モテモテ37
日野さんも可哀想だな。あいつの好みってロングヘアーで高身長だろ。身長はギリセーフでも髪型はOUTだな。それに、自分の意見がハッキリ言えて、自分の信念を貫く人とも違う気がする。
涼太の好みに当てはまる奴なんているのかよ。実際そんなこと心配している場合じゃないな。俺はこれから作戦報告をしにいかなければならないんだった。
急いで離れに向かった。二階の部屋に着き、軽くノック。何も反応がないので、中に入ることにした。いつもの定位置で飾霧は紅茶を飲みながら読書を嗜んでいる。
俺の存在などないかのように一瞥すらしない。俺はエアー扱いだ。そんなエアーな俺は勇気を出して話し掛ける。
「失敗でしたあああああああああああ!」
俺は怒号の高島並みに大声を上げた。飾霧はビクッと肩を強張らせると、不愉快極まりないといった様子で睨んできた。
「ーーうるさいわね。馬鹿なのかしら?」
「馬鹿なんです」
「知っているわ。何が失敗だったのか説明してもらえるかしら?」
「わかりましたーー」
先程の出来事を詳細に話す。全て話し終えると、無表情で聞いていた飾霧が一言。
「そうーー」
一言だけ言い、口を抑えつつ俯く飾霧に尋ねる。
「もしかして笑ってるんですか?」
「そ、そんなこと……あるわけ……」
「あるわけあるということですね」
この野郎。他人の不幸が大好物なんだな。流石は魔王。
飾霧はどうにか笑いを堪え、コホンと仕切り直すと口を開く。
「ーー好感度は上がってるみたいね。相談されるぐらいなのだから」
「言われてみればそうですけど、複雑です」
そういうポジティブな考え方は俺の中にはなかったから新鮮だな。
「そうね。でも、モテ男になるのも時間の問題だと私は思うわ」
飾霧は自信満々な雰囲気を醸し出し、無表情で言い切る。その言葉に疑問を感じる俺は浮かない顔で、
「そうですか? そんな感じしませんけど」
「貴方を二週間以上見ていたけど、徐々に皆に慕われだしてきているわ。このままいけば、徐々にモテ始めるはずよ」
「そんな感じはしなくもないんですが、女ってよりも男ばかりに好かれてる気がします」
このままだと、あっち系になっちまう。
「それはあるわね。でもそれも重要なことなの。女ばかりに好かれると男は嫉妬するけど、男ばかりに好かれても女は嫉妬しない。どちらかというと友達が多いということで、好印象に繋がるわ。だからめげずに好感度を上げなさい」
「わかりました」
飾霧の力強い言葉に頷くしかなかった。
「では明日も、今までやってきたことを信じて実行しなさい」
「了解」
この後、離れを後にし、学校の自販機の前でMAXコーヒーを飲んでいた俺の心には靄が掛かっていた。
飾霧は時間の問題と言っていたけど、俺にはどうも信じられない。好感度が上がってるのは認めるけど、このままだといい人で終わりそうというか、ただの友達枠みたいな感じになりそうなんだよな。今だって既に二人から告白されたしな。親友が好きだって。それって完全にモブキャラ認定だもんな。このままで本当にモテるのか、自信がなくなってきた。
飾霧の言葉は説得力があるもののどこか煮え切らない。そんなモヤモヤした気持ちを、俺は飲み終わった空き缶にぶつけた。




