モテモテ23
放課後。飾霧と俺は今日も今日とて離れの部屋に居る。
いつもと同じく窓際付近に置かれたシンプルなフォルムの椅子に座りながら、今日の戦利品を見てニヤニヤしていた。
そんな俺に横から冷たい視線、更に冷たい声が聞こえた。
「画面を見ながら何をニヤニヤしているの。通報するわよ」
「別になんでもないです。このくらいじゃ捕まりませーん」
飾霧などどうでもいい。俺には白石ちゃんの連絡先があるんだぞ。今の俺は最強だ。
そもそも、教科書を拾ってやったんだから少しくらい感謝しろよな。
五限が始まる少し前に教科書を渡したら「ご苦労」の一言だったしな。もうこいつのは二度と拾わん! ーーと言いたいところだが白石ちゃんに免じて許してやる。
「それで、優しさアピールはできたのかしら」
「できたとも。絶好調だぜ」
実際は全然できてない。だが、一人に対して身体を張った優しさを見せつけたから絶好調って事にしておこう。
「そう。ーー今すぐにそのにやけ面をやめてもらえる? 不快極まりないから」
不快と顔に書いている飾霧を横目にスマホをちらり。
「そんな顔してたか? ふへへ」
やれやれと首を横に振った飾霧が口を開く。
「もういいわ。男女関係なく優しさをアピールするのはそのまま続けるとして、明日の作戦を言うわよ。作戦名は、料理男子で女子の好感度上げちゃおう」
「ほんとそれ好きな」
「なんのことかしら」
流石に聞くよね。しらばっくれやがったけどな。
「はいはい。料理男子って事は弁当とかか?」
「貴方にしては察しがいいのね」
「それはどうも。でも俺、料理とかしたことないんだが」
ほんとにやばい。料理って家庭科の授業以外でやったことない。うちの専業主婦の母ちゃんが全てをやってしまうから、母ちゃんの偉大さを感じる。
「なら、練習すればいいだけのことよ」
「教えてくれるのか?」
「ええ、当然よ。貴方をモテ男にするためだもの」
「感謝感激」
「なんだか気持ち悪いのだけれど」
こやつ料理もできるんかーい!
神はこいつに様々な才能を与える代わりに、人の一番大事なモノを奪ってしまったのか。
そう、それは、ーーコ、コ、ロっ。(喪黒風)
「感謝しただけで気持ち悪いっておかしすぎるだろ」
「最近慣れ慣れしいわよ」
「すいませんでした」
ギロリッて音がしたんだけど、怖いよう。やっぱり人にはココロがないとと、心底思った。
「早速。キッチンに行くわよ」
まだ怒っておられるぞ。丁寧な口調をココロがけよう。なんたって俺にあってこいつに無いもの。それはーーコ、コ、ロっ。(喪黒風)
「ここはキッチンもあるのですか?」
「あるわよ。昨日のうちに用意しておいたわ」
「それはすごいですね」
用意ってマジでどうやったんだよ。金持ち怖い。
「そうでもないわ。早く行くわよ」
「了解です」
二階の部屋から階段を降りて右側の奥に進むと厨房があった。そこはお店の厨房のように広く、器具が揃えられていた。まさに銀色の世界。
どうすれば一日でこうなるのかは聞かないでおこう。
「ここでやるわよ。食材もあるから気にしないで使いなさい」
「すっご……。でも、まずは何をしたら」
冷蔵庫を開けると肉、野菜、魚、他にも色々高そうなものが入っている。
その中で一番インパクトがある霜降りの肉の塊を、是非食べたいのだがどうだろう?
「そうね。玉子焼きかしら」
残念。思いは届かなかった。卵も白じゃなくて茶色だけどそれは食べた事あるんだよなー。
「玉子焼きか。なんとなくいけそうだな」
「そう。でもまず私が作るからしっかりと見ていなさい」
なんとしても目に焼き付けなければ、玉子焼きだけに。
「了解です」
飾霧は冷蔵庫から卵を三個取り出し、慣れた手つきで卵を割る。三個共ボウルに入れると、砂糖、醤油を適量入れてから素早く混ぜる。
長四角のフライパンをコンロに乗せ、火をつけ温まったら油を引きその上に卵を半分ぐらい流し込み、固まったら巻いて、巻いたら流し込むを繰り返すとあっという間にふわふわな卵焼きが完成した。
その手際の良さに唖然となりながらもなんとかやり方を覚えていた。ちゃんとスマホにもメモを取ったし、俺はこう見えても几帳面なのだ。




