モテモテ12
木曜日学校に着いて早々にある男の元へと向かった。新聞部の部室に着き、扉をノックしてから開ける。
中へと歩いて行くと、不気味なオーラ放つ一人の男が椅子に腰掛けていた。
俺はその男の前まで行き、声を掛ける。
「加藤。少しいいか?」
「ああ、君か。何か、ようかい? いひいひ」
この不気味な笑い方をする妖怪が、加藤白濱。前に少し話したかもしれないが、この校内の事を誰よりも詳しく知っている。情報屋だ。
黒髪でロン毛。顔は不気味。眼鏡の位置を直した時に眼鏡が輝くのが更に不気味。その時にニヤリと微笑むのが不気味。
見た目はこんな感じだが、中々頼りになるし、いいやつだ。
こいつとは訳あって一年の時から知り合いだ。
「ああ、聞きたい事があるんだ」
「そうか。僕がわかることなら教えるよ。いひいひ」
加藤がブリッジを人差し指で持ち上げると、不気味に眼鏡が輝く。
「助かる。黒笠と言う一年の女子についての事が知りたい」
今は普通に会話をしているけど、会った当初は加藤が笑っただけで逃げ出したものだ。
「わかった。少し待って貰えるかい?」
その問いに頷くと、加藤は鞄から一つの黒い本を取り出した。それは辞典のように分厚い。ここに加藤が集めた情報が詰まっているのだ。
加藤曰くここに書いている事は極一部の情報らしい。加藤は本をパラパラとめくりあるページで止めると、口を開いた。
「黒笠雫。十五歳。一年三組。出席番号七番。身長一五八。体重四四。スリーサイズ。上から86、59、88。こんなところか」
赤裸々に語られた黒笠のプロフィール。
やはり、最高のプロポーションだったか。俺の目は間違っていなかったと言う事だ。って、そんな場合じゃない。こんな事が聞きたくてここに来たわけではない。
「すまん加藤。俺が知りたかったのはそう言う情報じゃないんだ」
「そうなのか、ならどんな情報がほしい? いひいひ」
首がゴキッとなる程に傾げ、不気味に笑う加藤に俺は真剣な表情で質問する。
「ーーそうだな。クラスでどんな立ち位置なのか、とかかな?」
「ーーそうか、すまないのだけど、まだ一年の情報は余り集まっていない。だからこれ以上の情報を得るには少し時間が必要になる」
「わかった。なら、調べてもらえるか?」
「いいだろう。それまでにアレを用意しといてくれよ。いひいひ」
不敵に笑う加藤の眼鏡が輝く。俺は親指を立てると力強く言う。
「おう。任せておいてくれ」
「では、二週間後までに完璧に情報を集めておくよ」
「ああ、頼んだ」
固い握手を交わし、加藤との会話は幕を閉じたのだった。
金曜日の昼休み。ここまで清潔感を持ちつつ全力で爽やかに振る舞ってきた。すると、一つ見えてきたことがある。
自分で言うのもなんだけど、俺はクラスメイトに好かれてる。特に男子。
今まではなんとなく過ごしてきたから気付かなかったけど、異様に男子に好かれているようだ。俺にそっちの趣味はないので、マジでどうでもいいんだけど。
女子からも好意を持たれてるほどじゃないにしても嫌われてはないと思う。話しかけてもそこまで嫌な顔はしないし、ギャルチーム以外。
そんなこんなで作戦をやったことで一応収穫はあった。そのため今日の俺のテンションはやたらと高い。
今は涼太と一緒に学食にて、ランチタイム中だ。俺はカレーで、涼太はAランチだ。なんかムカつく。
そう言えば今日も昨日もパンの君。黒笠には会わなかった。何もなければいいんだけど……
俺がカレーを咀嚼しながら色々考えていると、爽やかな透き通る声で涼太が話しかけてきた。
「なあ、昨日のテレビ見たか?」
「うわー。見忘れた」
「珍しいな。直が好きな番組なのに」
「ちょっとモテるのに忙しくてな」
「モテるのに忙しくって言い方は間違ってるだろ」
「うるせぇ! そんな細かいことは気にしなくていいの」
「そうか、まぁ頑張れ。力になれることがあったら言ってくれ」
「おう。その時は遠慮なくイケメンパワーを借りるぜ」
「そんなパワーはないと思うけど、任せとけ」
俺の親友は清潔感溢れる爽やかな笑顔でそう言った。これが本物かと言葉を失ったぜ。




