モテモテ34
放課後ベストプレイスで、スマホを眺めながらニヤニヤと頬を緩ませていた。
「えへ、えへへ」
「気持ち悪いを通り越して、新境地を垣間見てしまったわ」
飾霧が俺の面を睨みながら淡々と言ったので、こちらも淡々と言い返す。
「おめでとうございます」
「ありがとう。では、作戦の結果を聞こうかしら」
「……わかりました」
俺はしぶしぶ体力測定の結果と、作戦は失敗したことを話した。
「……そう。ーーそこそこ! なのに結果がついてこなかったのは残念だったわね。それにしても……長座体前屈は……本当に……凄いわね。学内で……一番かも……しれないわね」
そこそこを無駄に強調するんじゃねよ。後は褒めるんならちゃんと褒めろよ。なんで笑い堪えてんだよ!
「そういう貴女はどうなんですかねぇ?」
「仕方ないから教えてあげるわ」
飾霧は事細かく教えてくれた。結果を聞き、こいつは魔王だと再確認した。長座体前屈と握力以外は俺よりすごかった。俺、男子なのに……。
「気に病むことはないわ。貴方もそこそこだもの」
「はい」
彼女なりに慰めてくれたみたいだ。いつもより優しい目をしている気がするよ。そんな事を思ってしまったせいなのか、急に飾霧の視線が汚物を見るような目に変わった。
「それで次の作戦の前に、先ほどからスマートフォンの画面を見ながら鼻の下を二メートル以上伸ばしていた理由を教えてもらえるかしら?」
「どんだけ伸びてんだよ! 身長超えちゃったよ!」
「いらない突っ込みご苦労様。それでなぜかしら?」
いらないツッコミって、もしツッコミをいれなかったら大惨事だぞ。次は絶対入れないからな。
「そうだなー。教えない」
「そう。わかったわ。それでは作戦ーー」
「嘘だって! 教えるから、今言うからーー」
どんだけ興味ないんだよ。取り乱しちまったじゃねぇか。
「嘘は嫌いだと何度も言っているのだけれど。これほどまでに記憶力が乏しい貴方は虫以下ね。きっとミジンコやミドリムシと言った部類と同じだわ」
遮ったお返しとばかりに遮ってくる飾霧の様子は、それはそれは冷ややかだった。
「言い過ぎだと思います」
心からの言葉。本心。
「すごいわ。日本語を話せるなんて、きっとミジンコ界の期待の星ね」
「わーい」
面倒なので適当に喜んだ。ツッコミは我慢したぞ。
「お遊びはこの辺にしてもらえるかしら?」
ツッコミいれないと全て俺のせいになるんだ。そうかそうか、もう怒った。
「もうなんでもいいです。はい。さっきの話なんですけど、はい。日野彩香という、はい。運動部で断トツ人気のメアドをゲットしただけです。はい。ただそれだけです。はい」
通話時のサラリーマン風に喋ってやったわ。
「他には?」
効果はなかった。しかも他にあるってなんでわかるの? 本当に怖いんだけど。もう包み隠さずに言うしかないじゃないか。
「ーー明日お弁当を作ってくれるみたいです」
「そう。なら明日の作戦は、日野彩香のお弁当を褒めちぎって好感度上げちゃおう」
何それ? 日野を狙うってことか? 仕方ないから一応聞くか。
「日野さんを落とすんですか?」
「そうよ」
「無理だと思うんですけど」
「落とすのは無理でも好感度ぐらいは上げなさい。それと、お弁当を作ってもらえる時点で嫌われてはいないのだから、頑張る価値はあると思うわ」
「……確かに。やってみます」
飾霧の言う通りかもしれない。そもそも嫌いな人に弁当なんて作らないよな。もしかしたら脈ありなのかもしれない。そう思うと力が沸いてくるし、なんか興奮してきた。
今にも荒ぶりそうな右手を抑えた。




