モテモテ40
放課後になり、離れで待つこと一時間。飾霧には今日の出来事を全て話している。一緒に手伝って欲しいと土下座をした。首は縦に振らなかったが、こうして一緒に待っていてくれるのだから、多少なら手伝ってもいいという気持ちがあるのかもしれない。
場の空気を持たす為に俺は口を開いた。
「来ないなー」
「もう、帰っていいかしら?」
飾霧に無表情で睨まれたので、真剣に頼み込む。
「あと少しだけお願いします」
「後二分よ」
「短っ!」
「後少しって言ったのは貴方よ」
「そうですけど……」
俺のピンチを救うかの如く物音が聞こえた。コツコツと階段を上る音。
間違いないと思い、部屋を飛び出した。そこにはやはりと言うべきか黒笠が立っていた。
「待ってたよ」
「……はい」
いきなり飛び出してきた俺に少し驚いている黒笠を部屋へと案内する。
「入って」
「……お邪魔します」
ペコリとお辞儀をして入る黒笠を冷たい目で一瞥する飾霧。
「ーー貴女が、黒笠雫ね」
「……はい」
「陰気臭いわね」
俯き気味の黒笠に飾霧は容赦ない一言。
「おい! やめろ馬鹿」
つい、本音が出てしまったが後悔はしていない。こいつほんと、魔王だわ。
「馬鹿?」
「冗談ですよ」
無表情で首をグイッと傾げるから、マジで怖かった。一瞬で後悔したわ。
「冗談も嫌いなのだけれど」
「わかったから、今は静かにしていてくれませんかねぇ?」
「仕方ないわね」
飾霧をどうにか静めさせ、黒笠に宣言する。
「黒笠さん。君を人気者にする」
「えっ。そ、それって……どういう意味なのですか?」
「そのまんまの意味だよ。君を人気者にする。そしてイジメた奴らを見返してやろう」
「……そんな事。出来るわけーー」
自信がないのか否定しようとする黒笠の言葉を遮り、「ある」と力強く言い切る。
すると、彼女はふるふると震えながら、
「……わ、私でも。本当になれますか?」
そう言った瞳の奥には僅かだが希望の光が見えた。
俺はすかさず頷く。
「なれる。まずは髪を切り、制服を着こなし、眼鏡はコンタクトに。これだけでもかなり良くなるはずだ。なぁ、飾霧様?」
「なぜ、私に振るのかしら?」
「美人だから?」
「なぜ疑問系なのかは置くとして」
そうねと黒笠を一瞥すると冷たい声で、
「性格、眼鏡、髪型が見事に調和している今よりは、マシになりそうね」
「……本当ですか?」
まだ半信半疑なのか、不安な表情の黒笠。俺はテンションを上げながら鞄を持つ。
「ほんとだって。そうと決まれば行くしかないよな。飾霧様?」
「だからなぜ、私に振るのかしら」
「俺。そういうの詳しくないから」
「それでよく人気者にすると言えたものね」
「そこは、あれだよ。ーー飾霧様任せだよ」
親指を立て勢いで押し切ろうとすると、やれやれと額を抑えながら首を振った。
「ーーもういいわ。これ以上話すと馬鹿が移る。それじゃあ、私に付いてきなさい。黒笠雫。ーーそれと奴隷」
「……はい。お願いします」
「俺は行かなくていいのか? ーーなーんてな」
まだ奴隷じゃないからボケただけなのに、ものすごい剣幕で睨まれたから誤魔化すしかなかった。
まずは美容院に向かうことになった。校門を出ると黒塗りのリムジンが止まっていた。不思議な事にこれが誰の物なのかすぐにわかってしまった。案の定飾霧のだったらしく、「早く乗りなさい」と言われたので、緊張しながらも二人で乗車。中は広くて開放的。高級感溢れる机や椅子が並べてあり快適だった。
初めてのリムジンに、テンションは上がっていたのだが、はしゃぐのは流石にやめた。どうせ馬鹿にされるのは目に見えているし。
十五分程で目的地に到着した。美容院に三人で入るのもアレだから、黒笠の事は飾霧に任せ、俺は近くのⅯバーガーショップでソシャゲをしながら時間を潰していた。




