第19話 四つ目の生存印
目覚めた時、ヴィオラは私の隣で帳簿を読んでいた。
人の寝顔を眺めるでもなく、朝一番に陰謀を確認するあたりがいかにも魔女伯爵である。
「おはよう。可愛い顔してるわね、寝起き」
「それ、今までの私に言った人いないのよ」
「じゃあ初めてを貰ったのね」
軽口を交わしたところで、鏡が白く咲く。
【魔女伯爵ルート死亡フラグ 一件解除】
【生存印《夜香の百合》を獲得しました】
四つ目の紋が手の甲に重なった瞬間、鏡の表示が大きく変わった。シルエットの女性たちが、ずらりと並ぶ。
王太女、聖女、騎士団長、魔女伯爵。そしてその先に、商会連合の女王、北境の女提督、砂漠王国の巫王、竜騎士長、女帝候補、宮廷学者、暗殺メイド長、月神殿の巫女姫……まだまだ続く。
「ちょっと待って。何人いるのよ」
【主要対象 十三名】
【副次対象 状況に応じ増減】
「増えるの!?」
ヴィオラが肩を震わせて笑った。
「どうやら、あなたの恋は帝国規模では済まないみたい」
私は額を押さえた。四人でもう十分大変なのに、十三人。いや副次対象込みならそれ以上。
でも同時に、妙な高揚もあった。死ぬしかなかった未来が、これだけの人たちと繋がることで塗り替わっている。
ヴィオラは帳簿を閉じ、真顔で言った。
「レティシア。あなたを殺す“ゲーム”そのものを壊すなら、全員を味方にしなさい」
それは、とんでもなく無茶で、とんでもなく魅力的な提案だった。




