第9話 白百合の祝福
夜明けとともに、修道院の窓から光が差し込んだ。
私はミレイユの腕の中で目を覚ました。聖女は寝起きでも神々しかった。これが現実なの、本当に?
彼女の睫毛が震え、ゆっくり目が開く。
「おはようございます、共犯者様」
「おはようございます、聖女様」
その呼び方に、ミレイユは困ったように笑った。
外では刺客が撤退したあとで、護衛たちが捕えた男を縛り上げていた。男の懐から出てきたのは、教会保守派と宰相派の連名指示書。やはり仕組まれていた。
私が証拠を受け取った瞬間、鏡が空中に現れる。
【聖女ルート死亡フラグ 一件解除】
【生存印《祈りの百合》を獲得しました】
同時に、ミレイユの掌に淡い光が咲いた。白百合の紋章が、私の手の甲の印と共鳴する。
「……あなた、本当に何を背負っているの?」
彼女はさすがに異常を見過ごさなかった。
私は少し迷ってから、前世とゲームのことを伏せて、こうだけ言った。
「死ぬ未来を壊したくて、足掻いています」
ミレイユはその答えに頷き、静かに言った。
「なら、私も一緒に足掻きます。あなたが独りで抱えるには、少し重すぎるでしょう」
聖女ルートが味方になる。その意味は大きい。
けれど鏡は休ませてくれなかった。
【第三対象: 女騎士団長イリス・ヴァンヘイム 二十七歳】
その名が出た瞬間、修道院の外から馬の蹄音が近づいてきた。
最悪のタイミングで、次の攻略対象が迎えに来たらしい。




