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モテモテ49



「やっと来たか」


「ああ。それよりこんな朝早くに呼び出して、なんの用だ?」


 あの後電話で、「屋上で待つ」とだけ言って通話を切った。今の時刻は七時半。連絡してからすぐに用意をしてくれたのだろう。流石は我が親友。


 その親友に対して今の俺は怒ってるんだよ!


 俺は涼太を睨みつけると、強めに言い放つ。


「朝とか関係ねぇよ。なんで呼ばれたかわかるか?」


「全くわからない。心当たりもない」


 眉間に皺を寄せ、何かをひねり出そうと考えている。


 俺はその姿を見て、鼻で笑った。


「ふっ。しらばっくれるつもりか!」


「しらばっくれるも何も、全く状況が掴めてない」


 怪訝な様子の涼太に対して強めの口調で、


「そうか。あくまでも白を切るつもりだな。なら言ってやるよ。おめぇーは。俺がモテる邪魔をしてる。そうだろ?」


 取り乱さないように抑えつつも、怒りを秘めた鋭い眼光を向ける。


「邪魔ってなんの話だよ。そんなのするわけないだろ」


 涼太は身振り手振りで自分の無実を証明しようとするが、今の俺には届かない。


「すっとぼけやがって。じゃあいちから説明してやるよ。一つ目に白石ちゃんだ。俺は図書室で脚立から落ちそうな白井ちゃんを助けた。涼太おめぇは。どうだ?」


「ーーそういえば、俺も助けた」


「ほう。認めるのか」


「認めるけどそれがどうかしたのか?」


 未だに状況が掴めていない涼太に言い聞かせる。


「まぁ、まだあるから聞け。二つ目に日野だ。俺は弁当をあげた。覚えてるよな?」


「ああ、覚えてる。あの弁当美味しかったな」


 頷く涼太を、小馬鹿にしたような表情で質問をする。


「はは、そんなのはどうでもいいんだよ。お前も日野に何かあげなかったか?」


 俺が? 首を傾げてから腕を組み、瞼を閉じる。少し考えてから声をあげた。


「ああ! 確か、俺も焼きそばパンをあげたな」


「そうだ。俺の二番目の大好物をおめぇはこんな汚い手に使ったんだ」


「いや待て。何がどうなれば汚い手になるんだ」


「うるせぇ。話はまだ終わってない。いいから聞け」


「ああ、わかった」


 納得がいかないのか、涼太は表情を曇らせている。


「三つ目に黒笠だ。俺はパンを拾い。あの子をイジメから救うために手助けをしたんだ」


「それは初耳だ。俺もパンを拾った時から気付いていたから、何かできないかと少しだけ動いた。まさか直も動いてたなんて知らなかったけどな」


 尊敬しているような、澄んだ瞳を向けてくる。それが俺を更に苛立たせた。


「嘘ついてんじゃねーよ! 三つも被る訳ねぇだろ。こちとら必死にモテるためにやってたのを馬鹿にしやがって」


「待て。誤解だ。偶然助けた彼女達が、奇跡的に三つとも被っていただけだ」


「百歩譲ってそうだとして、おめぇーみたいなリア充のイケメンが。なんのためにそこまで必死に人助けをするんだ!」


「それは……」


 的を射た質問に、言葉を詰まらせる涼太。その姿を見て、俺は肩を落とした。


「……言えないのかよ。やっぱり俺の邪魔をしてたんだな。親友だと思ってたのによ……」


「本当に邪魔はしてない。信じてくれ」


「信じて欲しければ、助けた理由を答えろ」


「ーーそんなの、困っていたら助けるだろ」


 どうにか言葉を繕っているのが、丸わかりだ。俺は核心をついた言葉を言い放つ。


「それだけで、こんなピンポイントに困ってる人に出くわせるわけがない。おめぇわ。俺に隠し事をしてるんだ。そうだろ!」


「そ、それは……」


 あの涼太が動揺を隠し切れていない。これはもう決まりだ。


「言えないってんならここまでだ」


 全てを諦めた俺は扉に向かって歩き出すと、涼太が声を張り上げた。


「待て! 本当の事を話す」


「ほう、なら聞いてやる」


 やはり、何か裏があったか。


 立ち止まり目を向けると、涼太はしみじみと語り始めた。


「ーー俺はある時からお前に憧れるようになった」


「はぁ? なんの冗談だよ」


「いいから聞いてくれ!」


「お、おう」


 今まで見せたことの無い力強い言動に怯む。涼太は一呼吸すると、ゆっくりと話し始めた。


「俺は小学三年生の時にお前がいる学校へと転入した。当時。人と話すのがあまり得意じゃなかった俺には友達が出来なかった。なのに、この顔のせいで女子にはモテてしまっていたんだ」


「自慢かよ」


 いきなり昔の話を持ち込んできたと思ったらただの自慢とか、どういうことだ?


 俺の悪たれをスルーして話を続ける。


「その事が気に食わなかったのか、男子の一部が俺にちょっかいを出してくるようになった。最初は些細なことだった。暴言を吐かれたり、変な噂を流されたり、物を隠されたり、そのうち俺が抵抗しないのを面白がり、クラス中の男子が俺をイジメるようになった。そんな中。一人だけ毎日のように俺に話しかけてくる奴がいたんだよ。直、お前だ。俺なんかに話しかけたら、自分も標的になるかもしれないのに」


「確かに覚えてる。けど、俺はお前がイケメンでモテモテだから何か掴めると思って近づいただけだ。俺は理由もなしに人を助けるお人好しじゃない」


 包み隠さずに本音を曝け出した。


「そうか、それでも俺は救われた。それと、俺がお前に憧れたのはここからだ」


「わかった。聞いてやるよ」


 真剣な表情なので、ふざけるのは野暮ってもんだ。ここは大人しく最後まで付き合ってやる。




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