第4話 紅茶会は尋問の味
王城の奥、私室に近い小さな応接間で、私は王太女と向かい合っていた。
クラリスは手袋を外し、指先でティーカップの縁をなぞる。その仕草ひとつで人を処刑できそうな迫力がある。
「まず確認します。あなたはどうして、あの毒を知っていたのですか」
「未来を知っているからです」
さすがにそれをそのまま言うのはどうかと思ったけれど、嘘を重ねる余裕もない。クラリスは数秒黙ったあと、呆れたように息をついた。
「正直なのか、馬鹿なのか、判断に困りますね」
「よく言われます」
「私は初めて言いました」
その返しに、思わず笑いそうになった。ゲームで見た冷酷無比なクラリスより、今目の前にいる彼女のほうがずっと人間らしい。
私は宰相派がクラリスを失脚させ、ついでに女公爵家の財力も奪おうとしていることを説明した。偽造帳簿の保管場所、実行犯の名前、明朝に起こる第二の襲撃まで。
「どうしてそこまで知っているの?」
「殿下を死なせたくないからです」
それは半分本音で、半分は生存本能だった。
クラリスは私を長く見つめ、それから静かに言った。
「では、取引をしましょう。あなたの情報が明朝までに正しかった場合、私はあなたを切り捨てません。その代わり、あなたは今夜、私の監視下に入る」
胸が跳ねた。監視下。つまり、同じ屋根の下で夜を越えられる。
鏡の言葉が脳裏に浮かぶ。
寝台契約。
「監視だけでいいのですか?」
私が訊ねると、クラリスは紅茶を置き、ほんのわずかに口角を上げた。
「それ以上を望むなら、まず生き残ってから口説きなさい、レティシア」
最悪の相手は、どうやら最初から手強かった。




