モテモテ100
その後、俺達はめいっぱいプールを楽しみ、閉園時間が近づいた事もあり現地で解散となった。
今日一日の出来事で体力と精神力をほぼ使い果たし、一刻も早く帰ろうとしていた。
けれど、それが叶うことはなかった。
まんまと目の前の冷徹女に捕まってしまったからだ。
今現在、俺が居るのは駄菓子屋である。
ここからは刻々と濃くなる夕焼けがよく見える。
なぜ、駄菓子屋にいるのかって?
プールの近くにあったからという単純な利用で申し訳ない。
その駄菓子屋の前のベンチで二人して座っている。
でもただ座っているだけではなく、駄菓子屋名物たまごアイスを食べながらだ。
あのアイス最高だよな。
まるでおっぱいを吸っているみたいで……まぁ、吸ったのは幼少期の頃なので、遥か昔の記憶な事もあり全く覚えてないんですけどね。
にしても、このアイス普通に味もいける。
乳味だぞ。乳味!
最後にピュッて勢いよく出るのだけ気を付ければ最高のアイスだと、俺は思うね。
たまごアイス語りはここまでにして本題に入ろうか。
「なぁ、呼び止めたんだから何か用があるんだろ?」
たまごアイスを咥えたまま飾霧に問いかけた。
「ええ。あるわ」
シリアスな声色だが、飾霧もたまごアイスを咥えているので、ただの間抜けにしか見えないのは俺だけなのだろうか……
当然の事だが飾霧はこのアイスを初めて食べる訳で、最初に勧めた時は「本当にお美味しいのかしら?」と疑っていたが、いざ食べると思いのほか美味しかったようでご満悦の様子。
それはさておき話を続けよう。
「で、どんな内容なんだ?」
「とても重要な内容よ」
「そうか。それじゃあ話してくれ」
「そうね。次の作戦が決まったのだけれど……」
「ほほう。だけれど何か問題があると」
二人のアイスは徐々に無くなり半分以下になっていく。
「ええ。とても重要な問題があるわ」
真剣な表情で口からアイスを離す。
すると、球体の先からバニラアイスがニョロニョロと出始める。
それを見て焦った俺は声を荒げた。
「おい! なに口から離してんだよ!」
「ダメなのかしら?」
小首を傾げる間にもアイスはゆっくりと出続ける。
球体の大きさを見て焦りはさらに強まる。
「早く戻せ。早くっ!」
「そんなに急かさないで貰えるかしら、忙しない男はモテないわよ」
「いいから早くっ!」
力尽くで口に押し込もうと近寄ると、
「わ、わかったわよーー」
と飾霧がアイスを口に戻した瞬間。
球体が一瞬にして縮む。
球体の中に入っていた白い液体が勢いよく彼女の口の中に弾けだした。
「っ! ーー驚いたわ」
言葉の通り目を見開いた後、急なアイスの反逆により少しはみ出た白い液体が手や口元に溢れる。
それを、ゆっくりと舌で舐めとっている光景を目の当たりにした俺は神妙な面持ちで呟く。
「ーーいやらしい」
アイスをある程度舐めとった飾霧は色っぽい声で、
「凄くあまいわ」
と何故か上目遣いで言ってきたのと同時に俺のたまごアイスの中身も弾け飛んだ。
百戦錬磨の俺にとっては赤子も同然。
当然のようにアイスは一滴たりとも垂れてはいない。
全て飲み込み目を逸らしながら語り始める。
「ーーアイスなんだから甘いに決まってんだろ。まぁこのアイスは特別で、俺も初めて食った時はおったまげたぜ。でもそれが慣れてくると癖になるんだよ。いつくるかなーってな」
早口で言い終えると飾霧はハンカチで手を拭き始めた。
最初から使えよと思わなくもない。
「ーー確かにその感覚はわからなくもないわね」
「だろ。てか、感謝しろよな。もし俺がいなかったら今頃もっと酷いことになってたんだからな」
本当に大変な事になってたぞ。
顔やら胸、さらには太ももまでも白い液体の餌食になっていた事だろう。
全く、けしからん!
「そうね。でも貴方はそうなってほしかったのではないかしら?」
「な、何を馬鹿なことを」
全てを見透かされているようで椅子から転げ落ちそうになった。
「どれだけわかりやすいのよ。それでも一応、ありがとうとだけは言っておくわ」
「お、おう。どういたしまして」
……よかった。
またボロクソに罵倒されるのかと思った。
額の冷や汗を拭っていると飾霧が纏う空気が引き締まった。
「では、そろそろ本題に入るわね」
「そうだな」
ここからは真面目な話がくるのだと雰囲気で察したので、真剣に耳を傾ける。




