↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
39/112

モテモテ39



 チャイムが鳴り、四限が終わった。


「ふー。やっと昼休みか」


 昨日の出来事は忘れて黙々と勉学に励み、モテる為に今までやってきた事を当然のように遂行した。


 今日もいつものように涼太と学食に向かう。一階まで降りると、久しぶりに隠れ美少女の黒笠に出会った。


 二週間ぶりだけど相変わらず暗さが際立っている。何かあれば離れに来てほしいと言ったが、一向に来なかったので心配はしていた。それにここ最近出会わなかったのは、向こうが避けているとも考えられる。


 今日も茶色い袋を二つ持ってるのを見ると、どうやらまだイジメられてるみたいだ。


 黒笠はこちらに気付いたのか、ぺこりと礼だけして駆け足で去っていった。声をかけようとしたが、向こうはそれを望んでない様子だったのでやめた。空気を読むのは得意だしな。


 昼飯を食べ終えた後、やる事があると涼太と別れた俺は、丁度約束から二週間が経っていたので新聞部の部室へと足を運んだ。


 ドアをノックをしてから入ると、いつものようにデスクチェアに腰を据える加藤の後ろ姿が見えた。


「加藤。今大丈夫か?」


「ーー君か。大丈夫だとも。いひいひ」


 ゆっくりと振り向く加藤は、今日も不気味にロン毛を揺らし、眼鏡の位置を直したのと同時に眼鏡が輝く。そしていつもと変わらぬ不思議な笑い声を響かせる。


「よかった。ならこの前頼んだ情報を聞いてもいいか?」


「ああ。構わないともーー」


 ブリッジを人差し指で持ち上げると、不気味に眼鏡が輝く。


「まず黒笠雫のクラス内の立ち位置は、最下位に位置付けられている。それに、イジメを受けているようだ。主犯格は四人」


「そうか、やっぱり。なんでイジメを受けてるかもわかるか?」


 解決するにはそれが必要だった。普通は知らないことでも加藤なら。


「それは難しい質問だが、情報網からすると、地味な恰好と暗く内気な性格だろう。クラスでも全く口を開かないらしい。それと、主犯格の四人のうち一人とは同じ中学らしい。名前は木崎由(きさきゆう)


「同じ中学なのに、なんで仲が悪いんだ?」


「以前、色恋沙汰でいざこざがあったらしい」


 色恋沙汰だと……どういう事だ。あんな純情そうな彼女はもう純白ではないというのか!


「内容を詳しく聞いてもいいか?」


「そこまで細かくは知らないが。当時木崎が好きだった男子が、黒笠に告白した事が原因なのだろう。いひいひ」


 その男見る目あるな。


「……そうか。ありがとう加藤。お前は頼りになるな」


「アレの為ならお安い御用だよ」


「何かあれば、また頼む」


「いいだろう。いひいひ」


 不気味に笑う加藤に、アレを渡してから部屋を後にする。廊下に出てすぐの窓際に近づくと、俺は窓に手を掛け塾考する。


 やはり。あの格好と性格が問題なのか、せっかく可愛いのに勿体ない。恰好はどうにかなるとしても、難関は性格だな。その二つを解決できればイジメもなくなるとは思うんだけど……どうしたものか。


 因みにアレとは、俺の親友の写真だ。涼太の写真は特に貴重らしく、プレミアが付いているらしい。何のことだかさっぱりだが、俺にとってはただの紙切れとまでは言わないにしても、沢山の写真を持っているから貴重程でもない。


 その中でも小学生頃の写真は貴重らしく、加藤の手腕を持ってしても入手は困難との事。なので、こうして俺が加藤に何かを頼むついでに渡していると言う事だ。要するにギブアンドテイクの関係。


 誤解しないで欲しいのだが、涼太には前もってお前の写真使わせて貰うぞと言ってある。その時の涼太の言葉がこうだ。


「ああ。構わないけど、変なことに使うなよ」


 爽やかなスマイルを添えて。


 変なことに使わなければ、何してもいいとお墨付きを貰った。この涼太が言う変な事とは、オカズには使うなと言う事だと俺は解釈している。そこで俺も一言言ってやったのを覚えている。


「お前の写真で抜けるかぁぁぁあっ!」


 こうして無事に涼太の写真を使う権利を手に入れた訳だ。よく考えると、他にも使い道がありそうな気もしなくはない。今後出番があるのは間違いなさそうだ。


 頭を巡らせていると、校内に予鈴が響き渡った。




 翌日の昼休みがやって参りました。この時間と言ったら彼女。


 今日は涼太とは別行動だ。俺は急いで学食まで向かった。

 すると、やっぱりも言うべきか彼女の姿を捉えた。またパンが入った袋を二つ持っている。にしても今日はかなり早いな。


 こちらに気付いたのかぺこりとお辞儀をする彼女に声をかけた。


「黒笠さん。話があるんだけど」


「……な、なんでしょう?」


 不安に瞳を揺らす黒笠にはっきりと言う。


「今日の放課後、離れの二階に来て欲しいんだ」


「……どうしてですか?」


 困惑する彼女に、昨日必死に考え導き出した答えをぶつけた。


「君を人気者にしたいんだ」


「は、はい?」


 突然の申し出に戸惑う彼女を置き去りにして、両手を合わせて頼み込む。


「頼む」


「……い、意味がわからないです」


「確かに意味がわからないと思う。だけど、君を変えるにはこれしかないんだ。騙されたと思って、来てくれ。ずっと待ってるから」


「そんなことを言われても……」


 困っていても、引き下がるわけにはいかないんだ。君を救うために……


「信じてくれ」


「でも……」


 一向に話が進まないので、こうなったら奥の手だ。


 深呼吸をして息を整えてから、真剣な眼差しで口を開いた。


「君は可愛い」


「ーーへっ! き、急に何を言うのですか!」


 素っ頓狂な声を上げた後、見る見るうちに顔が真っ赤になる。あたふたしながら後ずさる黒笠に、俺はより一層真剣な表情で、


「本当の事なんだ」


「……そんなこと」


「そんな事ある。俺にはわかるんだ」


 そう、俺にはこの(スカウター)があるんだ。ってふざけてる場合じゃない。


「ーー突然。意味がわからないです」


 そりゃわからないよね。でも引き下がらない。


「それでもいい。待ってるから。呼び止めて悪かったね。じゃあまた」


 有無も言わさず言い切り、逃げる。


 背後から「あの」と聞こえた気がするが、今は逃げるのみ。これで来てくれればいいけど、無理なら無理でまた何か他の方法を考えるしかない。


 話がまとまったところでカレーでも食うか。


 俺は不安を振り切るかのように競歩で学食へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。