モテモテ81
「飾霧。一ついいか?」
「何かしら?」
「何故に俺達は今ここに居るんだろうな」
「一々馬鹿な事を聞かないでもらえるかしら? 昨日水着を買いに行くと言っておいたわよね?」
「ああ。だからか。ーーって思ってたのとちげええええええええっ!」
今いる現場が理解できなくて、叫びながら昨日の事を振り返っていた。
金曜日の離れにて、今日も今日とて二人は定位置に座っていた。
飾霧の作戦通り三人をプールに誘う事が成功し、再来週にプールを控えた俺は多少浮かれていた。
妄想に胸膨らませ、腑抜けた顔をしている俺に冷たい声が突き刺さる。
「その緩みきった表情をどうにかしてもらえるかしら。まるでヘドロのようだから」
「明らかに最後の方いらねぇだろ!」
怒鳴ったのに飾霧は満足そうに口を開く。
「やっと、正気に戻ったのね」
「常に正気だったわ」
「あら、そう。明日買い物に行くから付き合いなさい」
「おう。別にいいけど。ーーってどうしてそうなる?」
余りに自然と誘うものだから、うっかり受け入れるところだった。
俺は多少動揺しながらも返事を待つと、飾霧はフラットな表情で小首を傾げた。
「行きたくないのかしら?」
「そんな事は言ってないが……」
煽られると急に行きたくなるというか。
飾霧と出掛けるのは久しぶりだからワクワクしなくもないというか。
美少女と二人きりで買い物楽しそうだなというか。
たまにはラッキースケベの一つや二つ起きるんじゃないのか? というか起きてくれよ!
脳内で願望が渦巻く中、飾霧の言葉が聞こえる。
「なら行くのね」
「……ああ。構わないけど。それで、何を買いに行くんだ?」
「水着に決まってるでしょ?」
「別に決まってないだろ。そもそもなんで水着を買いに行くんだ?」
「私も行くからよ」
「ーーお前も来るのか」
「ええ」
まさか飾霧がこんなめんどくさい事に関わるとは思わなかったが、今はそれどころではない。
俺が聞きたいのはそんな些細な事じゃない。
「それはいいとして、俺と水着を買いに行くって言ったよな?」
「そうね」
女性用の水着をこの俺様と買いに行くだと…………そういうことでいいんだよな?
ーー荒れるぜぇ?
想像を超える展開に脳内整理が追いつかない。
新世界に羽ばたいた俺を横目に、飾霧は冷ややかな声を響かせる。
「一緒にプールへ行く相手の水着が、中学校の授業で着用していた名前入りだと思うだけで悪寒がするわ」
「勝手な妄想するんじゃねぇ。普通の海パンぐらい持ってるわ。赤一色の派手なやつ」
言い返したが瞬時に「却下」と睨まれた。その後彼女は溜息混じりに続けた。
「ーー明日の待ち合わせ場所は後で連絡するからそれまで死ぬ気で起きていなさいよ」
「どれだけ真夜中に送ってくるつもりだよ」
徹夜の覚悟をしていると、結局夜の九時頃に連絡が届いた。




