第10話 次の攻略対象は女騎士団長
修道院の前に現れたのは、白銀の鎧を纏った騎士団だった。
先頭の女性は長身で、夜明けの光を切り裂くみたいに真っ直ぐ立っている。黒髪を高く結い、鋭い金の瞳がこちらを射抜く。女騎士団長イリス・ヴァンヘイム。帝都守備軍の象徴であり、元のゲームでは私を一番容赦なく斬る女性だ。
「女公爵レティシア。王都への同行を求める」
初手から冷たい。
彼女はミレイユ保護の件を、独断専行の越権行為として問いただしに来たらしい。名目は正しい。でも本音は別だと私は知っている。イリスはかつて、兄を冤罪で失った。その裏にヴェルノワ家がいると信じているのだ。
本来なら、ここで私は高圧的に反発し、完全に敵対する。
「同行します。その代わり、あなたにも話を聞いてほしい」
私がそう言うと、イリスの眉がぴくりと動いた。
「取引をする立場ではない」
「なら、脅しでもいいです。あなたのお兄様の件、真犯人を知っています」
空気が凍った。
ミレイユが小さく息を呑み、イリスだけが一歩近づく。鎧越しの殺気が、皮膚を刺すみたいだった。
「その名を、軽々しく口にするな」
「軽々しくは言いません。王都で証拠を出します」
しばらくの沈黙の後、イリスは踵を返した。
「……いいだろう。だが虚言なら、その場で拘束する」
王都への馬車で、私は鏡の表示を確認する。
【女騎士団長ルート危険度 高】
【推奨行動: 決闘、救済、同衾】
物騒な三段活用だった。




