モテモテ96
食事休憩を済ませた我々は腹ごなしも兼ねてビーチボールをする事になり、浅いプールへとやってきた。
ビーチボールで涼太に白石ちゃんを抱きつけるのは難しいと思ったが、とある事情によりテンションが上がっていた。
ビーチボールを提案した日野は上機嫌でボールを弄んでいる。
そんな姿のある一部だけを凝視する男がいた。
そう。俺だ!
先程ある事情とか意味深な事を言ったと思うが、そこまで深い理由ではない。
ただ、一言言いたい。
ーーおっぱいが揺れるんだよっ!
そんな分かりきっている事を言ってしまったが、見てみろ。
あの美少女達を……日野を筆頭に粒揃いだぞ。
加藤に聞いた話だが……
加藤とは学校一の物知りである。いわゆる情報屋。
本名、加藤白濱。黒髪でロン毛。眼鏡の位置を直した時に眼鏡が輝きニヤリと微笑むのが不気味。
見た目はこんな感じだが、俺の数少ない信頼を置く人物の一人。
話は戻るが、あそこでクールな表情の飾霧Cカップ。日野の近くでボールを投げられあたふたしているのが黒笠Eカップ。げらげらと楽しそうに笑っている日野なんてGカップなんだぞ?
なんだよGって、もう訳がわからないよ。
あれがジャンプした時にどうなるかなんて、もう想像しただけで健全な男子高校生なら前屈み必至だろう。
白石ちゃんの事を言い忘れた気がするけど、彼女はそっとしておいて下さい。
揺れなくたってな。そこに突起物があればおっぱいなんだよ!
妄想をこれでもかと膨らましていると、白石はひょこひょこと近付き小さく声を掛けてくる。
「次はどうするの?」
「任せておけ。白石ちゃんも負けてないよ」
「なんの話?」
「ーーこっちの話。それで次の作戦なんだけど、俺が涼太と白石ちゃんの間にボールを落とすからボールを取ると見せかけ抱きついてもらえるか?」
「わ、私から行くの? それにわざとらしすぎて気付かれないかな?」
「大丈夫だ。問題ない」
「わ、わかったよ。頑張ってみる」
作戦が決まったところでそれとなく白石ちゃんを涼太の隣へ誘う。
昼飯の時と同じように俺から時計回りで涼太、白石、日野、黒笠、飾霧。円を描くように広がる。
「そんじゃ始めようぜ」
俺の声に反応したみんなが各々声を上げた。
「緊張します」
「いつでも構わないわ」
「やりまシュ」
「よーし。行くよ〜」
みんなよりもだいぶ後ろに下がっていた日野は、前方にボールを高く上げ、走り込みながら鋭くジャンプ。
綺麗に胸を張ったフォームで落ちてくるボールを凄まじい勢いで叩く。
ボールは涼太に真っ直ぐと向かっていく、透かさずアンダーハンドでボールを上げる。
着地と共に水しぶきが舞い、小麦色のわがままな胸はこれでもかと揺れ動く。
そして、空中に舞い上がったボールは俺の頭にぶつかり、ぽとんと静かに水面へと落ちた。
俺が少しも反応できなかった理由は、日野の胸に意識を持っていかれていたからだ。
水着から今にも溢れ落ちそうな胸が揺れる瞬間を一部始終見ていたからわかったけど、ありゃ男は必然的に中腰になるわ。
俺は素早くボールを拾う為に中腰になる。
「直。何ぼけっとしてるんだよ。それにしても日野さん。凄いサーブだったよ」
中腰ではない涼太は爽やかな笑顔を見せる。
「ほんと、全然見えなかった」
「私も見えませんでした」
白石も開いた口が塞がらないと言った表情で、黒笠は何が起きたのかわからないと瞳を丸くしていた。
「へへぇ。ありがと」
日野はみんなに褒められ、後頭部を掻きつつハニカム。
そんな可愛らしい姿より胸に見惚れていると、突如蹴り倒される。
「ーー痛って」
四つん這いになった状態のまま振り向くと、飾霧が汚物を見るような眼で見下ろしていた。
「それ程までに異性のお乳に興味があるのかしら?」
「おい。声がデケぇよ! バレたらどうするんだよ!」
日野達の方を一瞥するが、どうやらバレていないようだ。
「既にバレているわよ。手の施しようがないほどに駄々漏れだもの。こんな変質者に舐め回すように見られたら日野さんが気の毒だわ」
「そ、そんなに見てねぇ……はず」
全力で見ていたから言い訳するものの冷や汗が止まらない。
「見ていたわよ。よかったわね。私が警察官ではなくて」
「お、おう。……少しは反省するよ」
「少ししか反省しないのね。日野ーー」
振り向き全力でバラそうとしているので、焦った俺は飾霧の足首を掴んだ。
「わかった。凄く反省するから黙ってて下さい」
振り返った飾霧はとても楽しそうに、
「仕方ないわね。貴方も年頃の男の子だものね。少しは大目にみてあげるわ」
「感謝する」
犬のように頭を垂れつつもしっかりと太ももを捉えていた。
それに、飾霧の滑らかでいてスベスベの肌が手に吸い寄せられる。
足首を撫で回すように触っていると、冷たい声が降りかかる。
「そう言いながらも、既に見ているのだから救いようがないわね。それと、気持ち悪いから離してもらえるかしら?」
「ち、違うんだ。俺の意思とは無関係に吸い寄せられちまうんだよ。それもこれもお前が可愛いのが悪いんだろうが!」
「……そう」
しおらしい仕草に調子を崩され目を逸らすと、涼太が手を上げているのが見えた。
「おーい。続きしないのかー」
俺はスッと立ち上がりボール片手に走り出した。
「やるよ。そんじゃ再開する前に一つ。日野。あの強烈なサーブは無しな。サーブはアンダーのみでやろうぜ」
「うん。わかった。封印封印っと」
これで前屈みサーブはこない。やっと作戦に集中出来る。
新たな決意を胸に抱いていると、飾霧がゆっくりと自分の位置へと戻った。




