モテモテ29
「あ~。面白かったね!」
「ほんと、面白かった。まさかあそこで敵に寝返るなんてな」
「そうそう。あそこから一気に流れ変わったよね」
「そうだな。あのまま行くと思ったら、最後でまた寝返るなんて流石に思わなかったぜ」
「ね。凄い展開にハラハラしたよ」
「最後まで目が離せなかった」
「同じだね!」
映画が終わってすぐに語り合っているのだが、これって映画あるあるだよな。一人で行くと、この思いが伝えれらないから。やっぱり映画は二人で行かないと、できれば女子。ここメモ取っておいて下さい。テストに出ます!
それにしても楽しそうに話してくれるから、こっちもつい熱くなっちゃうよね。しかも「同じだね」ってなんかドキッとしちゃうんですけど、その一言だけで昇天しかけるから。
ウブな高ニ、舐めんじゃねぇーぞ!
「そうだ。少し早いけどご飯食べない? 近くにいい店があるんだけど。別にお腹が空いてなければ行かなくてもいいんだけどね。あはは」
断られた時の逃げ道&空笑いの最強コンボを使ってしまった。さー、どっち!
「そうなの? 丁度お腹も空いてたから行こうかな」
よっしゃぁぁぁぁあッ!
心で叫びつつも冷静を装う。
「ーーそれじゃあ。案内するから付いてきて」
「うん」
にこっと微笑んだ彼女と共に、涼太が教えてくれた洒落たカッフェに参ろうか。大事なのでもう一度、カッフェだからな。
こんなテンションになっているのは、白石ちゃんのせいだ。
洒落たカッフェには十分ほどでついた。
店内は森林をイメージとしており、壁には大きな木々の絵が描かれている。鳥や動物の置物、それに机と椅子も森をイメージさせるデザインで、本当に迷い込んだのかな?っと錯覚するレべルだった。最後のは盛ったが、お洒落な事には変わりない。
ーー涼太ありがとう!
もう注文は済ませてある。俺は野菜がいっぱい入ったサンドイッチ、名前は長すぎて覚えてない。白石ちゃんはオムライス、なんかすごい似合う。可愛い。
映画の話をしながらご飯が来るのを、いまかいまかと待っている最中。
「ここ、ほんと森みたいだね」
白石ちゃんがきょろきょろしつつ言った言葉は、この店に来て三度目なのだが気にしないで返す。
「ほんとだな」
共感するだけという最低な返事をしたところで、空気を読んだのか店員が料理を運んできた。
「おいしそう」
「ほんとだ! しかも思ったより大きいな」
スッと置かれたオムライスは普通なのだが、サンドイッチはマグナムサイズ。これどう食べるの?
「ほんとだね。こんなあるよ。こんな」
「こんなあるな」
笑顔で両手を使って、大きさのアピールをする彼女は天使そのもの。俺も真似してみたが、これは傍から見たらカップルなんじゃね? てかもうカップルでいいだろ。お願い。神様お願い。
二人ともいただきますと手を合わせ、料理を食べ始める。
「ーーうまい! 食べづらいけど味は神がかってる」
「ーーこれもおいしい! たまごがほわほわ」
ほわほわしてるのは君だよ! それにしてもうまい。けど飾霧が作ったやつの方がうまいんだよな。
--そうだ! 順調すぎて電話してないや。それはそれでいいのか。
二人とも食べ終わり。食後にコーヒーを飲んでいると、白石ちゃんが唐突な質問をしてきた。
「茂木君は昔から津賀君と仲良いよね。なんでなの?」
「うーん。なんでだろうな。小学生の頃気付いたら一緒に遊んでて、そのままだらだらと今に至るって感じかな」
「そうなんだ。小学生から仲良いのかー。なんか羨ましいな」
他の人から見たら羨ましいのか。考えた事もなかったな。
「白石さんはそういう友達いないの?」
「いないかな。友達があまりいないから」
「ははは、そっか。まぁ、俺も友達と呼べるのは涼太ぐらいだけどね」
悲しい表情で自虐するもんだから、つい、空笑いしちまったぜ。俺も同じようなもんだけど。
「そうなの?」
首を傾げ目を真ん丸にする白石に頷きながら「そうそう」と返事をする。白石ちゃんは両肘をつきその上に顔を乗せた。
「意外だなー。茂木君って明るいから、友達多いのかなって思ってたよ」
「教室で話す奴とかはいるけど、遊んだりはしないからなー」
「遊んだら友達?」
そう聞かれて、どうなんだろうと思ったが一応答えた。
「まぁ、遊ぶ奴は友達って言ってもいい気がするけど」
「私は?」
「えっ?」
ど、ど、どういうこと? まさか俺と友達になりたいのかな?
「それじゃあ、今日遊んだ私は友達?」
また聞いてきた。今度は詳細に聞いてきた。こんな積極的だったっけ、この子。でも待てよ。今日遊んだし、普通に話せてるし、もう友達なんじゃね? きっとそうだな。そうに違いない。
「あ、あー。そうだな。友達だな」
「そっか。嬉しい」
「そ、そりゃよかった。じゃあ、もうそろそろ帰ろうか」
「そうだね」
そんなふわっとした、わたあめのように微笑みながらのうれしいとか反則だろ。俺の方がうれしいわ。
ついに女友達できちまった。あまりの恥ずかしさに帰るを選択した俺を今すぐ殴りたい。
照れ隠しのようにすっと立ち上がり、レジに行き会計を済ませた。
これで解散になると思いきや、最寄りの駅が同じなので一緒に帰ることに、電車の中で映画の話をしていたらあっという間に地元についた。




