モテモテ80
二日連続、教室に着いて直ぐに涼太の元へと駆け寄った。
飾霧に言われた作戦を実行する為に、作戦は単純かつ明白。
俺の大親友に全て丸投げるという他力本願バンザイな作戦なのだ。
「涼太。ついに出番がやって来たみたいだぜ」
「いっつも唐突だよな」
「いいからよく聞け」
「ああ、聞けばいいんだろ」
俺は深呼吸をした後に「実は」と、溜めてから続けた。
「ーーお前とプールに行きたいんだ」
「そんな事か。毎年行ってるのに改まってどうしたんだよ。別に行くのは構わないけど」
涼太の腑抜けた様子に俺は机を叩いた。
「馬鹿めっ。今年は一味違うプールにしたいんだよ。わかるよな?」
「いや。全くわからないんだけど?」
察しが悪い親友を睨みつけながら、
「その爽やかな目はなんの為に付いてるんだ? なぁなぁなぁ、なんの為だ!」
顔がつきそうな勢いで煽ると、涼太は何事もなかったかのように両手で俺を突き放した。
「いいから俺でもわかるように説明してくれ」
「ーー焦るな。今言うから」
爽やかさの中に圧を感じたので、少々怯んだものの冷静に続けた。
「えっと、今回は女の子達も呼ぼうと思うんだ」
「直がそうしたいなら俺は構わないけど」
「反応が薄い事に関して今日は見逃してやるが、次はないと思えよ」
「それで、女の子は直が呼ぶのか?」
的確に入れたはずのツッコミが、華麗にスルーされ取り乱さずにはいられなかった。
「黙れ小僧!」
「急にモロの真似するなよ」
涼太のツッコミが嬉しくて俺は震えながら、
「お前なら言ってくれると信じていた」
と噛み締める。
彼はやれやれと呆れ気味で言う。
「ーー話し戻していいか?」
「ああ、悪かったな。ーー確かさっき、俺が女の子を呼ぶのか? とか聞いていたが。近からず遠からずって所だ」
「つまり直も誘うから俺も誘えと」
「話が早くて助かる。でもそう単純な話でもないんだ」
「どういうこと?」
「まぁ、単に俺は一人誘うからお前は三人誘えって話しなんだが」
「一応聞くけど俺の方が多いのはなぜ?」
分かっているくせに改まって聞くものだから、澄まし顔で答えた。
「お前がイケメンだからだ」
涼太は「やっぱり……」と、溜息をついた後に、
「ーーそんな事だろうと思った。後、直の力になってやりたいのは山々なんだけど、俺に女友達が居ないのは分かってるよな?」
「そこは任せておけ。お前にはこの三人を誘ってもらう。見覚えあるだろ?」
予めスマホのメモ帳に打っておいた三人のフルネームを見せつけた。
涼太はそれをしっかりと確認した後に口を開く。
「確かに全員見覚えはある。でも、どうしてこの三人なんだ?」
「お前にも話しただろう。俺はこの三人と仲直りがしてぇ」
包み隠しようがない本心の声が重く響いた。
涼太はわかっていたかのように爽やかに微笑む。
「まぁ、そうだろうな」
「悪りぃか?」
「いや。直の裏表のない性格は長所だと思ってる。だから当然、協力はさせてもらうつもりだ」
仏のような親友を見ていると自然と目頭が熱くなった。
「ーーそう言ってくれると思ったぜ。後は任せていいんだな」
「任せてくれ」
そう言った涼太が眩しくて、負の塊そのものである俺は浄化されんばかりの勢いだった。
その後は散々で、二限目の休み時間にすれ違った白石ちゃんには無視され、四限目の移動教室で出くわした日野には白い目で見られた。
そして必然とでもいうかのように、黒笠とも出会ってしまった。
昼休み、涼太と一緒に居た事もありお辞儀はされたものの、俺を見る彼女の瞳は凍てつくような冷たさだった。
精神的苦痛で心が死滅しそうになっていたその日の夜。涼太から一通のメッセージが届いた。
「問題なく。みんな誘えたから安心しろ」
俺は親指を立てたニワトリのスタンプを連打した。




