モテモテ48
「クッソォおおおおおおおおおおおおッ!!!」
校内掲示板の前で頭を掻き毟りながら叫んだ。中間テストはかなりの好感触だったのに発表を見て愕然とした。
一位・飾霧ノア 500点
二位・津賀涼太 495点
三位・天花寺明 489点
四位・茂木直 486点
朝の誰もいない校舎で再度吠えた。
「四位は百歩譲っていいよ。天花寺明って誰なんだよ! 名前どんだけかっこいいんだよ! しかもなんで三位なんだよ! おめぇーは一位じゃなきゃダメだろ! がんばれよ! 実力が名前負けしてんじゃねぇーよ!」
はぁはぁと息を切らし、満足した俺は教室に向おうと踏み出す。すると、どこからともなく可愛らしい声が耳に届く。
「せんぱーい」
「なんだ天花寺明じゃあないのかよ」
と肩を落とした。
きっと、さっきまでの後遺症が残っていたのだろう。そこに佇むのは黒笠だった。
「え? なんの話ですか?」
「いや、気にするな。こっちの話だ。それよりこんな朝早くにどうした?」
今は朝の七時だから、朝練以外で学校に来るのはどう考えても普通じゃない。俺は結果が貼り出されてすぐ見たかったから来ただけだし……来なきゃよかったけど……
「ーーなんというか、気になってしまって。先輩頑張っていたので」
少し照れながら喋る先輩思いの黒笠可愛い。
「そうだったのか。わざわざありがとう。期待には答えられなかったよ。あんなに手伝ってもらったのにな」
なんて優しい後輩なんだ。やっぱりこの子は俺の仲間だ。
「そんなことないですよ。先輩は頑張りました」
「そうかな……それならいいんだけど」
笑顔でそう言ってくれる彼女を見て、恥ずかしくて目を伏せた。
「はい。本当に四位なんてすごいですよ。一位じゃなくたって、少なからず知名度も好感度も上がってますよ」
「そうかな?」
「はい。もし上がっていなくても、私の好感度は上がってます……よ」
黒笠の頬を赤恥じらいながらの上目遣いに、
「そ、そうなんだ。それは最高だな」
意外な返答に動揺したが、先輩の威厳があるのであまり表には出さないように頑張った。
「本当ですか?」
「う、うん」
彼女少し照れてるんですが?
「先輩」
「なに?」
甘い声で囁いてくるんですが?
「あの……私言いたいことがあるんです」
「ーーそうなんだ。言ってみなよ」
俯きながらもじもじし始めたんですが?
「……えっと。あの、実は……先輩が好きなんです」
「えっ?」
いきなり告白されたので素で驚いた童貞。
「最後まで聞いてください」
「は、はい」
まだ続きがあったらしい。我に帰った童貞。
「最初の出会いは一ヵ月前のことでした。私はクラスに打ち解けず、直ぐにイジメの対象になりました。イジメられるのは慣れていたので、気にせず毎日を送っていたんです。ある昼休みパンを買いに行った帰りのことです。早く届けないとまたイジメられると、急いでいた私はパンを落としてしまい。そのことに気付かず立ち去ろうとしたら、先輩がそっとパンを拾い渡してくれたんです。こんな陰気臭い私に優しく微笑んでくれたんです。それから、使い走らされているのに、学食に行くのが楽しくなったんです」
「そ、そうだったんだ」
話を聞くに俺との出来事なんだが、全てが一致しているのになんだろう? この魚の小骨が喉に突っかかっているような感覚は……
「はい。そして極め付けにこんな私をイジメから救ってくれたんです。そこで完全に恋に落ちてしまって……この気持ちが抑えきれなくて……」
「そ、そうなんだ!」
イジメから救うヒーローに惚れた。狙い通りだ。今回こそ俺で間違いない。
それに気持ちが抑えきれないとか言われて、つい興奮してビックリマークがついてしまった。
「……私、津賀先輩が好きなんです」
「ひでぶー」
誰か俺に北斗百裂拳打った?
「大丈夫ですか?」
くっそ。「大丈夫ですか?」じゃねーよ! お前の頭が大丈夫なのかよ。余計な雰囲気作りやがって。
「へーきへーき。それより聞いていいか?」
「なんですか?」
まずはスリーサイズじゃなくて、それは知ってるから、
「えーっと、涼太がパンを拾ったとかなんとか?」
「はい。茂木先輩に拾って頂いた日の放課後に拾ってもらいました」
どんだけ落としてんだよ。パンに謝れ!
「そうなんだ。後は涼太がイジメから救ったとかなんとか言ってなかった?」
「それは、私をイジメてた四人組に津賀先輩が何か言ってくれていたみたなんです。それでごめんって謝ってくれたみたいで」
「ははーん。そうなんだ」
ほほー。あのイケメンも裏で動いていたということか、馬鹿が!
「それで、涼太を好きなことをなぜ俺に?」
「茂木先輩と津賀先輩はとても仲がいいですよね。それで、優しい茂木先輩なら力になってくれるかなって思ったんです」
力になるか……力を貸すか……まぁ、貸さねぇけどな!
「へー、そうか」
「迷惑でしたか?」
潤んだ瞳で見つめてくるので、俺は目をそらし、適当にはぐらかす。
「いや、そんなこともあるような。ないような」
「ダメですか?」
黒笠はグイッと近づき、俺の両手を握りながら上目遣いでパチパチ。
「いや、相談くらいなら乗るけど」
そりゃそうなるわ。なんか性格変わりすぎじゃね? 本当は積極的な子だったのかな? そんな黒笠も悪くないなとか思ってしまった。
「よかったです。私も先輩みたいに頑張りますね」
にこっと微笑む黒笠に、威厳のある先輩のような風格で涙をこらえながら、一言。
「ああ、頑張って」
「それじゃあ。また放課後に」
ぺこりと一礼した彼女は何かが吹っ切れたように軽い足取りで教室へと向かったのだった。
じゃあねーよ! ほんとなんなんだよ! なんで俺に言うんだよ。これで三人目だぞ。しかもどんだけピンポイントで涼太が絡んでくるんだよ。こんなのいくらなんでもありえねぇだろ!
流石に裏があるはずだ。絶対にある。あいつに限ってそんな事はないって信じてたけど、これはもう疑うしかない。
一旦しっかりと話す必要がありそうだな。




