表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/16

第6話 聖女は私を嫌っている

王城を出た翌日、次の名前が鏡に浮かんだ。


【第二対象: 聖女ミレイユ・サンテュール 二十五歳】


ゲーム知識がなくても分かるくらい、相性が悪い相手だった。


ミレイユは帝国教会の象徴で、慈愛そのものみたいな女性だ。銀髪に薄金の瞳、柔らかな声。画面越しでも眩しかった。元のレティシアは教会領の水利権を奪い、孤児院への支援を打ち切ったせいで、ミレイユから本気で嫌われている。


嫌われている相手を口説け、と鏡は平然と言う。


私は翌朝すぐに大聖堂へ向かった。礼拝堂の外には、炊き出しを待つ子どもと年寄りが並んでいる。資料でしか見ていなかった貧しさが、現実の匂いを持って立っていた。


「公爵閣下が、どうしてこちらに?」


ミレイユ本人は、ちょうど子どもたちにパンを配っていた。清らかな美貌に見惚れるより先に、声音の温度の低さが刺さる。


「謝りに来ました」


「ずいぶん都合のいい言葉ですね」


私は否定しなかった。都合がいいのは事実だ。けれど、ここで取り繕っても意味がない。


「あなたが嫌うレティシアそのものです。でも、これから変わる機会をください。まずは孤児院の支援を元に戻します」


ミレイユはパン籠を抱えたまま、私をまっすぐ見た。


「あなたは今さら善人の真似をして、何を得たいのですか」


問われて、少しだけ考える。


「生き残りたい。でも、それだけじゃなくなってきました」


聖女の瞳が、ほんの少しだけ揺れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ