モテモテ54
行動力。
俺の唯一の取り柄かもしれない。
早速、昨日の夜。白石ちゃんへメッセージを送り、昼休みに会う事になった。
もちろん会う場所は図書室。
涼太には悪いが飯を食い終わった後、先に教室に戻ってもらう事にした。
かくいう俺は急いで図書室に向かう。人は待っても待たせるな、だ。
競歩独特な軽快な足取りで図書室に辿り着き、ドアを開け中に入る。
すると、受付には約束通りと言うべきか、黒髪ボブの低身長。きめ細やかな白い肌と、当然の如く平な胸はロリ心を擽る。
そんな可愛らしい女の子が佇んでいた。
俺は躊躇もなしに軽く手を上げる。
「よっ。白石ちゃん」
白石の本を読んでいた手が止まり。こちらに視線を向け微笑む。
「あ、茂木君」
あっぶねぇ。
危うく惚れるところだったわ。
こいつの好きな人知らなかったら惚れてたわ!
冷静を取り戻す為に深呼吸してから口を開く。
「ーー悪いな。呼び出して」
「ううん」
「で、呼び出した理由がさ。別に大した事じゃないんだけど……白石ちゃんって悩み事とかないのか?」
「急にどうして?」
「いやな。もしあるなら手伝ってやろうかと」
そう君の為ではなく自分の為に手伝ってやろうかなってな。
「そうなの?」
「おう」
白石は「悩み事かぁ」と呟きつつ瞼を閉じた。暫くすると少し照れながら口を開く。
「ーー沢山あるけど、強いて言うなら恋の悩みかな」
うん。知ってた。だってもう表情が恋する少女そのものだもの……
「恋って言っても具体的にはどんな悩みなんだ?」
「ええっと……どうしても好きな人の前だとあがっちゃうんだよね」
聞くまでもなかったか。恋っていいよね。
「確かに凄かったもんな」
「だよね」
恥ずかしそうに火照った顔を両手で仰ぐ。一々仕草が可愛くて。
ーーちきしょう。
落ち着く為に咳払いを一つ。
「ーーわかった。俺がどうにかそのあがり症を治す方法を考えてみるよ」
「本当?」
「おう。男に二言はない」
「でもなんで、そこまでしてくれるの?」
上目遣いで言われたら仕方ない。特別にこの言葉を送ろう。
限界まで研ぎ澄まされた凛々しい表情で優しく囁いた。
「俺たち、友達だろ?」
「そっかぁ。そうだよね」
綿飴のようにふわっと甘く微笑む彼女を見て、鼻の下を伸ばさぬよう歯を食いしばった。
白石ちゃんのあがり症を治すと言ったものの。
何一つ名案が思いつかない。
だが、俺には世界一頼りになる親友がいる。
なので、実際は心配などこれっぽっちもしていないのだ。
今行くから待ってろイケメン。
「おい。涼太!」
教室へ戻って直ぐに、窓際最後尾の席に当たり前のように座り、外を眺めていたイケメンに声を掛けた。
「なんだ。直か」
と、風に靡く髪をかき上げながら振り向いた奴は、俺の親友兼ライバルの津賀涼太。
きっちりと着こなされた制服にサラサラの茶髪、整った顔に切れ長の目。
そんな眉目秀麗な彼と俺は、今まで一度もなかった喧嘩を以前初めて経験した。
それで仲が悪くなったという訳ではなく、揉めたおかげで更に友情を深めたのである。
「なんだとは失礼なやつだな。お前に相談があるんだがいいか?」
「変な相談じゃないよな」
そう爽やかに微笑む。ここでいう爽やか度は、世界レベルだ。
「ーーおい。誰がいつ変な相談をした。言ってみろイケメン」
余りの神々しさに言葉が遅れるよね。
「ほぼ毎回わけのわからない相談だよ」
「うるせぇ。いいから聞け」
「はいはい。それで?」
言葉とは裏腹に嫌味が無い。この表情である。
もう慣れたが、イケメン許すまじ。邪悪な思いを心に抱えながら本題を話すことに。
「ええっと。あがり症ってどうやったら治るかなって」
「ほー。直にしては真面目な話だな」
「お前は話の腰を折るのが好きだな」
「わりぃ。続けて」
お前じゃなきゃ腕の骨折ってたまである。
「許してやるから、耳の穴かっぽじってよく聞け。知り合いであがり症に悩んでる子がいるんだ。どうしてもその子の力になりたくてな」
「……あがり症ね」
「お前ならなんでも知ってると思ってな。なんせイケえもんだからな」
「イケえもんでは無いし、難しい問題だな。直ぐに治す策はないかもしれない」
いつにもなく険しい表情をするので、俺も眉間にシワを寄せた。
「やっぱり難しいか……でも直ぐじゃなければ何か案はあるのか?」
「うーん。例えば、常に恥ずかしい状況下に置いて、慣れさせるのはどう?」
「……確かにいいかもしれない」
多少頭を悩ませながら「ありがとうな」と礼を述べた。
「ああ。役に立てたならよかったよ」
話が終わり。そのまま自分の席に戻り頬杖をつく。
慣れさせるか……確かに慣れさえすれば解決するだろうが、これまた難しそうだ。
一旦この事を白石ちゃんに話すしかなさそうだな。
色々と思考を巡らせていると、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。




