モテモテ71
何事もなく迎えた金曜日の夜。
時の流れとは恐ろしいものだと、身を持って体感した俺は自室で静かに胡座をかいていた。
煩悩を消し去り、モテる男について考えていた。
これまで飾霧の言いつけを守って復習をしてきた。
だが、何も進展はなかった。
まさか、今までやってきた事に意味はなかったのではないかと勘繰ってしまいそうになる。
でも、実際のところは意味がある。
何故なら俺のスマホに女の子の連絡先が四件も入っているからだ。
現状を再確認すると笑みが溢れる。
そして、突然閃きの神様が舞い降りてきた俺は目を見開く。
「ーーモテる男とは善であり、悪である」
名言に反応したのかスマホが振動する。
徐に画面を見ると白石からメッセージが届いていた。
以前よりは幾分か動揺しなくなった俺は、震えた手つきで内容を確認する。
『こんばんは。今何してるのかな?』
胡座をかいています。と送るわけにもいかないので、
『何もしてない』
と送った。
前は送るのに時間を掛けていたが愚かしいのでやめた。
すると、すぐさま返事が返ってきた。
『丁度よかった。頼み事があるんだけど、大丈夫?』
頼み事って嫌な予感しかしないけど、女の子の頼みだし……
『俺に出来る事なら構わないけど』
『本当! ありがとう。それじゃあ、明日とか空いてるかな?』
女の子からのお誘いに思わずガッツポーズが出た。
当然返事はこうだ。
『いつでも空いてる!』
『よかった。それなら、十二時に駅前集合で大丈夫?』
『大丈夫』
『それじゃまた明日ね』
『また明日』
最後に白いもちもちしたキャラクターが『おやすみ』と寝ているスタンプが送られてきた。
それを見て、
「好きだっ!」
と一人叫んだ。
こうして、会話は恙無く終わりを迎えた。
にしても、久しぶりに女の子と二人きりで休日を過ごす喜び、最高だぜ。
スマホ片手に浮かれていると突然スマホが震えだした。
ーー白石ちゃん。言い忘れた事でもあったのかな?
画面を確認すると予想とは裏腹に日野からのメッセージだった。
立て続けに女の子からのメッセージに、動揺するものの。とりあえず内容を確認する事にした。
『こんばんワン』
の文字とともに犬のスタンプが送られてきた。
よくわからないけど吠えたくなった。
『どうかしたか?』
会話とは違って文章だと慌てずに済むからいいよな。
『ここだけの話。頼み事があるんだよね』
また頼み事か。
まぁ、誰かに頼られるってのは悪い気はしない。ましてや女の子の頼みなわけだし。
『別にいいけど』
『ありがとー。さすが茂木君だね』
『それはどうも』
『それでね。その悩み事なんだけど直接会って聞いてほしんだよね。だから明日とか暇してない?』
明日は白石ちゃんと約束があるんだよな。
でも確か、約束は昼からだし夕方なら大丈夫か。
『夕方ぐらいなら』
『わかった。なら四時に駅前でいい?』
『大丈夫』
『おっけー。じゃあまたね』
『おう』
最後に『おやすみ』と書いてある犬のスタンプが送られてきて、再度吠えたくなった。
一日で二人の女の子と予定を入れてしまった。これは人生初体験。
ーーなんとなくモテてきてね?
だらしなく頬を緩ませていると、再度スマホが震える。
今度は誰だと、画面を見ると黒笠からのメッセージだった。
まさかの三人目。流石におかしい。
まさか俺にもついにモテ期が!
興奮を抑えつつ内容を確認した。
『夜分遅くにすいません。今、お時間よろしいでしょうか』
流石は黒笠。堅苦しい事この上ない。
だけど、そこが彼女のいいところでもある。
『どうかしたか?』
『実は、先輩に頼みたい事があるんです』
またかよ! と思ったものの二人の頼み事は聞いた今。
一人だけ断るなんて真似、俺には死んでも出来ないんだけどな。
『別に構わないぞ』
『本当ですか。ありがとうございます。直接会ってお話ししたいのですが、明日はいかがお過ごしでしょうか?』
土曜日人気だな。日曜日どうした?
にしても流石に明日はきついか?
……でも日野と会うのは夕方だから夜ならなんとかなりそうだな。
『夜なら構わないぞ』
『わかりました。なら七時に駅で待ち合わせでいいですか?』
『それでいい』
『明日楽しみにしていますね。おやすみなさい』
と、てるてる坊主が寝てるスタンプも一緒に送られてきたので、俺もお気に入りのニワトリのスタンプを返した。
まさか、三人の女の子と予定を入れる日が来ようとは、夢にも思っていた。即ち夢が叶った。
全部まとめて明日にしたのは、一度やってみたかったからだ。
俺は欲張りさんなのだ!
にしても、三人とも会って相談したいってどんな悩みだろう。
きっと真剣な悩み事に違いない。
詳細は明日になれば自ずと分かるのだから今日は早めに寝るとするか。
休日に三人の美少女と会えるなんて堪らなく興奮する。
この高ぶる気持ちを抑えられない俺は、布団へと飛び込むのだった。




