モテモテ27
二日が経ち金曜日の夜、時刻は二十時を過ぎた頃。
自室のベッドに横たわりながら昨日今日の事を考えていた。
作戦を黙々と遂行していた。男女問わずに日直の手伝いをし、昼には飲み物買いに行ったり、シャーペンの芯をあげたり、消しゴムを貸したり、違うクラスの人に教科書や体操着を貸したり、落とし物を届けたりと、出来る限りことはやった。
九割が男だったことが非常に悔やまれる。
そもそも女子ってあまり忘れしないし、ちゃんとしてる人が多いから優しくするのは難しいよね。それに比べて男子って適当な奴が多いから助けやすいよね。
優しくと助けるって紙一重だと俺は思った。
この作戦を機に、一つ分かったことがある。
俺は他のクラスの男子にも好かれてるってことだ。うぜぇ。
この作戦をしなければ気付けなかったことではあるので、収穫といってもいいだろう。
そんなの普通に過ごしていれば気付きそうなものだけど、俺は普通じゃないらしい。
俺は男子にこれっぽっちも興味がない代わりに女子には興味津々で、モテたいモテたいと女子の事ばかり考えていたせいか、周りが見えなくなっていたらしい。
気付いた今でもあまり男子に興味はないが、好かれているなら悪い気はしないというものだ。
さて、明日からは土日と高校生にとって最高の日なのだが、先週の土曜日は飾霧と一緒にデート、じゃなくて散歩をした。
今日の作戦会議いわく今回は何もないらしい。なので土日どちらとも暇になってしまった。
そんな俺がとる行動は基本的には一つ、涼太と遊ぶ。
ただ厄介なことにあいつは土日とも家の用事があるときたもんだ。
イケメンのあいつでも家の用事を抜け出すのは不可能というものだ。
「さて、どうするかなー」
天井に向かって言った言葉に答えるようにしてスマホが揺れ動いた。
慣れた手つきで、画面を確認すると白石佳代の文字が。それを見た俺は「えっ! ええええええ!」と素っ頓狂な声を上げつつベッドから飛び起きた。
深呼吸をして、心を落ち着かせてから内容を確認すると、時が止まった。
「……あれ?」
おかしいぞ? もう一度読んでみた。やはりおかしいぞ?
内容はこうだった。
『茂木君こんばんは。明後日暇ですか? もし暇なら丁度映画のチケットが二枚あるので一緒に行きませんか? この前のお礼です。ダメでもいいので、連絡待ってますね』
「そうか! これは新手の嫌がらせだな。このこの~。純情ボーイの俺を弄びおってからに~」
部屋に気持ち悪い独り言が響く。沈黙が続き我に返った俺は叫んだ。
「よっしゃああああああ!」
一人自室で両手を握り締めた。右手のスマホはミシミシいっていた。そんな俺の暴走を止めるのは、やはり母ちゃん。「うるさい」と一言。俺は冷静になり、まずは返信をすることにした。
『こんばんは、明後日は暇です。是非行きたいです』
震えた手つきで打ち終え、勇気を振り絞って送信ボタンを押した。
ここまで掛かった時間約二十分。メールって最高だな。
チキンな俺でも時間を掛ければ送れるし、噛んだりもしないからな。と浮かれていたら一瞬で返信が来たものだから、つい口から心臓が飛び出るところだった。
一旦心を落ち着かせ、恐る恐る内容を確認する。
『よかったです。池袋シネ・リーブルの前に一時待ち合わせでいいですか?』
「どこだそこ?」
シネとかなんかやだなとか意味不明なことしか考えられない。
だけど調べればいけるだろ。グーグル先生は敵なしだからな。そうと決まれば返信だ。
『そこで大丈夫です』
今回は五分ほどでーー
『それじゃあ、明後日楽しみにしてますね。おやすみなさい』
「--はっや! しかも寝るのはっや!」
画面に向かって言う。流石に今寝るって意味じゃないのはわかっていたけど、ついね。そんなことより返信だ。俺も今回は最速で送るぜ。
『おやすみ』
送っちまった。何を返せばいいかわからなかったし、これでいいよな。
それよりデートのことを考えないと、ーーってやっぱりこれはデートってことになるんだよな。だとしたら、せっかくデートをするのだから、服装は飾霧と買ったやつでいいとして、後はなんだ?
……わからねぇから、俺愛用の恋愛バイブルを見てどうにかするしかないな。
恋愛バイブルによると、お洒落な店でお食事と書いてあったので、スマホで二時間ほど店を探したんだが、店が多すぎてどれがいいのかさっぱりわからない。もうお手上げ状態。
ついこの間まで女子の連絡先すら知らなかった俺が、だ。
この前連絡先をゲットしたと思ったら、次は手作り弁当、そして映画と来たもんだ。
どこのラブコメですか?
「ありがとうございます!」
ラブコメの神様に感謝しつつも状況は芳しくない。
今までの経験不足がここにきて足枷になっている。だが俺には青い狸よりも頼りになる親友がいるんだ。
こうしちゃおれん電話だ電話。机のスマホを手に取り、涼太に素早く電話。
「もしもし! イケえもんか!」
『いや。違うと思うぞ』
今日も一段と、爽やかボイス。
「そんなわけあるか。お前はイケえもんだ。俺が太鼓判を押してやる」
『そんな太鼓判いらないから、それより何か用か?』
「よくぞ聞いてくれた。明後日女の子と池袋に映画を観に行くんだけど、その後に洒落た店でご飯を食べたいと思っているんだが、池袋でいい店知らないか?」
『それなら、スラッティールってカフェがあるからそこにしろよ』
あまり驚かないのはもうスルーだ。それにしても何でも知ってるな。
「よくわからないが、スラッティの部分がいいな」
『それはよかった。場所はスマホに送っとくから、じゃあな』
またスルーされたが気にしない。それより、切ろうとしたから声を荒げた。
「待てええええ!」
『ーーうるさいな。まだ何かあるのか?』
「一つ言わせてくれ」
『なんだ?』
「サンキューな、お前ーーおい! 切りやがったな! 最後まで言わせてくれよ……」
電話越しにプープープーと悲しい音だけが残った。
急に切るなんてシャイな野郎だ。
今頃顔を真っ赤にしている頃だろう。「してない」幻聴かな? 涼太の声が聞こえた気がしたんだが、それはさておき。
あの親友頼りになりすぎるだろ。一家に一台は欠かせないな。発売したら絶対に買うぞ。
連日世話になってるし、今度学食でも奢ってやるか。それと、『お前は俺にとっての宝物だ』さっき言いそこなったメールも送ったし、完璧だ。
すぐに返信がきた。画面を見るとお店のURL、それと下の方に、『うるさい』とだけ書いてあった。
相変わらず涼太はシャイボーイだな。




