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第11話 決闘でしか会話できない女
王都に戻って三日後、私は騎士団訓練場に呼び出された。
理由は簡単だ。イリスが「口先だけの女公爵が何を知っているのか、剣を交えて確かめる」と言い出したからである。意味は分からないけれど、彼女の中では筋が通っているらしい。
訓練用の細剣を渡され、私は深くため息をついた。前世で持ったことがあるのは蛍光ペンくらいだ。
「逃げるなら今だ」
「逃げたら、あなた話を聞いてくれませんよね」
「聞く価値がないからな」
そう言いつつ、彼女は待ってくれる。厳しいけれど、不意打ちを好む人ではない。その誠実さが、逆に眩しい。
もちろん勝てるわけもなく、私は開始一分で追い詰められた。けれどゲーム知識のおかげで、イリスの癖だけは知っている。左足に体重を乗せる踏み込みの直前、肩がわずかに下がる。
私はそこへ賭けた。
刃を受け流し、ほんの一瞬だけ彼女の懐へ入り込む。
「あなたのお兄様を殺したのは、ヴェルノワ家じゃない」
剣先が、私の喉元で止まった。
「証拠は」
「軍需会計の改竄記録。保管しているのは軍務卿ローディス。兄上はそれを見つけて消された」
イリスの瞳が、怒りよりも先に痛みで揺れた。
その瞬間、訓練場の外で爆発音がした。
軍務卿側が、想定よりずっと早く動いた。




