第34話
いつもありがとうございます!
「お待たせしました、みもりちゃん。」
「お疲れ様、ゆりちゃん。」
会議が終わって私とかな先輩が待っていたラウンジで少し休憩を取ることにしたゆりちゃん。珍しくたびれたような顔…いつもはあんなに落ち着いていて元気だったのに…
でもさすがにあんな状況じゃ疲れるのも当然かも…
「まあ、それもあるんですがさすがの私としても上級生に対してあんな態度で楯突くのは精神的な疲労感を感じてしまいますから。しかも相手があの速水さんと青葉さんじゃなおさら。」
今も震えている胸をなんとか落ち着けて先のことを思い出すゆりちゃん。そんなゆりちゃんを見て
「でもあれは私も本当に焦ったよ。魔界側はともかくあの速水さん、めっちゃ怖い人らしいから。」
今になってやっと先の不安な気持ちを解き明かすかな先輩でした。
「十分分かっています。あれは紛れもない兵士の目。おそらくあの団長さん並の化け物でしょう。」
今でもはっきり覚えている鋭くて高圧的な眼光。ゆりちゃんの言う通り私もどことなくそう感じたんです。
結局隣の団長さんは面目が立たないって顔でずっと黙っていましたがまさか「勇者」と呼ばれるあの団長さんほどの人だったとは…
私だったら言い返すのはおろか真っ向から目を見ただけで漏らしちゃったよ、絶対…
「そうなったらこのゆりが一滴も残らず全部飲みきって…じゃなく処理してあげますから心配なさらず♥」
どっちも嫌よ!!っていうかまずは絶対漏らさないし!!
っと平然といつもと同じく変なことでボケているゆりちゃんでしたが私はずっとゆりちゃんに感謝していました。
結局ゆりちゃんは私のためにあんな怖くてすごい人達と立ち向かってくれました。私の日常を守るために頑張ってくれたゆりちゃん…
私はまずその優しい気持ちにちゃんと答えてあげたかったのです。
「ありがとう、ゆりちゃん。私のために怒ってくれて。」
あんなに怒っているゆりちゃんを見ていた時は私だって何か起きてしまうのではないかと少し焦った気持ちはありましたがそれでも私は嬉しかったです。
私のことを大丈夫って優しくていい子って言ってくれたから。ゆりちゃんが私のことをそう思ってくれて言い切れないくらい私は嬉しいって気持ちに満ちていました。
今の私にできるのは精々心を込めて「ありがとう」って言うことだけかも知れないけどその気持ちだけははっきりと伝えたかったです。
「お礼には及びません。みもりちゃんのことを悪く言うやつは全部私がふっとばしてあげますから。だからみもりちゃんには今まで通りの楽しい学校生活を送って欲しいです。」
まるで二度と私との時間を奪われたくないって言っているようなゆりちゃん。その心遣いがあまりにも優しくてありがたくて…
でもふとこう思ってしまうのです。私、またゆりちゃんに助けてもらっちゃったんだ…って。
私もゆりちゃんのためにそう言える強い人にならなきゃ…
「ごめんね、モリモリ。私も皆に何か言ってあげたら良かったのに…」
「いえいえ。気にしないでください、先輩。」
先輩として何か責任を感じているような先輩。でもあそこで先輩まで出ちゃったら副会長の赤城さんが困っちゃうはずですし。ってもうゆりちゃんのことで随分困っているかも…
でも困ったのは私も同じでしたから。会長さん、そんなに大した会議ではないから緊張する必要はないって言ってたのにめっちゃくちゃな会議だったから私、もうヘトヘトですよ…
「会長からそうおっしゃったということですか。おかしいですね。普段なら絶対そんなことはなさらないはずなのに…」
何か気にかかることでもあるようなゆりちゃん。どういう意味なの?
「いいえ…会議のああいう空気、私達にも手に余りますから。確かに会長って分かりにくい方で少し変わったところもありますが決してこんなことにみもりちゃんみたいな一般生徒を巻き込んだりすることはなさらないのになんであんな嘘を…」
「じゃあ何で私をあの会議に連れて行ったんだ…?」
ひどい会議。私は初めて見たその会議のことをそう思うようになりました。
皆が皆といがみ合っている今の学校。お互いのことを貶し、罵り合っているその会議はとても悲しくて辛かいものでした。
二度と見たくない最悪の状況。おまけで私はあの家のことまで咎められて…
なのに会長さんは何でそんな嘘までついて私をあの会議場に連れて行ったんでしょうか…
「ん…私の推測だけど多分会長は全部見通していたと思う。ユリユリがモリモリのために怒ることも含めてね。」
急にこれは全部会長さんから仕込んでいた計画なのだって感じて自分の意見を出すかな先輩。ゆりちゃんさえ読み切っていない会長さんの意図が先輩には分かるということでしょうか。
「いやいや。そんな大したことではないけど一応会長はあの「プラチナ皇室」のお姫様だから。エルフって神界側でも最も世界政府を支持する種族だしきっと今の状況を打開するために色々考えていると思う。多分だけど私は会長はモリモリのことをその打開策の一つとして見ているのではないかと思う。」
「わ…私をですか…!?」
いきなりすごいことを言っちゃうかな先輩!何で私を…!?私、会長さんに期待されるほどのすごい人ってわけでもないのに…!?
「みもりちゃんは可愛いじゃないですか♥あとなんかエッチな子だし♥」
そんな理由で!?っていうか私、エッチなの!?
「あははっ!だから推測って言ったじゃん。でも何かモリモリのことを特別扱いしているのは間違いないと思う。ミラミラのことをおいても会長がモリモリのことを気に入っているのは確かだよ。」
「あ、それはそうかも知れませんね。会長、よくみもりちゃんのことをお聞きしたし。」
会長が私のことをゆりちゃんに!?危ないですよ、会長さん!だって…!
「私はてっきりみもりちゃんのことを犯したいと思っているのかなっと思っちゃんですよ。危うく首でも軽く絞めちゃうところでした。結局やらなかったんですが。」
そんなの聞いたら絶対こんな風に思っちゃいますから…!っていうかそんなのダメだよ、ゆりちゃん!!
でもこれでも会長さんに対する疑問がますます増えてきましたね。会長さんの私への興味はともかくゆりちゃんがあの家のことで私のために怒ってくれることまで全部見抜いて…会長さんは一体私に何を見せたかったのか、何を見たかったのか…知れば知るほど謎だらけの人…
「あ、でも会長ってミラミラのことなら結構分かりやすいんだよね?」
「あ、確かに。」
ってえええ!?
な…何で先輩とゆりちゃんが会長さんの秘密を知っているんですか!?もしかして私、知らないうちに話しちゃったとか!?
「いやいや。絶対そんなことないよ。」
「そうですよ、みもりちゃん。みもりちゃんは何も言ってませんでしたから。」
じゃ…じゃあ何で!?
って聞く私の顔をなんだか珍しいって感じて見つめる二人。私、なんか変なことでも言った!?
「そうか。そういえばモリモリは会長がミラミラに直接会うところを見たことないのか。」
直接…?そ…そう言われてみれば確かに二人にいる時はあまり見なかったかも…
「会長、そういう時は結構素直になります。なんか目とか完全に恋に落ちた乙女っぽくなって。」
「そうだよね。平然と振る舞っているのが逆に怪しく見えるんだもんね。まあ、本人にはあまり自覚ないみたいだけど。」
「そ…そうだったんですね…良かった…」
私はてっきり私が無意識的に流してしまったと思っちゃいましたから…やっぱりこういうプライベート的なのは守ってあげなきゃって思うので…
それにもし私がばらしてしまったというのなら…
「ダメじゃない、みもりちゃん。人の秘密を勝手に言い回しちゃ。罰として私もみもりちゃんの恥ずかしい秘密全部暴いてやるぞ?」
っとなりかねないし…
「なんですか?みもりちゃんの恥ずかしい秘密って。」
「あ、それはね?実は私、子供の時…」
って何自然に聞きやがるんだ、キサマ!!
「モリモリって以外に口で全部出ちゃうタイプなんだな。そうじゃないかと思ってはいたけど。」
「そこが可愛いじゃないですか♥アホ可愛い♥」
えええ!?私、そうなの!?アホだったの!?
「あら?皆さん、ここに集まって何しているんですか。」
「先輩?」
***
「「手芸部」ですか?」
「はい。」
今日の会議のことをすっかり忘れていた先輩は今までずっと「手芸部」のところにいたそうです。ライブの衣装で色々相談があったようで…
「でもダメじゃん、ミラミラ。モリモリがいなかったら即活動禁止だったぞ?いくら会議のことが苦手でもすっぽかしたりしちゃ。」
「ご…ごめんなさい…」
先輩、めっちゃ怒られている…
「でも本当に忘れただけで決してすっぽかしたわけでは…」
「ミラミラ、一応部長だからもっとしっかりしなきゃダメじゃん。せっかく後輩達も入ってくれたわけだし。」
「ごめんなさい…」
珍しくビシッと注意するかな先輩。見た目と違ってこういうのはきちんとするタイプかも。
「ごめんなさい、みもりちゃん。迷惑かけちゃいましたね…」
「いえいえ。そんなことではないかなと思ってたし気にしないでください。」
本当に申し訳ないですって謝っている先輩ですがやっぱり最上級生の先輩に謝られるのはちょっと身の置き所がないっていうか落ち着かないっていうか…
でも私はこれで少しは同好会のことに役に立てたと思ってちょっとだけ嬉しいです。歌もダンスもまだまだな私ができるのことなんて精々こういうことしかないと思いますから。私なんかで良ければどんどん頼ってもらいたいくらいです。
「もうーいい子すぎるよ、モリモリ。」
「えへへ…」
っとかな先輩は私にあまり甘やかしちゃダメって言いましたがこう見えても先輩は同好会のことのために一人で色々頑張っていますから。ここは大目に見てあげましょうよ。
「それで結局何のご用でしたか。会長も心配なさっていましたから。重要な会議まで抜けてどこいたのかなっと。」
「そ…そうでしたか…セシリアちゃんにも後でちゃんとお詫びしなきゃ…」
私の目にはただ「みらいちゃん、会いたい…」って言っているように見えましたけどね…
「手芸部も同好会みたいに部員が少なくて似たような立場の私達を日頃よくお手伝いしてくれるのですけど今回もライブの衣装でお手伝い頂いたんです。今日は頼んだ衣装の中間確認のために行ったんです。」
「静かな人だから割と知らされていないけどそっちの部長だって結構すごい人でね。「灰島菫」という名前、聞いたことある?」
部室に行くためにバスを待っている間、少し手芸部について話をしようとする先輩達。
お名前を聞いても私にはあまり分からないかも…でもあの「灰島」ってあれですよね?
確か船や車から包丁などの生活道具まで作る魔界の大企業。実家の車もあの「灰島」製ですし子供の頃に遊んだりしたおもちゃもそっちのものでしたから。
「詳しいね、モリモリ。そしてあの「灰島」の跡取り娘がその「スミスミ」ってこと。」
もう私達の生活から離すこともできないくらい生活の一部として密接に溶け込んだ大企業「灰島」。大きな船や建設機械から始め玩具、衣類、住宅などの様々な分野まで拡大されている「灰島」は魔界の「鬼」によって作られた企業です。
優れた「鍛冶屋」の末裔である赤い目の「赤鬼」は自分達の得意分野を最大限に生かして今の「灰島」を築き上げました。
「人食い」と呼ばれながら同じ魔界の種族からも疎まれてきた鬼はもはや私達の生活において最も緊密な種族になりましたがその怖そうな外見のせいで今でも少し人から距離を取られています。
でも心温かくて優しい人達というのは間違いありません。鬼は「神樹様」によって3つの世界が結ばれる時、最も世界の統一を主張した種族です。
それが単にお金のためと言っている人達も少なくないですが私はそう思いません。「灰島」は最も共存の方法を取ってきた穏やかな企業ですから。
その「灰島」の跡取り娘さんと言ったらきっと優しくて素敵な人でしょうね?
何より先輩がこんなに嬉しそうに話しているんですもの。
「はい。すみれちゃん、ちょっと無口でむっつりしても根はとても優しくていい子ですから。それに可愛いお洋服を作るのが得意なんですよ?」
「へえー」
なんだか初めて会長さんのことを紹介する時みたいに燥いでいる先輩。そのすみれさんのことが本当に好きなようです。
「すみれちゃん、今回のみもりちゃんとゆりちゃんの衣装作りの件も喜んで引き受けてくれました。人も少なくてきっと大変だったはずなのに。あ!そうだ!良かったら皆で見に行きませんか!?仕上がるのはもうちょっと先ですが形はできてますから試着くらいはできると思いますよ?」
「あ!いいじゃん、それ!行こうよ、皆!部室からも近いしいい刺激になるかも!」
かな先輩、いつの間にか元の先輩に戻っている…
練習の前に少し時間を割いて手芸部の部室に寄っていくことを提案する先輩達。まあ、私は別にいいんですが…
「ゆりちゃんはどう?疲れてない?」
「私は全然平気です。みもりちゃんの匂いを…すー…嗅いでいる…うちに…はー…もうこんなに…すー…元気が出てきて…♥はー…」
いつもと同じだな、ゆりちゃん…っていつの間にかくっついて匂い嗅いでいるの!?
ってあれ…?今私とゆりちゃんの衣装作りって言ってなかったっけ…?




