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第12話 傷だらけの忠誠

爆発したのは騎士団の資料庫だった。


私たちが駆けつけた時には火が回り、重要書類の棚が崩れかけている。イリスは迷わず中へ飛び込んだ。私は止める暇もなく追いかける。


煙の中で、彼女は焼けかけた帳簿箱を見つけた。その直後、梁が落ちる。


「イリス!」


咄嗟に押し倒されたのは私のほうだった。彼女の肩に木片が直撃し、白銀の鎧が赤く染まる。


資料庫を出たあと、私は彼女を半ば無理やり医務室へ連れて行った。軍医が来るまでの間、応急処置くらいはできる。


「放っておけ。これくらい」


「あなたはいつもそうやって、自分を後回しにするのね」


包帯を巻く私の手を、イリスはじっと見ていた。


「……なぜ庇った」


「庇われたのは私です」


「そうではない。なぜ、私の兄の件を調べた」


傷口に薬を塗りながら、私は少しだけ肩をすくめた。


「あなたが報われないのが嫌だったから」


イリスは沈黙したまま、やがて低く言った。


「私は、あなたを憎むことで立ってきた」


「でしょうね」


「その相手に救われるのは……腹立たしい」


思わず笑ってしまうと、彼女がわずかに目を細めた。


「でも、悪くないでしょう?」


その問いに、イリスは答えなかった。ただ、医務室を出る時、私の手首を一瞬だけ強く握った。


憎しみだけの熱では、あんな触れ方はしない。



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