モテモテ45
「もう放課後か」
今日は全く授業に集中出来なかった。いつもは授業に集中しているかのような口ぶりを許せ。
兎に角、黒笠の事を思うと何も手に付かない。
作戦が成功してればいいけど、失敗したらもっとイジメられるんじゃないのかって。その時は俺がなんとかしようとは思っている。
俺如きじゃ何もできないかも知れないが、その時は飾霧の手も借りる予定だ。
まぁ、成功していればそれに越したことはない。
昼休みも会わなかったので心配だが、平気だと信じたい。だって可愛いし、巨乳だし、性格もいいし、これでだめならいっそ責任取って俺が付き合うしか……ぐへへ。
念のため宣言しておくが俺はお人好しではない。ボランティアで俺がここまでやる訳がない。
これはあくまでもモテる為にやったに過ぎない。イジメから黒笠を救うことで好感度が急上昇。そして、彼女は俺に惚れる。ここまでが、俺の筋書き。
ーーみんなごめんな。俺はこういう奴なんだ。
日直だった俺は頭で妄想を膨らましながら雑務を終わらせ、いつもより遅く教室を出た。
離れに着き部屋に入ると、飾霧はいつもの黒いソファに座り紅茶を飲んでいる。その隣に黒笠も腰を下ろしていた。
いい意味で着崩された制服に黒のタイツを着用している。
今までと纏っている雰囲気が違うのは自信の現れなのかもしれない。
俺に気付いた二人は口を開く。
「遅かったわね」
「お邪魔しています」
「そんなことよりどうだったんだ?」
居ても立っても居られず食い気味で聞くと、恥ずかしそうに俯きながら、
「あ、そうですよね。結果的にいえば成功です」
「そっか、詳しく聞かせてもらってもいい?」
「はい」
いつもより何倍も明るい彼女は今日の出来事を詳細に教えてくれた。
「では最初から話します。ーー実は、昨夜緊張のあまり寝付けなかった私は、朝方になっても動けずにいました。学校に行くのが怖くて……逃げ出そうと思ったんです……
でも、勇気を出して、どうにか学校までは辿り着きました。いざ教室を前にすると、……足が竦んで、怖くて、入るか迷いました。諦めて、帰ろうとも考えたんです。
ーーだけど、二人に頑張れって言われたのを思い出して……意を決して教室に飛び込んだんです。ーーそしたら、教室が静まり返って、また怖くなったんですけど。
……茂木先輩を踏んだことを思い出したら力が沸いてきて、思い切って「おはよう!」って挨拶しました。でも、「違うクラスの子?」「転入生?」とか言われて気付いてもらえませんでした。仕方なく自分の席に着いたら、みんなが集まってきました。
一人の女子が、「黒笠さん?」て聞いてきたので、「はい」と答えたら、一気に周りが活気づいて。色々質問をされて大変でした。
みんなが私に興味を持つなんてびっくりしたけど、嬉しかったです。私をからかっていた四人も昼休みに謝ってくれて、なんだかうまくいきすぎて夢のようでした。……本当にありがとうございました」
途中涙目だった彼女も、話し終わる頃には晴々とした表情になっていた。
ありがとございました。と感謝の気持ちが詰まったお辞儀が、俺の目頭を熱くした。
「そっかあ。ほんと、よかった」
「はい」
聞いていて色々思うところはあったが、黒笠の笑顔を見れて本当によかったと、心の底から思った。
ただ、気になる事が二つあった。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「はい。いいですよ」
「えっと、男子の反響はどうだった?」
まずはこれだ。もともと隠していただけで可愛いかったのだから、凄い事になってるに違いない。
「……よくわからないですけど、男子生徒の視線をすごく感じました」
「そうか」
きっと物凄い数の食い入るような視線だったんだろうな。なんとなくわかる気がした。絶対胸だろうなぁ。
後は、一番気になっていた事を確認しないと。まさかとは思うがあの格好で行くわけはないよな。
あの格好とは、ブラウスのボタンを三個目まで外し、スカートを限界まで捲った。素晴らしい格好の事。
もしあの格好で行ったのだとしたら、男子生徒を悩殺するのは必然。
俺は核心に迫るために口を開いた。
「後、あんな格好でほんとに行ったのか?」
「そんなわけないですよね」
黒笠白い目で即答。
「貴方は筋金入りの馬鹿ね」
飾霧白い目で続投。
「ははは、だよね」
あれは性格を改変する為に飾霧が打った布石だった訳だ。
二連コンボに空笑いするしかなかった。そんな俺を尻目に黒笠は立ち上がり、
「本当に、お二人には感謝しています」
頭を深々と下げ、今の気持ちを素直にぶつけてきた。
「そう」
「いいって別に」
照れくさいのか、素っ気ない飾霧と後頭部を掻く俺。
「でも、何かお礼がしたくて」
表情を見るだけで感謝の気持ちがとても伝わってくる。だから、それで十分な気がした。
「私はいらないわ」
「俺もいらない」
ほぼ同時に出た言葉が妙にむず痒かった。
「意外ね」
「そっちこそ」
いつもみたいに嫌味な感じではなかったので、なんだか調子が狂う。でも、居心地は悪くなかった。
黒笠はその返事を聞いて頷く。
「わかりました」
それで、と心配した様子で続ける。
「おこがましいのですが、もう一つお願いがありまして……」
「何かしら?」
「俺にできることなら」
緊張しているからか、それとも言いにくいからか恥ずかしそうに口を開いた。
「……友達になってもらえませんか?」




