モテモテ38
数日後。体育の授業。一組と二組合同なので、運動部一番人気の日野さんと一緒だ。前だったら最高にテンションが上がる展開なのだが、今となっては俺の隣にいるイケメンが好きなわけだし、なんか燃えない。
ただ、仕方ないからどうにか涼太との仲を取り持ってやる。白石とも同じ約束をしたが問題ない。どっちも俺を好きじゃないので、どっちも平等に手助けをしてやろう。俺は贔屓とかするの大嫌いだからな。
そんなわけで男子はサッカー女子はソフトボールをしている。ここからどうにかしてあの二人を近づける。そこが俺の腕の見せ所だ。日野にはもうメールで伝えてあるから、その計画通りに事を運ぶ。
俺は涼太とサッカーボールを蹴りあってるのだが、ここでアホみたいな方向に本気で蹴り飛ばす。
「すまん。ファイアシュートしちまった」
日野からの合図を見た俺はすかさず察知し、日野に向かってボールを蹴った。流石の涼太も反応できなかったらしく、愚痴をこぼす。
「何が、ファイアシュートだよ」
「ごめん。次は気をつけるからよ」
謝ってボールを取りに行ってもらう。涼太は駆け足でボールを取りに行く。そこにはボールを持った日野の姿が、何か話してるようだ。
よかったよかった。いい事をした後の飯は美味いだろうな。
戻って来た涼太にわざとらしく尋ねる。
「おい。日野さんとなに話してたんだよ」
「いや、別に」
「ふーん」
体育が終わり、外の水道で二人して水を飲んでいた。俺はわざとらしく、蛇口を親指で抑え、涼太に向かって水を飛ばす。
「受けるがいい。ウォーターシュート」
「は? いきなりなんだよ」
涼太に見事に的中。突然水を掛けられ呆れた表情だった。
「イケメンでも流石に躱せなったようだな」
「あーあ。びしょびしょだよ」
涼太は頭を振った後に濡れた髪を搔き上げる。その姿を見て俺はキメ顔で言う。
「水も滴る。いい男ってな」
「仕返しだ」
その言葉の通り、涼太は蛇口を使い水を放つ、キメ顔をしていた顔や身体は一瞬でびしょ濡れになった。俺は激怒した。
「なんてことしてくれんだ。セットした髪が崩れちまったじゃねーか」
「怒るところそこかよ」
「俺を怒らせたな。後悔させてやる。奥義。ウォーターウォール」
俺は澄ました表情の涼太に一泡吹かせる為に、禁断の技を使った。上に向けた蛇口の水を最大まで出す。そしてその蛇口の口元に手を乗せるだけという。自分が濡れることなど御構い無しの自爆技。水はあらゆる所に跳ねた。咄嗟に逃げたが結局餌食になった涼太が笑いながら言う。
「ーー馬鹿だろ。自分もびしょ濡れになってるからな」
涼太より遥かに濡れた俺は眉根を寄せ力強く言う。
「構わん。お前を倒せればな」
「なんだそれ」
先程の攻防により多数の水溜りが出来た。それをぴょんぴょんと避けて近づいてくる女が声をかけてきた。
「二人共楽しそうだね」
にこっと笑う日野は、多々ある水溜りを蒸発させんばかりの笑顔だ。そんな眩しい彼女に俺は答える。
「日野か、中々面白いよ。夏ならもっと良かったんだけどな」
まだ六月前だから地味に肌寒い。
「俺はただ巻き込まれただけなんだけど」
否定する涼太に、日野は少し口を尖らせる。
「そうなんだ。でも男の子はいいよね。私も本当はやりたいから羨ましい」
「そうか。ーー確かに女子じゃ、できないかもな」
「男子の特権だな」
俺は親指を立てる。
「そんな特権いらないだろ」
「いるだろ」
「どこら辺がいるんだよ」
二人のやり取りを見て日野は頬を染める。
「二人はほんと、仲がいいんだね」
「それほどでもあるがな」
「ああ。それより。だいぶ寒くなって来たから、そろそろ教室に戻ろう」
ふんっと自慢げに鼻息を荒げる俺を横目に、澄ました表情の涼太。
「おう。その前にちょっと絞らせてくれ」
「俺も」
二人して体育着の上を少し持ち上げ、服を絞る。すると、服を持ち上げたせいで、鍛え上げられ綺麗に割れた腹筋がこんにちは、それを見ていた日野は、耳まで真っ赤にして鼻を抑えると、「わ、私先に行ってるね」と言い残し走り去ってしまった。
いきなりどうしたんだ? もしかしてあいつ筋肉フェチか?
取り残された二人は教室へと戻った。俺はスマホをチェックすると、日野からメールが一件届いていた。内容を見ると、『茂木君。ごめんなさい。無理です!』ーーなんじゃこりゃあ! また俺が振られたみたいな文章になってるじゃねぇーか! 白石と完全一致だわ。もう絶対手伝ってやらねぇーからな。
こんちきしょおおおおおおおおおっ!




