モテモテ98
ビーチボールを終えた一向は休憩する為、ジェイムズの待つブルーシートまで戻る事にした。
先頭で一人黙々と歩く飾霧、その後ろに涼太、黒笠、日野、白石が楽しそうに会話をしている。
耳を傾けなくとも話し声は聞き取れた。
白石ちゃんの語尾にやはりシュの文字はなかった。どうやら作戦は成功していたらしい。
これで少しは頑張った甲斐がある。
まぁ、当人がどう思ってるかは別なのだが……
ビーチボールを抱え、たらたらとみんなの後ろを歩いていると、白石が歩く速度を落とし真横へとやってきた。
「……茂木君」
「どうした?」
小さめの声だったが、聞き取れたので軽めに返事をした。
だが、一向に何も返ってこないので顔を確認する。
すると、白石は照れ臭そうに呟いた。
「……ありがとう」
「お、おう」
急に感謝されたので驚いたが、直ぐにあがり症の件だと察しがついた。
即ち白石ちゃんも作戦が成功したと思っているという俺にとっては万々歳の結果なわけだ。
いくらなんでも前向きに捉えてしまう。
白石の次の言動に集中していると、彼女は言いづらそうに口を開く。
「ーーだから約束通り仲直りしよう……ねっ?」
「あ、ああ。そうだな」
欲していた言葉がド直球できたものだから動揺が隠しきれなかった。
微妙な反応をしてしまったせいか白石はほっぺたを膨らませた。
「そのイマイチな反応はなんなのかな? 別に仲直りしなくてもいいんだからね」
「いや、待ってくれよ。めっちゃしたかったよ。じゃなきゃ手伝わないだろ?」
「ーーなら、いいけど」
必死の形相に白石は引き気味だった。
別に引かれたって構わない。仲直りできただけでこちらとしては大収穫だ。
俺は心からこの言葉を口にした。
「ありがとう。これからもよろしく頼む」
「うん。こちらこそよろしくね」
いつものように柔らかく微笑む彼女を見て、本当に仲直りができたのだと安堵した。
肩の荷が降りた事で体がとても軽い。今にも飛び立ちそうな勢いだ。
全てから解き放たれたせいか、今とってもトイレに行きたい。
突如舞い降りた尿意に耐えきれず、白石に向かってビーチボールを突き出していた。
「白石ちゃん。ごめん。これ頼んだ」
「えっ? う、うん。別にいいけど」
白石は状況が理解できていないもののビーチボールを受け取ってくれたので、心置きなくトイレに向かって走り出した。




