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第34話 王冠なき女王たちの夜会

オアシスの夜会は、王冠の代わりに実務書類が並ぶ宴になった。


 クラリスが押収した偽布告、ナディアが集めた通行帳、ミレイユが確認した神殿規約、セレーネが持ち帰った私掠証文。女たちがそれぞれの得意分野で証拠を積み上げると、境界伯の言い逃れはあっけなく崩れた。


「婚礼税は無効。水脈地図の提出命令も違法」


 クラリスが断じると、各地の隊商長たちがざわめく。サフィアは高座から一歩降り、彼女たちと同じ目線で告げた。


「ナーシルは帝国に嫁ぐための泉ではありません。月の水は、ここで生きる者のために流れます」


 その宣言へ、女商人たちが拳を上げた。


 夜会が終わったあと、オアシスの縁で私はサフィアと並んだ。水面には月がゆれている。


「あなたの円卓は騒がしいのね」


「ええ。恋人が増えるたびに賑やかになる仕様らしいわ」


 サフィアがふっと笑う。


「羨ましい」


「なら席を空けておく」


「違うわ。もう座るつもりで聞いているの」


 返事の代わりに、私は彼女の指へ自分の指を絡めた。巫王の手は意外とあたたかい。


 宴の向こうでは、ヴィオラがミレイユへ砂漠葡萄酒を勧め、イリスが女水兵と腕相撲をしている。カオスだ。でも悪くない。


 女たちが争わされるための舞台を、女たち自身の夜会へ変える。きっとこれが、覇道ルートの正しい歩き方なのだ。


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