モテモテ92
二人でブルーシートの場所まで戻ると、そこには涼太、日野、黒笠だけでなく。飾霧までもが座っていた。
ここまでなら別に驚く必要もないんだけど、そこにもう一人ブーメラン姿のボディビルダーのような体格を持つ、スキンヘッドにグラサンの強面がいたもんだから動揺せずにはいられなかった。
目を擦って仁王立ちする男を再度確認するが、錯覚や幻影でもない。
何故なら存在感が半端ないからである。
白石ちゃんは俺の後ろに隠れているし、その気持ちは分からなくもないけれど、俺だって何処かに隠れたい。
今にも逃げ出しそうな俺を飾霧の視線が捉えた。
「その馬鹿面を晒したまま、いつまでカカシのように立ちつくしているつもりなのかしら?」
「ーー言われなくても今から動くところだったからね。それより。そこの異様に存在感があるお方はどちら様?」
「何を言っているのかしら? 貴方も会った事があるわよね」
「そう言われてみると、何処かで会ったような……」
思い出そうと右上を見ると、飾霧は間髪入れずにため息を吐いた。
「……記憶力が乏しいのね。仕方ないから教えてあげるわ。私の使用人で基本は運転手をしてもらっている。ジェイムズよ」
「ーーあ、あの人か?」
確か、一度リムジンに乗せてもらった時にドアを開けてくれた人があんな顔をしていたような……スーツ姿だったから余りのギャップに顔が瞬時に出てくる訳もなく、というかただの変態にしか見えない。
ジェイムズを一瞥した後に続ける。
「それで、そのジェイムズさんがなんでここに?」
「愚問ね。そんなの決まっているでしょ。荷物番をさせる為よ」
「それな」
アホ面で指を差した。
自分の荷物番を回避する為に使用人を呼ぶとは、到底思い付かない非道。
氷の魔王ここに極まれり。
でも、これでやっとみんなで遊ぶ事が出来ると喜びたい所ではあるが、今の俺には大事な使命がある。
「そのとぼけた顔を仕舞いなさい」
「……ガチャ。仕舞いました」
「仕舞い切れていないのは、そういうことなのかしらね」
「どういう事だ!」
飾霧を睨みつけると、ジェイムズの鋭い視線が飛んできたので、咄嗟に目を逸らした。
萎縮している俺に涼太が手を差し伸べる。
「そんな訳だから直。ここからはみんなで遊べるな」
「ああ。確かにそうだな」
日野がひまわりのように微笑みながら両親指を立てた。
「やっと、みんなで来た意味が出てきたねぇ」
「ですね」
「……うん」
黒笠と白石がこくりと頷く。
涼太はみんなに対して爽やかな声を奏でる。
「それじゃ。早速みんなでプールにーー」
「もう遊ぶ場所は決めてある。俺について来い」
涼太の言葉に割り込み、俺がリーダーだと言わんばかりに仕切る。
作戦の都合上もう遊ぶ場所は決めてあるので、誘導する他なかった。
不思議そうに小首を傾げる日野と黒笠。何故か爽やかに微笑む涼太。白石ちゃんはもぢもぢしている。
また毒の一つや二つは吐くと思われていた飾霧は、何も言わずに不気味な笑みを溢していた。
そしてジェイムズ。おめぇはどうして笑顔なんだ。
剥き出しになった白い歯が黒い肌と相まって一層輝いて見えるじゃねぇか。
なぁ、ジェイムズ!




