえゆうなはまだ学生レベル。おやつタイムみたいに人を殺しまくっている殺人鬼なんかは全く論外だわ。」
「そんなものを防ぐために「百花繚乱」と「Scum」から人を出しているのでは?」
青葉さん…!一歩も譲らずに速水さんの話を続いて言い返している…!相手は3年生、しかも神界側の一番偉い人なのに…!
「じゃあ、あんたがやってみれば?あんた、あの「伝説の歌姫」「青葉海」様でしょ?そんなに自分が偉いと思うのならあんたが直接やってみたらどうかしら?できないよね?私達と違ってあんなた周りからチヤホヤされて育ったただの芸人なんかに過ぎないから。」
「喧嘩でも売るつもりですか?」
そんな青葉さんに負けず先よりもっと強い姿勢で突っ込んでくる速水さん。でも速水さんの嫌がらせにも青葉さん、顔色が全く乱れてなくて逆にすごい…!
確かに薬師寺さんは怖い人です。あの団長さんだって多分一瞬でやられてしまうかも知れません。薬師寺さんは「大家」の切り札ですからそれくらいは当然なことです。
「死神」と呼ばれるのは決して伊達ではないということは共に生活していた私が一番知っています。だってあの人からはいつも血生臭さがしましたから…もし私のせいであの団長さんが傷ついてしまったら私は…
速水さんが団長さんのことも、青葉さんが生徒達のことも心配しているのは確かによく分かります。でもそれでもお互いにそんな言い方は良くないと私は…
「大体何でこの学校に「大家」の関係者がいるわけ?生徒会はその本人に何の問題もないと言っているんだけどこっちには何の保証もないわ。」
っといきなり私に向かってしまう話題…!
「確かにそうです。なぜ大丈夫だと言い切れるんですか。「大家」は古代から鎖国政策を通してきた極端の人間中心主義者。人間以外の種族は容赦なく踏み潰し、彼らによってこの世界から絶滅した種族も相当いると伝わっています。それに関してぜひ生徒会の方からご意見をお聞きしたいのですが。場合によっては生徒会の責任になることもありますから。」
つ…ついに来てしまった…
珍しく意見が合った思ったのにまさかの話題…青葉さんもまた速水さんと同じ立場にあってこの問題はいずれ確かめておかなければならない問題…これは生徒達の安全に関わる大事な問題からです。
ここではっきりしないといずれ私ではなく他の生徒たちに被害が起きてしまうかも知れない…
でも私はこんな大勢の前で自分が「大家」の人間とは自分の口からでは決して言えませんでした。皆の前で自分が「大家」の後継者教育を受けた「鉄国七曜」の孫娘で「薬師寺天真」は自分の付添人だったとは決して言えませんでした。
もしこれを明かしてしまったら…
「直ちにこの学校から、いいえ、この社会から排除するべきです。」
きっと私はこの世界から追い出されてしまう…
「精々足掻くのがいいことです、お嬢様。」
薬師寺さんがそう言ってのはこれだったんだ…
どんなに足掻いても私が「大家」の子という事実は変わらない…一度足を入れてしまったが最後…私はいずれこの世界から追い出されてしまう…
隠しても無駄だったんだ…どんなに否定してもいずれ全部明かされて私はやっと出会った自分の居場所から追い出される運命…あの家のことが存在する限り私はそこから逃げられないんだ…
「ヤダ…」
別になりたくてなったわけでもないのに…別に知りたくて知ったことでもないのに…どうしても私がこの学校から離れなければならないの…?どうしても先輩達と、皆と別れなければならないの…?
私はただ毎日が楽しくて笑えるようなそんな学校生活が送りたかっただけなのにどうして…
「あの子なら大丈夫です。」
その時でした。
絶望して既に泣いているところだった私の脳内に響き渡る女の子の声。それは塞がれていた私の目を開いてどす黒い沼に沈んでいた私の手を強く引っ張って現実に引き上げてくれました。
「あの子は誰より優しくて強い人です。皆さんが思っているそんな人でなしの連中とは一緒にしないでください。」
「ゆりちゃん…」
皆の視線が集まったそこにはなんだかすごく不愉快な顔で皆のことを睨みつけているゆりちゃん立っていました。
あまりにも怒っているような怖い顔。そんなゆりちゃんに会場は一瞬水でも差されたような思い空気に沈んでしまいました。
「あの子は皆さんよりずっと温かくて優しい胸を持っています。いつも他人のことばかりで到底「大家」の人間には見えないほど正直で優しい子。あの子はくだらないプライドなんかでこんな茶番をやっている皆さんよりずっと高い理想を持っているんです。」
震えている手…ゆりちゃん、私のためにあんなに怒ってくれてるんだ…
「私がついていますから何の問題もありません。この「緑山」家の次期当主である私が保証します。あの子については既に「人獣」「12家紋」の当主の皆様も認めました。」
「12家紋」…もしかしてゆりちゃん、私のために実家に行ってその当主さん達を説得したんじゃ…
「だからこれ以上あの子についてこの場から話すことはありません。もしそれでも納得いかないと思っている方は前に出てください。私が直々に力で教えて差し上げますから。私、こう見えても人を殴るの、結構好きです。特に皆さんみたいに己の地位だけを当てにしているボンボン育ちの人を力でボコボコにするのは胸が晴れ渡るほど気持ちいいです。だからよろしければ前に出ていってください。全員まとめてケチョンケチョンにして差し上げますから。」
なんかすごいことを言っている!?だ…ダメだよ、ゆりちゃん…!暴力は絶対ダメだから…!
でもそのゆりちゃんの物騒な一言のおかげなのか、それとも強者だからこそ感じられるゆりちゃんの気迫に押されたのかそれ以上私のことについては何も言いませんでした。
ただ喉の中に張り付いた重い唾をやっとの思いで飲み込みながら状況を窺っているだけでした。
「まあ、「緑山」家のお嬢様がそうおっしゃるのならもう文句はないわ。」
「そうですね。せめてあなたがついているのなら安心でしょう。」
そして幸いこの辺で引き下がってくれることにしたような速水さんと青葉さん。二人共別にゆりちゃんに怖気づいたわけではなさそうですがさすがにゆりちゃんから家の名誉まで掛けて私のことを弁護してくれたのか効いたようです。良かった…
「まあまあ☆せっかく集まったことだし仲良く行こうよ☆」
っと大きなお団子の髪を弾けて会議を進めようとする進行役のルルさん。
こんなに大事になったのに平然とした顔ですね、ルルさん…さすが3年生…見た目はあんなにちっちゃくて可愛いのに中身はすっかり大人…
でもルルさん、なんだかすごく楽しそうに見えるのは私の気のせいでしょうか…
「いや、私達はこの辺で下がらせてもらうわ。」
っと急に席から立つ神界側の速水さん。興ざめの顔でなんだかすごく気に入らないって顔で今度の会議に不満感を表す速水さんは
「あいにくこっちは多忙でね。これ以上こんなくだらない会議なんかにこっちの時間を割くわけにはいかないわ。ゆうなの処分は後で生徒会から決めて伝えてちょうだい。」
っと周りの人達を連れて会場から離れようとしました。
「今日は珍しく気が合いますね。全く同感です。こちらも今少し立て込んでいてあまり空いている時間がありません。」
そんな速水さんを見て同じく席から離れる青葉さん。青葉さんだって顔に何らかの不満がいっぱい溜まっているようなそういう顔です…
皆に夢を与えてくれたあの「伝説の歌姫」の青葉さん、あんな顔…私はあまり見たくないかも…
「あら。以外に通じるところでもあるのかしら、私達。」
「奇遇ですね。」
っとすごい顔でお互いのことを睨みつけている速水さんと青葉さん…!お二人の視線がぶつかるところからスパークでもパチパチと弾けているような気がしてなんだかすごく不安な気持ち…!
「でも一緒にするのはご遠慮したいです。神界の人達と同じ人種に思われるなんて、そういうのまっぴらごめんですから。」
「同感よ。そんなの考えただけで反吐が出るわ。」
す…すごい神経戦…!速水さんも、青葉さんもお互いのことを完全に敵と思っていて…!
「それじゃお先に。」
「御機嫌よう。」
でもそれ以上交わす言葉はなかったと言わんばかりにお互いのことから背を向けてきれいに別れて会議場から退場してしまうお二人を先頭にした両側の勢力。
一気に引き下がる涙のように会場から出てしまう大勢の人達。同じ学校の生徒なのにまるで敵でも見ているような殺伐な雰囲気を出していた彼女達はやがて一人残らず全員この広い会議場から離れてしまいました。
そして残された私達は空っぽになった会議場を見ながら速水さんと青葉さんが主役になってこの会議場からお披露目したこの学校の痛い真実の一面について数多の考えを抱くことになりました。




