モテモテ28
やってきました日曜日。一日しか待ってないんだけど長かった。一年くらいは待った気分だ。この日のために生きてきたと言っても過言ではない。
今は待ち合わせ場所に居るんだけど、この前とは違う緊張感がある。
この前は美しい女の皮を被った魔王だったしね。今日一緒に映画を見る白石ちゃんは、可愛い女の皮を被った可愛い女の子だからね。皮を被った意味があるのかは不明なところではある。
それはそれとして、今の服装は飾霧と買った物だ。今日の事は飾霧にも一応伝えておいた。意外にも頑張りなさいと言ってくれた。後は非常事態なら電話をしてもいいとも言ってくれた。
あやつは実はいいやつなのかもしれない。さっきは魔王と言ったが、悪魔ぐらいにしといてやるか。
それにしても早く来すぎてしまった。こんな時はスクワットだな。いーち、にーい、さーん、よーん………………ひゃーく。
「ーーどこのソルジャー・クラス1stだよ!」
長いノリツッコミを終えたが、まだ十二時四十分か……
腕時計を見てため息を吐いた。その時、後ろから声が聞こえた。
「ごめん。待った?」
走って来たのか、少しだけ息遣いが荒い彼女。ボブカットで低身長、童顔で整った顔立ちに白い肌。胸はスットン!
そう、そこにいたのは白石ちゃん。
「いや」
驚いたせいか緊張のせいか、一言しか発せなかった。
いきなり後ろから声をかけられたもんだから心の準備が出来てなかったんだよ。ほらこういうの慣れてないからというか二回目だから。一回目のようにならなくてよかった。
ーー飾霧ありがとう。
「そっか、よかった」
その笑顔を見れてよかった。彼女は奴とは違って感情豊かで物凄く可愛い。やはり女子に笑顔は欠かせないスパイスだとここに断言する。
それにしても可愛い服装だ。ミントグリーンのニットに白のチュールスカート。華奢な身体にマッチしている。ふわふわとしていてお人形さんみたいだ。
残念なのは露出が少ない事。実に残念だ。
「そうそう。さっき来たから、ついさっき」
いい返事が思いつかなくて、おどおどしながら嘘をついてしまった。卑屈だ。
「なら同じだね。それじゃ行こうか」
「そうだな」
にこっとマシュマロのように微笑む彼女を見て、頬が緩むのをなんとか耐えつつ返事をした。
二人で映画館へと入る。
「今日はどんなの見るの?」
白石ちゃんは、「秘密」と唇に細く白い人差し指を当てる。それを見ていた俺の心臓は脈打つ。白石ちゃんはそのまま続ける。
「それじゃあ、チケット替えてくるからここで待ってて」
秘密ってなんかいいよな。うん。すごくいい。チケット売り場に向かおうとしている白石ちゃんに投げかける俺。
「なら、俺は飲み物とか買っておくよ」
「ありがとう」
そう言い残し白石ちゃんはチケット売り場に向かった。
俺は飲み物と言ったが、本当の狙いはポップコーンだ! 映画と言ったらポップコーンだろ。バケツに入ってるみたいなのがあるんだが、あれが俺の心を毎回くすぐる。それに上からかけるバターのシロップな。いつも思うけどあれって、金払えば何回でもかけてくれんのかな? あれがかかってる上の部分が非常に美味なんだよ。
そうだ今日こそは聞いてみよう。
…………むりー。店員のお姉さんに緊張して、聞けなかった。なんで今日に限ってあんな美人を配置しているんだ。馬鹿か!
まぁ仕方ない。またの機会に聞くとするか。
俺は烏龍茶とジンジャーエールとポップコーンを携え、柱の近くに立っている白石ちゃんのもとへ。
「お待たせ」
なんかこのセリフデートみたいじゃね? そう、これはデートなんです。
「全然平気だよ。何円だった?」
「いや、これぐらいいいって」
その優しさは嬉しいが、これは俺が払うと決めていたから払わせるわけにはいかない。
「ダメだよ。これはお礼なんだから」
「いいって。少しは出させてよ」
中々手強いな。
「茂木君は強情だな」
「その言葉そっくりそのままお返しするよ」
「もー」
あら可愛い。ここに子牛がおられますぞ。白石ちゃんがこんなにも表情豊かだったなんて、中学時代からは想像もつかなかった。
「冗談だって。それじゃ、行こうぜ」
「話し反らしたー」
「いいから行くぞー」
「もー。わかったよ」
よし。俺の勝ち。それにしても可愛いんですけど。こんな可愛い子とデートとか夢みたいなんですけど。
今にも天まで駆けていきそうな足取りで、中へと向かった。




