モテモテ15
俺が居るのは渋谷でお馴染みのハチ公前。
今の時刻は待ち合わせ時間の三十分前である。
今の俺に死角はない。
なぜって?
皆は既にお分かりだろうが、昨日我が家にイケメン神が舞い降りたからだ。
自分がまだ着てないという服を携え、それを渡すとすぐに帰られた我が親友は春風のようだった。
やっぱり、なんだかんだ言って最後は友情だと思うんだよね。
友達の数って量より質だと再確認させられたよね。
そんなこんなで今日の俺は無敵と言ってもいいだろう。
服装が知りたいって?
しょうがない奴等だ。
白のトップスにブルーのカーディガン。ボトムスは黒のスキニーパンツと白のスニーカー。そして首からは洒落たネックレス。
昨日の涼太が言っていた呪文を唱えた。
靴だけは俺のだ。
これがお洒落なのかはよくわからないが、戦闘力が五万近く上がった気がする。
見てろ飾霧。ギャフンと言わせてやるからな。
髪は飾霧に言われたところで切ったが、かなり緊張した。
特に入るのが。
中に入ったらもう引き返せないから入ってしまえばこっちのもんよ。
しかも美容師ってやたらフレンドリーだからどうにかなるよな。
永遠に喋りかけてくるから飽きないし、俺には絶対無理な職業だわ。
高い金を払ったかいがあったのか、髪型もかなりイカしてる気がしなくもない。
一つ言えるのが、トサカよりはいいだろう。
トサカがダメってわけじゃないんだよ床屋のおっちゃん。
今思うと、あれは無しだったんじゃないかと思うくらいに今の髪型はカッコイイ。
髪を切った後、絶対に遅刻はしまいと焦って来たから思ったよりも早く着いてしまって今に至る。
まぁ、遅刻をしたら死ぬらしいので、よしとしよう。
普段は待つのが苦手な俺なのだが、今は緊張のあまりその感情も消え去り口も砂漠のようにカラカラになっている。
いくらなんでもいきなり二人は荷が重い。
相手が罵詈雑言を巻き散らかす飾霧だとしても、一応女というか美女なのだから緊張はする。
しかも見た目は最高クラスなのは間違いない。そう考えると更に喉が乾く。
緊張のあまり、場所はここで合ってるのか不安になってきた。
合ってるはずだけどこんな場所で待ち合わせとか初めてだし、俺の待ち合わせ場所って言ったら家の前ぐらいしかないしな。
そんな意味ない事まで考えてしまうほどに落ち着かない。
「なんかもう帰りたくなってきた……」
なんとか落ち着こうと大きく息を吐いたら少し気が楽になった。
その直後に遠くにいる妖精を発見した。ーーじゃなくて飾霧だ。
あまりにも学校との印象が違うから見間違えるところだった。
俺も飾霧の方に歩みだそうとしたのだが、足が杭で地面に打ち付けられているかのように動かない。
冷や汗も出てきた。
どうした俺の身体。動け。動け。動け。動け。動いてよ!
「茂木直。早いわね」
必死に動こうとしている間に、もう目の前まで接近された模様。距離二メートル。
これ以上の接近は死に直結するものと思え。はい軍曹。
飾霧の美しさに思考回路はショート寸前。服装は至ってシンプル白のワンピースに水色のカーディガンを羽織っている。靴は白のハイヒール。
その靴で踏まれたい。じゃなかった落ち着け俺。
それにしてもワンピースからチラッと見える細ももがすごくイイ。「セクシー」と叫びたくなる気持ちを抑えて返事をした。
「ほふー」
今最大に振り絞った言葉がこれだよ。
だっていつも以上に可愛すぎるんだもん!
周りの男も飾霧に釘付けだよ。その気持ちわかるけどね。
「何を言っているのかしら? さっさと行くわよ」
まぁ、口調はいつものように冷淡なんですけどね。
それでも許しちゃう。今日はなんでも許せちゃう。
「はひ」
まだろれつが回らない。おかしいぞ?
「さっきから何を言っているの? 凄く気持ち悪いのだけれど」
「はい! 目が覚めました」
凄くがついて、いつもよりレベルアップした毒舌本当にありがとうございます。
危うく見てくれに騙されるところだったぜ。
「そう。早く行くわよ」
「はい」
我に返ったおかげで身体も自由に動く、羽が生えたみたいに軽い。
先に歩き出した飾霧の後を軽い足取りで追った。




