モテモテ32
昨日の出来事がショックで、あまり寝られないまま朝を迎えたわけだが、いつまでも引きずっている俺様ではない。そんな無駄な時間を使っている余裕は一切ない。
教室についてすぐに奴を探す。案の定いつものように窓際最後尾の席に座っていたので、ドンドンと足音を立てて近寄る。
「おい! イケメン! お前に話がある。ツラ貸しな」
「今日も朝からおかしな奴だな」
おかしくなったのはおめぇのせいだ! イケメン!
怪訝な様子の涼太を尻目に俺は顎をしゃくり、教室の外へと促す。
「ちょっと来い」
「なんでだよ」
「いいから来い」
涼太の腕を強引に掴む。
今日は白石ちゃんのためにあることを聞くと決めていた。
「行くから、掴むなって」
そのまま引っぱり屋上へ連れていく。澄み切った空の下で俺は口を開いた。
「貴様の好きなタイプを教えろ」
「唐突だな。そんな事の為にここに連れてきたのか?」
よくわからないと言った様子が、ひしひしと伝わってくるがどうでもいい。
「なんとなく、雰囲気的なやつを考えた」
そう。俺は雰囲気を重んじる漢。皆は俺を雰囲気マスターと呼ぶ。
「よくわからないけど、そこはいいか。ーー好きなタイプ……そうだな……。自分の意見がハッキリ言えて、自分の信念を貫く人かな」
涼太は真っすぐな視線で俺を見る。
「それって、漢字で書くと……漢じゃねぇのか?」
「違う」
やっぱりこいつ男が好きなんじゃ、--と思ったら即答されたので違うらしい。
「まぁいい。外見はどうだ」
「外見か、……強いて言えばロングヘアーで高身長かな」
初めて聞いたが、そうだったのか。白石ちゃんはボブで低身長。OUT! 仕方ないから好みぐらいは教えてあげようという俺の優しさを無駄にしやがったな。このイケメン野郎。
「帰れ。小童が」
「教えたのに、それはおかしくないか」
おかしいのは空気が読めないお前だ。
「うるさい、小童」
「もうそれでいいけど、戻ろうぜ。チャイム鳴るぞ」
「小童の分際で、私に指図するな! さあ、戻るぞ」
「結局戻るのかよ」
「小童、置いていくぞ」
「はいはい」
チャイムが鳴ったので途中から競歩にした。廊下は絶対に走らない。じっちゃんとの約束だからだ。
昼飯を終えた俺と涼太は図書室に向かった。
因みに今日もカレーを食べた。涼太はCランチだった。なんかイラッとした。
なぜ、図書室に来たのかというと、白石ちゃんと涼太を会わせてやろうかなという、俺の粋な計らいだ。
朝、涼太のタイプを聞いて、白石ちゃんは絶望的なまでに追い詰められていることが判明した。なので、なんか可哀想だし、手助けでもしてやるかと情が沸いてしまった。
ここに白石ちゃんが居るのはわかっている。予めメールで呼んでおいたからな。ほら、居たぜ。
「白石ちゃん。よっす」
前より馴れ馴れしいのは、こいつが俺などに眼中がないとわかり、気が楽になったからだ。
俺のモノにならない女など男と同じだ。
俺が歩むは、モテ道ならぬ外道なのさ。ぐへっぐへへへ。
「あ、茂木君。……つ、つがががががくん?」
この子図書室をドリルで掘るつもりだよ! そのまま天を突くつもりだよ!
振り向いて涼太を認識するや否や、白石ちゃんの顔が急激に赤くなり、目が泳いでいる。それを心配してか涼太が声をかける。
「大丈夫? 熱でもあるんじゃないのか?」
「だ、だいじょうぶでシュ」
両手と顔をあわあわと振り、大丈夫だとアピールしてるつもりだろうが、語尾がシュになってるし、機関車みたいに頭から湯気が出てるからな。
それにしても俺といた時はこんな表情……はぁ……
「そんな風には見えないけど」
「だ、だいじょうぶでシュ。ちょっと、用事が、できたので、失礼しまシュ」
そう言い残し、白石機関車は頭からポーポーと湯気を出して走っていた。
まさかここまで恥ずかしがるとは、最早別人だったぞ。これからどうするか。
「あれ、本当に大丈夫か? 追いかけた方が」
涼太は心配そうに白石の後ろ姿を見つつ俺に投げかける。
「大丈夫だ。あれは、癖みたいなもんだ」
意味不明な言い訳をしてしまったが、これでお前が追いかけることはないだろう。もし行ったら更にやばいことになるからな。
「そうか、ならいいけど」
怪訝な様子だが、納得してくれたみたいだ。とりあえず当分は図書室に涼太を連れてこないようにしよう。
「そんじゃ、漫画でも読もうぜ」
「そうだな」
今日のことは一旦忘れて楽しむとするかーーあれ? メッセージだ。
スマホを確認すると、やっぱりと言うべきか白石ちゃんからだった。
肝心な内容は『茂木君ごめんなさい。無理です』という文章。
なんじゃこりゃあああああああああああっ!
俺が振られたみたいな文章になってるじゃねぇか! これはワザとなのか? どう考えてもワザとだよな? もう絶対手伝ってやらねぇからな。
ーーこんちきしょおおおおおおおおおおっ!




