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第13話 夜営テントの停戦協定

焼け残った帳簿には、軍務卿ローディスの署名があった。


決定打になる原本は、王都の外にある秘密駐屯地へ移されたらしい。イリスと私は少数精鋭で証拠奪還に向かった。王都で大勢動けば、相手に悟られる。


ところが山道に入った途端、季節外れの嵐に巻き込まれた。


テントはひとつ。しかも風で骨組みが軋んでいる。


「またこの展開……」


私が呟くと、イリスが眉をひそめた。


「何だ」


「いいえ、こちらの話です」


鏡は容赦なく光っていた。


【信頼条件達成率 九十三%】


あと一押し。数字で見ると身も蓋もないけれど、ここまで来たのは確かだ。


濡れた外套を干し、イリスは私に背を向けたまま言う。


「兄は、私より賢かった。だからこそ殺された」


珍しく、自分から話してくれた。


「私は剣しかない。だから、力で全部守るしかないと思っていた」


「それも立派な才能よ」


「だが、お前は違う。人の傷を見つけて、そこに平然と手を伸ばしてくる」


責めているのか、褒めているのか、よく分からない。


嵐が強まり、テントの中が冷える。私は黙って毛布を広げた。イリスは数秒迷ったあと、私の隣に腰を下ろす。


「今夜だけだ」


「はい、団長殿」


その返事に、彼女は小さく笑った。


そして夜更け、肩を寄せ合う距離で、彼女は自分から私の額へ唇を落とした。


停戦協定としては、だいぶ甘かった。



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